12日、FIG世界体操競技選手権の男女種目別決勝最終日が行われ、男子鉄棒で内村航平(KONAMI)は15.725点で2位に入り、銀メダルを獲得した。これで世界選手権で通算16個目のメダルとなり、日本人選手最多記録を更新。優勝はエプケ・ゾンダーランド(オランダ)が16.225点で連覇を達成した。平行棒は加藤凌平(順天堂大)が3位、田中佑典(KONAMI)が5位に入った。金メダルはオレグ・ベルニャエフ(ウクライナ)が獲得。跳馬はリ・セグァン(北朝鮮)が制した。白井健三(岸根高)は2大会連続4位だった。女子平均台は寺本明日香(中京大)が4位。シモーネ・バイルズ(米国)は平均台と床運動で優勝し、今大会4冠を成し遂げた。
 最終日となったこの日は日本選手5名が出場し、世界のスペシャリストたちに挑んだ。

 男子跳馬には前回4位の白井が登場した。全体のトップバッターで挑んだ白井は、1本目は自らの名がついたF難度の「シライ/キム・ヒフン」(ロンダートから後転跳び後方伸身宙返り3回半ひねり)を実施。2本目は難度を少し落とした「ドリッグス」(側転跳び4分の3ひねり後方伸身宙返り1回半ひねり)で挑んだ。着地は若干動いたが、いずれも9点台のEスコア(出来栄え点)で2本の平均得点15.062点。だがロンド五輪のメダリスト全員が出場した他選手とはDスコア(難度点)で差があったため、2大会続けてメダルに届かなかった。

 女子平均台を制したのは、17歳のバイルズ。跳躍力を生かしたダイナミックな演技で15.100点をマークした。バイルズはゆかでも15.333点で制し、いずれも15点台。団体、個人総合と合わせて4冠を達成し、女王に君臨した。日本勢では寺本が団体、個人総合では落下した連続技を決めるなど、ミスなく演技を終えた。3位とはわずか0.066点差の4位。「メダルは夢の夢の存在だった。それが近づいている」と手応えを口にした。

 男子平行棒は加藤と田中の2人が出場。抜群の安定感が光る加藤だが、今大会は予選のミスにより個人総合決勝を逃し、得意のゆかでも6位と今ひとつ乗り切れていない。「個人のメダルは取ってなかった。ただでは帰らないぞ」と臨んだ。次々と繰り出す技は美しく安定していた。フィニッシュの後方屈伸2回宙返り下りの着地をこらえ、9点近いEスコアを叩き出した。15.666点で3位に入り、銅メダルを獲得した。一方、個人総合の平行棒では全体トップの15.500点を出している田中はE難度の「シャルロ」で姿勢が乱れるなど、15.041点で5位だった。

 世界体操のフィナーレは鉄棒。日本からは内村が演技順は2番目だった。トップバッターは地元中国のジャン・チェンロン。団体の決勝で大トリを務め、完璧な演技を披露し、大逆転を演出した立役者である。しかし、ジャン・チェンロンは試技中にプロテクターが切れるアクシデント。ざわつく会場を一瞬にして自分のムードに持っていくのが、百戦錬磨の個人総合の世界王者である。

 内村はアドラー1回ひねりからの伸身トカチェフから入り、G難度のカッシーナ、D難度のコバチの連続技に成功。フィニッシュの伸身新月面宙返りは、着地で前に弾んだ。演技終了後は声を上げて悔しがった。Dスコアは7.1点、Eスコアは8.525点で15.725点だった。「本来予定した演技とは若干違う。Dスコアを0.3上げる予定だったんですけど。最初の入りの部分でひねり技が倒立にはまらなくて、それでいけなかった。自分の納得いく演技じゃないので銀メダルなのかな」と表彰式後に振り返った。

 その内村を上回る演技を見せたのが、ゾンダーランド。前回大会の王者で、ロンドン五輪でも金メダルを手にした鉄棒のスペシャリストだ。次々と離れ技のコンボを繰り出し、観客を大いに沸かした。カッシーナとコバチ、さらにはF難度のコールマンとE難度のゲイロード2という難易度の高い連続技を次々に決めた。フィニッシュの伸身新月面宙返りこそ、着地で横に弾んだが、圧巻の演技。内村も拍手し、「降参」といった表情を見せた。得点も16.225点と断トツのトップで連覇を決めた。

 南寧で開催された世界体操はこれで閉幕。日本勢は計6個のメダル(金1、銀3、銅2)を獲得した。前回大会からは1個減ったが、悪くはない結果と言えるだろう。際立ったのは相変わらず内村の強さだったが、男子は団体で中国を追い詰めるところまで迫った。キャプテンとしてチームを引っ張った内村も「このまま続けていけば日本を一番だと証明できる」と自信をのぞかせた。来年はイギリス・グラスゴーでの決戦となる。世界体操を前に行われたアジア競技大会では、神本雄也(日本体育大)が3冠を達成するなど、現メンバーもうかうかしてはいられない。高いレベルでの競争で、切磋琢磨を期待したい。

<男子種目別鉄棒・決勝>
1位 エプケ・ゾンダーランド(オランダ) 16.225点
2位 内村航平(KONAMI) 15.725点
3位 マリジョ・モズニク(クロアチア) 15.000点

<男子種目別平行棒・決勝>
1位 オレグ・ベルニャエフ(ウクライナ) 16.125点
2位 ダニエル・リーヴァ(米国) 15.933点
3位 加藤凌平(順天堂大) 15.666点
5位 田中佑典(KONAMI) 15.041点

<男子種目別跳馬・決勝>
1位 リ・セグァン(北朝鮮) 15.416点
2位 イゴール・ラディヴィロフ(ウクライナ) 15.333点
3位 ヤコブ・ダルトン(米国) 15.199点
4位 白井健三(岸根高) 15.062点

<女子種目別平均台・決勝>
1位 シモーネ・バイルズ(米国) 15.100点
2位 バイ・ヤーウェン(中国) 15.033点
3位 アリーヤ・ムスタフィナ(ロシア) 14.166点
4位 寺本明日香(中京大) 14.100点