節目の10シーズン目を迎えたbjリーグ。23、24日に行われる「ターキッシュ エアラインズ bjリーグ ファイナルズ2015」で、14-15シーズンのチャンピオンが決まる。イースタン・カンファレンスは秋田ノーザンハピネッツ(レギュラーシーズン1位)と岩手ビッグブルズ(同2位)が対戦。ウエスタン・カンファレンスは浜松・東三河フェニックス(レギュラーシーズン3位)と滋賀レイクスターズ(同4位)がぶつかる。bjリーグは22日、東京・有明コロシアムで前日記者会見を開き、4チームのヘッドコーチ(HC)が意気込みを語り、静かに火花を散らした。
(写真:「どのチームが優勝するか予想できない」と語る河内コミッショナー)
 劇的なブザービーターあり、レギュラーシーズン下位チームの“下剋上”ありと、熱戦を繰り広げてきた今シーズンのプレイオフ。bjリーグの河内敏光コミッショナーが「10年目の最終決戦にふさわしい4チーム」と胸を張る東西の雄が揃った。

 イースタン・カンファレンスは、レギュラーシーズン1位と2位による頂上決戦。リーグ最多の1試合平均得点89.3点を誇る攻めの秋田と、リーグ最少の1試合平均失点70.2点と守りの岩手が対戦する。
(写真:就任1年目の長谷川HC<左>と2度の優勝経験を持つ桶谷HC)

 秋田は昨シーズンのリベンジに燃える。中村和雄HCの下、司令塔・富樫勇樹を擁し、リーグ参入4年目で初のファイナルズ進出を果たした。カンファレンスファイナルはレギュラーシーズン1位の富山グラウジーズを破ったが、ファイナルでは琉球ゴールデンキングスの前に屈した。

 今シーズン、中村HCと富樫という屋台骨がチームを去ったが、持ち味の攻撃力は錆びつくことはなかった。新HCにはチームをよく知り、日本人初のプロバスケットボールプレーヤーの長谷川誠が就いた。Fリチャード・ロビーなど、主力メンバーの多くが残り、SG田口成浩が大きく飛躍を遂げた。

 田口は元々、シューターとしての評価は高かったが、今シーズンはインサイドでも力を発揮するなど、総合力がアップした。1試合平均16.3点をマークし、シーズンのベスト5にも日本人で唯一選出された。対戦相手の岩手・桶谷大HCをして「自分でクリエイティブできるし、体を張ってディフェンスもする。リバウンドも勝負どころでとっている」と高く評価。「日本人だと思って戦わない」と要警戒の存在となった。

 秋田の長谷川HCは「自分たちのバスケをできるか」をキーポイントに挙げ、選手には「楽しむこと」を期待した。“普段着”のバスケ。つまりは攻撃的なバスケで、有明でも勝負する。

 対する岩手は、2度のチャンピオン経験のある名将・桶谷HCがどう辣腕をふるうか。リーグ参入4年目で、プレイオフには2度出場したが、有明には辿り着けていなかった。その過去2年、プレイオフで岩手の前に立ち塞がっていたのが、秋田である。秋田が昨シーズンのリベンジに燃えるならば、岩手は宿敵・秋田を破って、ファイナル進出を目指す。

 ウエスタン・カンファレンスも対照的なチームがぶつかり合う。ファイナルズ5度目の出場となる浜松と、初出場の滋賀。イースタンが“矛”と“盾”との争いならば、こちらは“経験”と“勢い”の戦いだ。
(写真:滋賀・遠山HC<左>は5年前、浜松のアシスタントコーチとして優勝を経験)

 浜松は3年ぶりのファイナルズ進出。4季ぶり3度目の王座を狙う。就任3年目の東野智弥HCは「有明に戻ってこれた。扉は重く、苦しかった」と感慨深げにファイナルズを迎える。

 ここ2年は28勝24敗、27勝25敗の成績でレギュラーシーズンはウエスタン6位、4位と低迷していた。今シーズンは新外国人4人を含む新戦力7人とチームは生まれ変わり、41勝11敗で3位に浮上。プレイオフでも昨シーズンの王者・琉球を撃破した。不死鳥は慣れ親しんだ有明に還ってきた。

 C太田敦也、G大口真洋、SG岡田慎吾と優勝経験のある日本人を揃え、Gナイル・モーロ、Fモー・チャーロら外国人は総合力が高い。レギュラーシーズンは全選手が40試合以上に出場するなどチームバランスはピカイチ。攻守にバランスの良いチームに死角は見られない。

 しかし、対戦相手の滋賀はプレイオフでリーグ最多タイの優勝回数を誇る大阪エヴェッサ、bjリーグ史上最多のレギュラーシーズン44勝を挙げた京都ハンナリーズを下して、ここまで勝ち進んできた勢いがある。滋賀の遠山向人HCも「勢いを大切にしたい」と口にする。ファーストラウンド、カンファレンス・セミファイナルでは2戦先勝方式だったが、ファイナルズからは一発勝負。勢いで押し切れる可能性は十分にある。

 対照的な2チームだが、“全力プレー”という共通点もある。浜松の東野HCが「チームスローガンである“全心全力”で最後までベストを尽くして、トロフィーを持って帰りたい」と語れば、滋賀の遠山HCは「4チームの中で最もファイトして、心をこめて全力で優勝を目指したい」と意気込んだ。 

「相当アグレッシブで速いペースの試合になる」(浜松・東野HC)
「ハードな激しい魅力の詰まった試合になる」(滋賀・遠山HC)
 互いに予想する試合展開もほぼ一致している。レギュラーシーズンの対戦成績は2勝2敗と五分。熱戦必至である。

 節目のシーズンにチャンピオンリングを手にし、歴史に名を飾るのは、どのチームか。日本バスケットボール協会の資格停止問題など、アリーナ外でのゴタゴタばかりが目立っていた日本のバスケ界。改革を断行し、統一リーグは来年からスタートする。新たな船出を迎えようとしている中、選手たちにはコートで日本バスケの可能性を、示してほしい。

【2014-2015シーズン ファイナルズ(有明コロシアム)】

5月23日(土)
<ウエスタン・カンファレンス ファイナル>(13:10〜)
 浜松・東三河フェニックスvs.滋賀レイクスターズ
<イースタン・カンファレンス ファイナル>(17:10〜)
 秋田ノーザンハピネッツvs. 岩手ビッグブルズ

24日(日)
<3位決定戦>(13:10〜)
<ファイナル>(17:10〜)

(文・写真/杉浦泰介)