19日、Jリーグは事務局で理事会を開き、3クラブのJ1・J2昇格(J1=湘南、松本。J2=金沢)、レノファ山口のJ3昇格、Jリーグ・アンダー22選抜の来季J3参加を承認した。また村井満Jリーグチェアマンは、賞金と各クラブへの配分金を来季から見直し、J1の年間優勝クラブ(来季から2ステージ制)の賞金額を最大2億8000万円に設定したことなどを発表した。
「今まではJ1の資金を使いながらJ2を育てきた」
 村井チェアマンがこう語ったようにJリーグはJ1の1クラブ当たりの配分額を減らし、J2のクラブに還元してきた。04年に約3億6000万円あったJ1の1クラブ当たりの配分金は、13年は約2億6000万円となっていた。99年のJ1とJ2の1クラブ当たりの配分金の比率は、J2を1とした場合、「4.69:1」だったのに対し、13年は「1.93:1」。リーグがJ1クラブに比べて経営基盤の小さいJ2クラブを厚く支援していたことの証左だが、クラブ数を増やしながらの発展を考えると、その判断は間違っていなかったように映る。経営難でリーグを脱退するようなケースが起きるようでは、安定したリーグ運営が望めないからだ。

 しかし、クラブライセンス制度導入の成果もあって、J1とJ2に債務超過および3期連続赤字を計上したクラブはなくなった。この現状を受けて、リーグは今後、配分原資が増えた場合はJ2ではなく、J1に厚く資源配分することを決めた。前述の配分原資の比率(「J1:J2」)でいえば「2.5:1」程度に見直すという。J1の指数が2.5を超える可能性がある場合、格差拡大の構図を維持するか、または2.5で維持するかはその時点で議論する。

「ひとつひとつのクラブが強くなっていくため」
 村井チェアマンは、J1クラブに配分する原資を厚くすることの意義をこのように述べた。配分原資の見直し以外では、リーグスポンサーイベント事業協力費を15年から、順位配分、入場者数配分を16年から導入し、育成配分の導入は今後検討する。また放映権料(スカパー!)は15年より配分原資を増額する。

 リーグスポンサーイベント事業協力費では、たとえばJリーグのスポンサーがサッカースクールを開いたりすることに協力したクラブに対し、そのイベントに必要なコストや貢献・努力に応じた原資を傾斜配分する。スポンサーにJリーグのスポンサーになったことのメリットを提供すると同時に、様々なスポンサーアクティビティに対してキメ細かく対応するクラブを報いていこうという考え方だ。

 またこれまであった総額5億1000万円の賞金原資から1億8000万円を「順位配分原資」に充てる。残る3億3000万円は「賞金」として分配し、J1の年間優勝クラブは最大で2億8000万円(完全優勝の場合。年間1位=8000万円、前後期優勝=各5000万円、年間優勝=1億円)となる。順位配分はACL出場クラブを中心に厚く配分するように検討し、15年の成績をもとに16年から配分を開始する。詳細な配分ルールは15年4月までに提案される見込みだ。リーグは12年から「ACLクラブサポートプロジェクト」を立ち上げ、財政的(アウェーへの渡航費の一部負担など)、人的(スカウティングスタッフの派遣など)支援を行っているが、順位配分はACLクラブサポートプロジェクトとは別枠となっている。村井チェアマンが「来年の基本方針はACLのタイトル獲得」と意気込むように、順位配分はJリーグがアジアナンバーワンを目指す上での投資だ。その意味で支援を受けたACL出場クラブの責任はより大きくなる。

 村井チェアマンは、賞金や配分金などの見直したことで「協調型のフェーズ(段階)から、経営努力をしっかり行ったクラブが報われるような競争のフェーズに入る」と今後のリーグを展望した。新たな配分金ルールによって、上位クラブまた経営力に優れたクラブには今まで以上に資金が流入することになる。下位クラブや経営基盤の小さいクラブとの格差も広がるだろう。しかし、それが“プロリーグの本来の姿”なのではないだろうか。海外リーグの配分原資の比率(「1部:2部」)はドイツが「3.8:1」、フランスは「4.3:1」である。リーグからの助けを受けるばかりでは、ビッグクラブにはなれない。共存共栄から弱肉強食へ。Jリーグが新たな時代へ突入する。

(文・鈴木友多)