11日、FIG世界体操競技選手権の男女種目別決勝1日目が行われ、男子床運動の決勝で前回王者の白井健三(岸根高)が15.733点で2位に入り、銀メダルを獲得した。日本勢44年ぶりの連覇はならなかった。優勝はデニス・アブリャジン(ロシア)が15.750点で初制覇。加藤凌平(順天堂大)は6位だった。あん馬はクリスティアン・ベルキ(ハンガリー)、女子の跳馬はホン・ウンジョン(北朝鮮)が優勝した。地元中国勢は、種目別で2つのタイトルを獲得。男子のつり輪を団体金の立役者リュウ・ヤンが、女子の段違い平行棒はロンジン・エレガンス賞を受賞したヤオ・ジンナンが初優勝を果たした。
 王座は奪うよりも守る方が難しい――。18歳の若き王者・白井は、それを痛感したのではないだろうか。わずか0.017点の差で連覇はならなかった。

 ゆかのスペシャリストが集う種目別決勝。日本勢は加藤と白井が出場した。加藤は2人目演技。昨年の個人総合銀メダリストは、今回の個人総合では決勝に進めなかった。日本のトップクラスのオールラウンダーは、その悔しさを種目別で晴らしたいところ。加藤にとって得意種目とはいえ、スペシャリストの中で勝負を争うのは容易いことではない。加藤も演技構成をDスコア(難度点)7.1点と、決勝進出者の中で2番目に高いもので挑んだ。

 果敢に攻めたが、「力が入り過ぎた」と序盤のF難度「シライ2」(前方伸身宙返り3回ひねり)でバランスを崩した。その後のタンブリングでも、着地は若干弾んだ。Eスコア(出来栄え点)は8.366点で15.466点。この時点ではトップに立ったが、その後、5人にかわされ6位に終わった。加藤は「出るからにはメダルを狙っていたので、悔しい。ただ大きなミスなくできたのでいい経験になりました」と悔しさとともに手応えも感じ取った模様。

 加藤の直後に演技をしたのは予選1位のアブリャジンだ。ロンドン五輪では、種目別ゆかで銅メダルを獲得している実力者。高い跳躍力から力強い演技を披露し、Dスコアは加藤と同じ7.1点、Eスコア8.650点は加藤を上回り、15.750点でトップに立った。

 そこから3人が演技した後、登場したのが前回王者の白井。昨年は17歳ながら「自分の演技がしっかり出せれば結果はついていくる」と臆することなく16.000点の高得点を叩き出した。世界デビューでいきなり戴冠を果たした。

 前回と同じDスコア7.4点の構成で挑んだ。当然、出場選手最高のものである。あとはミスなくまとめられるか、Eスコア次第である。ひねりで世界を圧倒した白井。3本のタンブリングまでは順調だったが、4本目の2回半ひねりの連続技で痛恨のラインオーバー。団体総合決勝でも犯したミスで減点0.1点が付いてしまった。

 フィニッシュは自らの名前がついたF難度「シライ・グエン」(伸身後方宙返り4回ひねり)。着地は少しぐらついた。直後に「微妙だー!」と声を上げるなど、本人の手応えとしても王座を守れるかは、ギリギリのラインだった。掲示された15.733点。Eスコアはアブリャジンには、わずか0.017点届かなかった。白井は笑顔も見せたが、悔しさをにじませた様子だった。

 2大会連続のメダル。白井と1位との差はわずかなものだった。スペシャリストとしての実力は示したが、満足もしていない。「来年しっかりと代表に入って、取り返したい」。18歳はリベンジを誓った。

<男子種目別床運動・決勝>
1位 デニス・アブリャジン(ロシア) 15.750点
2位 白井健三(岸根高) 15.733点
3位 ディエゴ・イポリト(ブラジル) 15.700点
6位 加藤凌平(順天堂大) 15.466点