2020年東京五輪・パラリンピック大会競技組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)の調整委員会は、大会準備に向けた2度目の事務折衝となる「第2回プロジェクトレビュー」を2日間行った。最終日となった19日、都内で合同会見を開き、進捗状況を報告した。組織委の森喜朗会長は「濃密な時間を過ごし、有意義な議論ができた」と感想を語れば、IOC副会長を務めるジョン・コーツ調整員会委員長は「時間を無駄にせず、準備が進んでいる」と組織委を高く評価した。組織委と調整委員会の会合は来年2月にも行われる。
(写真:会見に臨むIOCのコーツ副会長と組織の森会長)
 第1回から半年以上が経過したプロジェクトレビュー。会見でIOC側から発せられた言葉はどれも好意的なものばかりだった。

 国内では度々、話題に上がっている会場計画についても議論された。組織委はバスケットボール、バドミントン、セーリング、水球、トライアスロンの会場見直しを調整委員会に報告。前日には代替会場候補の視察を行い、バスケットボールの「さいたまスーパーアリーナ」と建設中であるバドミントンの「武蔵野の森総合スポーツ施設(仮称)」を訪れた。両会場はさいたま市と調布市にあり、招致段階で謳っていたコンパクト五輪という観点からは外れる。IOCのコーツ委員長は「移動距離はそんなに大事なことではない。それにさいたまスーパーアリーナは2006年に世界選手権を行った実績がある。我々にとって重要なのは、既存の施設を最大限に利用すること」と、“8キロ圏内”に囚われないという構えだ。

 これには18日にIOCから発表された「五輪アジェンダ2020」が大きく関係している。IOCのトーマス・バッハ会長が進める40項目からなる改革案。そのひとつに既存の施設の有効活用が含まれているからだという。さらにコーツ委員長は、サッカーやバスケットボールのグループリーグの地方開催を提案し、「大きな施設を持っていれば、チケット収入にもつながる」と語った。組織委の森会長は、サッカーは既に宮城県などでの分散開催を決めている。競技団体からは大阪開催の要望が来ていたことも明かし、「我々は大阪まで延ばしていいのは難しいと考えていた。IOCから地方でやってもいいというアドバイスがあるのなら、これは画期的なこと。まさにオールジャパン体制となる」と話した。当初は11月頃に会場計画を固めたいとの意向を表していた森会長も「次のプレジェクトレビューのある来年の2月。会場計画に限らず、それまでに決められるものをひとつひとつ決めていく」と述べた。これに対してIOCのコーツ委員長は「来年にずれこんでも問題ない」と容認した。

 開催都市の東京都の舛添要一知事は、都議会の特別委員会で新設予定だった3会場の建設中止を発表した。招致段階の試算より約3倍の4500億円に膨れ上がった整備費を抑えるためのものである。その他の会場でも既存の施設を利用することで約2000億円をコストカットできる見通し。今後も圧縮に取り組む方針だという。「コストが適正なものがレガシー。開催都市に負担のかかるものはレガシーとは言えない」。IOCのコーツ委員長が言うように、新設会場が“負の遺産”となってしまっては意味がない。会場計画は精査し、厳しく見極める必要があるだろう。12月にはIOC臨時総会が行われ、「五輪アジェンダ2020」が採択される。この結果次第で、組織委の舵取りも変わるはずだ。来月、モナコで東京大会の指針は見えてくる。

(文・写真/杉浦泰介)