22日、J1第32節が各地で行われ、埼玉スタジアムでは2位・ガンバ大阪が首位・浦和レッズを2−0で下した。この結果、G大阪は浦和との勝ち点差を2に縮め、残り2節での逆転優勝に望みをつないだ。試合は互いに決定機をモノにできなかったが、G大阪は後半43分、FW佐藤晃大のゴールで先制。アディショナルタイムにもMF倉田秋が追加点を決め、圧倒的なアウェーゲームを制した。

 途中出場の佐藤が決勝弾(埼玉)
浦和レッズ 0−2 ガンバ大阪
【得点】
[G大阪] 佐藤晃大(88分)、倉田秋(90分+3)
「交代した選手が結果を出してくれた。ここに今のガンバの強さがある」
 長谷川健太監督は、自信に満ちた表情でこう語った。負ければ優勝の可能性が消滅するという重圧がある中、G大阪はチーム全体で勝利を掴み取った。

 前半はMF遠藤保仁が「どっちつかずの展開だった」と振り返ったように、G大阪も浦和もビッグチャンスをつくりだした場面は少なかった。前半42分、DF槙野智章にPA外の右45度の位置から打たれたシュートが遠藤の頭に当たってゴール方向へ。これはGK東口順昭が落ち着いてセーブした。G大阪も45分、パトリックが浮き球のパスに抜け出し、PA内でヘディングシュートを放ったがGK西川周作に防がれた。試合開始から重苦しい緊張感がスタジアムを包んだまま、試合を折り返した。

 長谷川監督はハーフタイムで選手たちに「60分(後半15分)過ぎからアップテンポの試合になるぞ」と喚起した。浦和の試合映像を見て、「最近の浦和は前半を慎重に入って、後半に勝負をかけてくる」と考えていたという。果たして、試合は長谷川監督の予想どおりの展開となった。 

 後半15分を過ぎたあたりから、G大阪は浦和の波状攻撃に押し込まれた。22分には右サイドを崩され、最後はPA手前からMF青木拓矢にミドルシュートを打たれた。これはゴール上に外れたものの、浦和がギアをアップしたことは明らかだった。だが、G大阪の守備陣は落ち着いた対応で劣勢をしのいでいった。サイドを崩されても中央でしっかりと浦和の選手をマークし、DF岩下敬輔、DF丹羽大輝のCBを中心にボールを跳ね返す。また遠藤とMF今野泰幸という日本代表ボランチコンビが、浦和の選手に激しいプレスをかけてボールを奪うなど、ピンチの芽を摘んだ。

 ピッチ上以外ではベンチワークの応酬が行われた。浦和が11分にMFマルシオ・リシャルデス、18分にMF関根貴大を投入。対するG大阪も26分にFW宇佐美貴史を下げてFWリンス、29分にはMF大森晃太郎に代えて倉田という攻撃的な選手をピッチに送り出した。また長谷川監督は34分にもFWパトリックを諦めて佐藤を起用し、浦和よりも早く3枚の交代カードを使い切った。結果的に、指揮官の交代策が結実する。

 37分、浦和にセットプレーのリスタートから左サイドを突かれ、PA内左サイドでフリーで受けたMF宇賀神友弥に右足で狙われた。しかし、ゴールに右下に飛んだボールを、東口が好反応で弾き出し、大ピンチを脱した。

 すると43分、G大阪に待望の先制点が生まれた。決めたのは佐藤だ。浦和のセットプレーをクリアしてからのカウンターでリンスが左サイドを突破。PA内にまで侵入し、相手2人を引きつけてから横に出したパスを、走り込んできた佐藤が右足でゴール右へ流し込んだ。5万6758人が入ったスタジアムのスタンドがほとんど赤に染まる中、佐藤がゴールした瞬間は数は少ないながらも青色の観客席が揺れた。佐藤が「今までチームに貢献できてなかったが、やっと貢献できた」と喜ぶゴールは、逆転優勝に望みをつなげる貴重な決勝点となった。

 G大阪はさらに後半アディショナルタイム、今野が右サイドでボールを拾ってうまくゴール前まで持ち込み、左にいた倉田へ。倉田は縦に仕掛けてから左足でゴール右下にシュートを沈めて、チームの勝利を決定的にした。

 途中出場の佐藤、倉田がゴールを決め、先制点をアシストしたのもベンチスタートのリンスだった。遠藤は「シーズン通して、11人だけでは試合はできない。今日も代わった2人が点を決めてくれた。そうやって全員で勝利を勝ち取っていくというのは、非常にチームとしても勢いが出る」と大一番での勝利を喜んだ。一方で佐藤は「2トップが前半から頑張って相手を疲れさせたのでスペースが生まれた。(自分が)フリーで打てたのは前半の2トップの献身的な動きがあったから」とスタメンの選手たちを称えた。思えば、8日のナビスコ杯決勝でも途中出場した大森が決勝点を奪っていた。今のG大阪は、誰が出てもクオリティーを下げずに戦うことができている。

「まだトップに立ったわけではない。残り2つしっかりと気持ちを切り替えて、2連勝するしかない。残り試合も、(天皇杯決勝に進んだ場合)最大4試合。残りの4試合をすべて勝つつもりで、いい結果を出したい」
 遠藤の言うとおり、依然として首位は浦和であり、G大阪は優勝への望みをつないだに過ぎない。しかし、現時点で3冠を狙えるチームがG大阪しかいないということも、また事実である。

(文・鈴木友多)