1日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)の調整委員会は都内で合同会見を開き、6月30日から2日間行われた第2回IOC調整委員会会議の報告をした。会見ではIOCのジョン・コーツ副会長が「1年間の進捗状況にとても満足している」と高評価。「次回を楽しみにしている」と語った。第3回IOC調整員会会議は、来年5月25日から27日まで3日間、開催される。
(写真:IOC側からはコーツ副会長<右>デュビ五輪競技大会エグゼクティブディレクターら14名が来日した)
 IOCのコーツ副会長ら14名の調整委員会メンバーは1日目、千葉県の幕張メッセを視察した。コーツ副会長は「新しいスポーツのクラスター(集団)ができあがります。競技を通じて、観客のみならず千葉県のコミュニティを巻き込むのことができる」と、フェンシング、レスリング、テコンドーと3競技が行われる会場に太鼓判を押した。IOC一行はその後、船で移動しながら東京ベイゾーンを眺望した。組織委の森喜朗会長は「素晴らしい景観を背景にアスリートが活躍する姿を想像していただけたのではないかと思います」と胸を張った。

 2日目は組織委が「東京2020の取り組み」「ガバナンス」「財務&調達」「コマーシャル」「五輪・パラリンピック選手団の準備状況」「スポーツ&会場」「パラリンピック競技大会」「アクション&レガシープラン/持続可能性」「エンゲージメント」「コミュニケーション」という複数のテーマでプレゼンテーションをした。森会長によれば、IOC側からは「すべて包括的で大変分かりやすい」という意見をもらったという。

 IOC側は東京の準備状況を高く評価した。コーツ副会長は25日に遠藤利明氏が東京五輪・パラリンピック担当大臣に就任したことを「彼は国と地方政府の間の調整、協力強化の上で重要な役割を果たされる。私もシドニー大会で経験したんですが、オリンピック・パラリンピック担当大臣を設けることは大会成功に重要な意味を持ちます」と歓迎した。

 コーツ副会長は組織委のマーケティングプログラムを「非常に大きな成功を収められた」と称賛。今年はじめから15社とスポンサー契約を結んだことで「日本の経済界、国民全般から大会への強い関心があることの証左である」と喜んだ。会場変更についても、既設の施設が全体の33%だったものを50%に引き上げたことを評価。「五輪アジェンダ2020の提言をしっかり反映してくださったこともうれしく思っている」と語った。

 総工費が2520億円と巨額に膨れ上がった新国立競技場について、コーツ副会長は「これは国、都のプロジェクトで組織委員会の予算の外にある」と問題にしなかった。森会長は「旧国立競技場は1964年の五輪の際にできたもの。老朽化し、危険なところもあった。何かの機会に作りかえてほしいというのは、スポーツ関係者皆が考え、希望していたことなんです」と建て替えの理由を改めて説明。「日本の国がつくるもの。高いか安いかは国民が判断する。五輪だけに使われるんじゃないんです。これから50年、できれば70年、80年も日本のスポーツの象徴として使いたい」と熱弁した。
(写真:森会長<右>は招致時の会場建設の試算について疑問を呈した)

 森会長は「あと5年でありますが、日本では招致決定以降、大会に向けての国民の期待が高まってきています。リオデジャネイロ大会が終われば、世界の注目は一気に東京に集中することになる。来年、再び委員の皆様をお迎えする際には東京がリオから確実にバトンを受け取り、次の4年間を走り続けることができると実感いただけるように、これまで以上に準備を加速して行きたいと思います」と意気込む。IOCからは概ね高評価は受けたものの、新国立競技場建設を含めクリアすべき問題は少なくない。突っ走る勢いも時には必要だが、国民をはじめとした周囲を置き去りにしてはならない。

(文・写真/杉浦泰介)