30日、来年1月のアジアカップ(オーストラリア)向けて合宿中の日本代表は午前中に都内で体力テストを行い、午後は千葉県内でトレーニングを行った。全員が参加してのボールを使ったサーキットトレーニング、パスゲームの後はGKとフィールドプレーヤーに分かれて練習。フィールドプレーヤーはパス練習、ピッチ半面を使ってのボール回しを行い、汗を流した。ボール回しではハビエル・アギーレ監督が直接指示を出すなど、初日よりも練習強度と緊張感が増して合宿2日目が終了した。
(写真:練習で指示を出すアギーレ監督<右>と説明を受ける長谷部)
 寒さが厳しいにもかかわらず、練習場には多くのファン・サポーターが訪れ、代表選手たちに声援を送った。中でも観衆から一番といっていい声援を集めたのがMF本田圭佑(ACミラン)だ。感触を確かめるようにボールをコントロールし、ボール回しでは得意の左足から鋭いパスも披露した。

 2日目を迎えた国内合宿。合宿で選手たちが口を揃えて目的に掲げているのがコンディション調整だ。本田やDF長友佑都(インテル)らヨーロッパでプレーしている選手はシーズン中であるのに対し、MF遠藤保仁(G大阪)ら国内組は1年間のシーズンを終えて本来ならオフ期間。バラつきのある海外組と国内組のコンディションをアジア杯初戦(1月12日、対パレスチナ)に向けていかに均一して向上させるかが重要だ。そのために、午前中の体力テストは各選手の現状を確認するための数値を計測したと見られる。長友は「コンディション(調整)が相当難しい。向こう(オーストラリアは)は暑いし、試合が中3日くらいでずっと続いていくので、体、メンタルのケアが重要になってくる」と語っていた。

 全体練習後、本田は体幹トレーニングを行い、クールダウンとなるジョギングで2日目のメニューを消化した。
「まだ本格的なゲーム形式に入っていないし、(海外組と国内組の)コンディションのバラつきは、まだわかっていないというのが現状。ただ、そこまで問題はないかなと思っている。もうちょっと細かいところに目を向けて、戦術とかをもう少し煮詰めて精度を高めていくことが、この短期間で大事。試合が始まってしまうと、場合によってはコンディション調整だけになってしまう可能性もある。今しかできないことというのはもう少し、監督中心に、選手同士でも話し合っていってもいいのかなと思う」
 本田は着替えた後のミックスゾーンで、現在のチーム状況についてこう語った。
 
 本田個人には前回大会同様、中心選手として連覇への貢献が期待されている。その中で本人は「こういった(連覇という)状況に向かっていくこと自体が初めてのこと」と大会に臨む上での心構えを模索しているようだ。
「(優勝した)前回と同じ調整でいいのか、変えないといけないのかは今のところは手探り。チャンピオンと呼ばれるような組織であったり、人というのはどういうふうにそういうものを維持しているのかは自分なりに考えている。そういう人たちを参考にしながらも、オリジナリティ、自分らしさ、日本代表らしさを入れていきながら、結果、(連覇を)達成できるのであれば理想」
(写真:本田は「アジア杯は簡単なものではない」と気を引き締めた)

 今夏のブラジルW杯で本田は優勝を目標に掲げたものの、結果は1勝もできずにグループリーグで敗退した。アジア杯は日本代表がW杯後に迎える最初の公式大会だ。本田は今大会の目標にも「優勝」を設定している。しかし、彼はアジアの舞台なら簡単に勝てるなどとは、少しも考えていない。むしろ、危機感を抱いて大会に臨もうとしている。
「アジア杯やったら、W杯では負けたけどなんとかなるだろうというのは、危ない考え方。前回もギリギリで優勝したことを忘れてはいけない。今回も勝ちにいく上で、内容は前回と同じではいけないと感じている。ただ、内容を求め過ぎて優勝できないというのも違う。どっちも求めていかないといけない」

“二兎を追う者は一兎をも得ず”という。しかし、本田は二兎(内容、結果)を得ようとしている。それでこそエースだ。アジア杯で日本を頂点へ導くのはこの男しかいない。

(文・写真/鈴木友多)