24日、東京・有明コロシアムで「ターキッシュ エアラインズ bjリーグ ファイナルズ2015」最終日が行われ、ファイナルはウエスタンを制した浜松・東三河フェニックスがイースタン王者の秋田ノーザンハピネッツに71−69で逆転勝ちした。浜松は4季ぶり3度目の優勝。通算優勝回数は大阪エヴェッサ、琉球ゴールデンキングスと並びリーグ最多タイとなた。MVPには浜松のGナイル・マーリーが選ばれた。3位決定戦では滋賀レイクスターズが岩手ビッグブルズを82−75で下した。

◇ファイナル
 東野HC、就任3年目で初戴冠
浜松・東三河フェニックス 71−69 秋田ノーザンハピネッツ
【第1Q】12−10【第2Q】13−23【第3Q】19−17【第4Q】27−19
(写真:試合終了のブザーが鳴り、歓喜に沸く浜松の選手たち)
 最後まで目が離せないシーソーゲーム。1万人を超える観衆を熱狂させた接戦を制したのは、経験と総合力で勝る浜松だった。

 第1クォーター(Q)は互いに硬さからか、波に乗れないまま時間が過ぎていった。特に浜松は開始早々、いきなりシュートを2本連続で失敗。得意の3ポイントシュート7本全部外すなど、フィールドゴール(FG)は28.6%と低調だった。それでも秋田はFG20%と精彩を欠いていたことにも助けられ、12−10と2点リードで第1Qを終えた。

 続く第2QからはリーグNO.1オフェンスの秋田に押し込まれる。Fディショーン・スティーブンスに独壇場を許す。スティーブンスに豪快なアリウープを叩き込まれるなど、インサイドを制圧された。このQだけで14得点6リバウンドを奪われ、前半は25−33と8点のビハインドとなった。3ポイントシュートは1Qと合わせて、ベテランシューターのG大口真洋の1本だけしか成功しなかった。前半は17分の1本しか入らなかった。
(写真:30得点と孤軍奮闘した秋田のスティーブンス)

 それでも東野智弥ヘッドコーチ(HC)は選手たちを信じた。ハーフタイムに入り、「チャンスは来るから打ち続けろ」と指示。第3Qを我慢の展開が続いたが、長身センターの太田敦也がミドルレンジからのシュートを連続で決め、徐々に秋田との差を詰める。Fジャメイン・グリーンの3ポイントが飛び出すなど、44−50で終了。浜松は残りの10分間に逆転の望みをつないだ。

 そして迎えた第4Q。スティーブンスに再び押し込まれるも、ここに来て浜松のアウトサイドのシュートが決まり出す。Fモー・チャーロとマーリーの連続3ポイントが決まり、ついに同点に追いついた。一度は逆転したものの、スティーブンスにシュートブロックされ、流れは秋田に再び傾いた。速攻でスティーブンスにダンクを決められるなど、60−63とリードを許す。残り3分を切ったところで、マーリーが再び3ポイントをリングに沈め、同点に持ち込む。
(写真:マーリーは3P2本決めるなど、第4Qだけで14得点)

 両チームが点を取り合いながら、時間は刻一刻と経過していった。残り25秒90の場面で、スコアは69−69の同点。東野HCが指揮を執る浜松ベンチは、チャーロの個人技に賭けた。チャーロはボールを保持し、時間を使う。残り10秒を切った後、3ポイントライン付近までドライブで切り込むと、相手に囲まれる。ここでチャーロはパスを送った。ペイントエリア内でボールを受けたのは、スクリーンに入っていたPFオルー・アシャオル。これをアシャオルは「いつも練習していた」というフローターシュート。ボールは弧を描き、リングに吸い込まれていった。スコアボードに71の数字が灯り、残り3秒ちょっとで浜松が勝ち越した。
(写真:フローターショットで決勝点を決めるアシャオル)

 対する秋田はG田口成浩に賭けたが、田口からFリチャード・ロビーが同点を狙った3ポイントシュートは惜しくも外れた。アシャオルがリバウンドを掴み、終了のブザーが鳴った。その瞬間、クレイジーピンクの秋田のブースターからは悲鳴が、フェニックスレッドの浜松のブースターからは大きな歓声が上がった。浜松は苦しい時間帯も我慢して耐え抜いたことで、逆転勝利を掴み取った。東野HCは「最強ではないかもしれないが、フェニックスは最高のチーム」と胸を張る。HC就任3年目で初のbjリーグ制覇。チームとしては4シーズンぶりの王座奪還となった。

 キャプテンのG大石慎之介が「チームが1つになれたこと」を勝因に挙げたように浜松の強みはチーム力だった。攻撃面では20得点を挙げ、MVPを獲得したマーリーをはじめ、チャーロとアシャオルら外国人の活躍が目立った一方、守備では太田、大口などの日本人選手たちが奮闘した。秋田の得点源だったシューター田口をFG率0%と完全に封じ込め、インサイドではFルーベン・ボイキンに1得点と仕事をさせなかった。秋田の長谷川誠HCも「オフェンスを完璧に止められた」と脱帽した。
(写真:スローガンの“全心全力”通り、ひとりひとりがベストと尽くした浜松)

 10年目という節目のシーズンは、浜松の優勝で幕を閉じた。NBLとのリーグ統一を進めているため、来シーズンはbjリーグとしてはラストイヤーとなる可能性は高い。浜松は最後のシーズンを制し、2度目の連覇と単独最多の優勝回数を狙う。

(文・写真/杉浦泰介)