29日、日本代表は千葉県内で来年1月のアジアカップ(オーストラリア)に向けた合宿を開始した。合宿地にはDF吉田麻也(サウサンプトン、1月3日にオーストラリアで合流)を除く選手22名とトレーニングパートナー2名が集合した。練習前には大仁邦彌会長がスペイン検察庁からハビエル・アギーレ監督が八百長疑惑で告発されたことについての経緯と現状を選手に説明。アギーレ監督も選手に潔白を主張したという。これを受けてキャプテンのMF長谷部誠(フランクフルト)は「チームをつくっていく上でお互いを信頼してやっていくことが重要」とアジア杯に向けて団結の必要性を強調した。
(写真:監督に疑惑がかかっている状況だが、長谷部は「選手はピッチでやるしかない」とアジア杯へ集中している)
 ボール回し、体幹トレーニング、バーを隔ててのボールゲームなど、合宿初日はコンディション調整を主な目的とした練習メニューだった。アギーレ監督の八百長疑惑に対する喧噪が日増しに大きくなっているが、各選手の表情には笑みが浮かぶなど、雰囲気の良い中での始動となったようだ。

 しかし、ピッチ外には異様な空気が漂っていた。多くの報道陣が渦中の指揮官についてのコメントを聞き出そうと選手を待ち構えているのだ。主将の長谷部がミックスゾーンに現れると、瞬く間に人の山ができた。長谷部によると、宿舎で選手たちは大仁会長から「迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪を受けたという。そして、アギーレ監督からも話を聞いた長谷部は「直接話してくれることによって、心の中に入ってくる。そういう言葉がたくさん聞けた」とその時の選手たちの様子を明かした。

「直接話を聞いて(選手たちの)信じる力が試されているなと。監督もサッカーを愛しているサッカー人。それはみんなと一緒で、通じるものがある。監督の話を聞いた後の選手たちの表情を見ても(各選手は)熱いものを感じたと思う。チームは間違いなく同じ方向を向けている。自分たちがまとまっている姿を見せれば、ファン・サポーターも応援してくれるだろう」

 長谷部が語ったように、選手たちは気持ちをアジア杯制覇へと向けている。MF香川真司(ドルトムント)が「アジア杯は自分にとっても、代表にとっても大きな大会。勝ちにいくための準備をして、個人的にもしっかりとしたものを残したい」と語れば、MF清武弘嗣(ハノーファー)も「目の前の試合に集中して、アジア杯を獲ることだけを考える」と意気込んだ。

 だが、アギーレ監督の八百長疑惑は、選手たちにとって余計な雑音であることに違いはない。長谷部はアジア杯に集中するために選手間でミーティングを開催すること考えを改めて口にした。
「(話し合いたいとう)声があればみんなで話し合うことも必要。こういうことはできるだけ早く話したほうがいい」

 初戦のパレスチナ戦(1月12日)まであと2週間。選手たちはコンディションを上げつつ、チームとしての一体感もつくりあげていかなければならない。
「日本サッカーに関係するすべての人が同じ方向を向かないとアジア杯は勝てない」
 長谷部は力強くこう語った。10年南アフリカW杯から代表キャプテンを務める男のリーダーシップに一番期待しているのは、日本サッカー協会ではないだろうか。

(文・写真/鈴木友多)