日本中が熱狂した北京五輪野球アジア予選。星野仙一監督率いる日本代表は、宿敵の韓国、ホームの台湾を下し、3連勝で公開競技だったロサンゼルス五輪から7大会連続の五輪出場を決めた。

(写真:今回の予選で使用された日本代表ユニホーム)
 この予選、日本は持ち味である“つなぎの野球”を随所にみせた。特に予選通過を決めた台湾戦、1点ビハインドで迎えた7回の攻撃は象徴的だった。無死1、2塁の場面で野選を誘った代走・宮本慎也(東京ヤクルト)の好走塁、大村三郎(千葉ロッテ)がみせた同点スクイズ――。その後も単打のみで得点を重ね、6点を奪うビックイニングをつくった。

 塁上を軽快に駆け巡る選手たちの動きをサポートしたのが、ミズノ製の日本代表ユニホームだった。このユニホームは2004年のアテネ五輪で使用されたものと同じモデルが使われている。コンセプトは“木陰の涼しさ”。従来のユニホームと比べると生地を約50パーセント薄くし、質量を約30%軽量化した。通気性は約45パーセントも向上している。

「アテネを視察した長嶋茂雄監督(当時)から、“(アテネは)暑くて乾燥している”というお話をうかがいました。また選手からは“軽いものがいい”という要望が出ていたんです」

 03年に実施されたアテネ五輪のアジア予選から日本代表ユニホームを担当しているスポーツ事業部ダイアモンドスポーツウエア企画課長・宇野秀和さんは、“軽涼”化に着手した理由をそう語る。とはいえ、単に生地を薄くするだけでは耐久性が弱くなる。アテネのスタジアムが日本よりグラウンド条件が悪い点を考慮すれば、軽くて丈夫なものを製作する必要があった。

「耐久性に優れた網組織を何度も試作の中で工夫しました。しかもポリエステル100%ではなく、ストライプをくっきり見せるというデザインの観点からラインの部分にはナイロン素材を使っています。2つの素材をうまく編みこんで耐久性を落とさないようにする点が難しかったですね」

 同時に通気性を向上させるメッシュの部分にも工夫が盛り込まれた。従来のメッシュ素材は穴を大きくすることで風通しをよくしていたが、逆に日光が入り込み、ユニホーム内の温度が上昇するという欠点があった。そのため、穴を極力小さくしながらも、通気性を確保する編み方が考案された。まさにコンセプトである日光の差し込まない“木陰の涼しさ”が実現したのである。

 1年間の製作期間を経て、いよいよ試着の日。担当者にとっては選手の反応がもっとも気になる瞬間である。ユニホームを着るなり当時、日本代表のエースだった松坂大輔(現レッドソックス)が驚きの声をあげた。「ユニホームじゃないみたいですね」。他の選手からも「軽くて動きやすい」と好評だった。長嶋茂雄監督からも「いいんじゃない」と納得の言葉が出た。無事、ユニホームの納品が完了すると、宇野さんには「完全燃焼」の思いがこみあげてきたという。

「素材やデザインの選定で製作期間は1年かけていますが、代表選手が決まるのは直前。実際に生地を裁断し、縫製してユニホームを形にするのは短期間しかありません。もちろんサイズはひとりひとりの選手に合わせたオーダーメイド。これはミズノが長年、プロ野球選手とお仕事をする中で、体のサイズなどのデータをとり、短期で対応できるノウハウをもっていればこそ、できることです」

 そう胸を張った宇野さん。実は、もう北京に向けて動き始めている。既に今年の春から、北京五輪用新ユニホームの製作に着手しているのだ。悲願の金メダルに向け、どんなテクノロジーが駆使されるのか、今から楽しみである。

「日本代表のユニホームを作っていることを、僕はもちろん、このプロジェクトに関わっているすべての人間が誇りにしています。ぜひ、新ユニホームで北京を勝ち抜いてほしいですね。その時が、僕たちにとっても一番うれしい瞬間ですから」

 デザイン、裁断、縫製、マーク加工……製作過程で誰かひとりが欠けても、ユニホームが日の目をみることはない。星野ジャパン同様、彼らもまたチーム一丸となって、五輪本番に向かって戦っている。


 与田、秦氏が山形・酒田市で熱血指導 〜ミズノビクトリークリニック〜

 ミズノ株式会社ではスポーツ振興活動の一環として「ミズノビクトリークリニック」を開催している。これは各競技のトップアスリートがアドバイザーとして全国各地を訪れ、実技指導や講演、トークショーなど行なうものだ。子どもたちはスポーツの楽しさや技術向上のためのヒントを、また指導者は適切なトレーニング方法や指導法などを学ぶことができる。

 11月23日には、山形県酒田市かんぽスワンドームで野球クリニックが開催された。講師は元プロ野球選手の与田剛氏と秦真司氏。両氏とも現役時代からグラブやスパイクなどミズノの用具を使用し、華麗なプレーでファンを魅了してきた。その2人から指導を受けたのは酒田市内にある25の少年野球チームから6年生を中心に選ばれた総勢100人の子どもたちだ。
(写真:投げ方の基本を指導する与田氏)

「はい、じゃあ足を高く上げて、ダッシュ! これを後もう100回やるぞ……うそ、うそ(笑)」
 最初は緊張気味だった子どもたちも、与田先生の冗談交じりのかけ声に、徐々に表情が和らいでいく。

 準備運動で体とともに心もほぐれたところで、まずはキャッチボールの指導から始まった。ボールの握り方、ステップの踏み方……。子どもたちにわかりやすいように、ゆっくりと丁寧な言葉づかいが印象的だ。子どもたちも与田、秦、両先生の間を行き交うボールを真剣な表情で追う。
「コントロールが悪いと思ってる人?」
 突然の質問に、子どもたちは一瞬表情を強張らせた。遠慮しがちにひとり、またひとりと手が挙がる。

「実は僕も子どもの頃、コントロールが悪かったんだ。だから、小学校の時はエースナンバーを付けられなかったんだよ。でも、どうしたらうまくなるか、一生懸命練習したんだ」
 与田剛といえば、現役時代は日本を代表する剛速球投手。プロ1年目で新人としては史上最多の31セーブを挙げ、新人王と最優秀救援投手を獲得した。そんな輝かしい実績を持つ同氏も小学生の時から決して秀でていたわけではないのだ。

「プロになるには、小さい頃からエリートでなくてはダメだと思ってしまいがちです。でも、そうでないことを元プロの僕たちが言うことによって『もっと、頑張ろう!』と子どもたちが思ってくれる。そういうことを伝える場として、こういうクリニックは最適ですよね」と与田氏は語る。

 プロからも絶賛される美しいスイングでヤクルト黄金時代を支えた秦氏もまた、このクリニックに大きな意味合いを感じている。
「徳島出身ということもあって、子どもの頃はプロ野球選手と触れ合う機会はなかった。だから、子どもたちにとってはすごく貴重ですよね。それに、直接プロからのコーチングを受けることによって、子どもたちは何かを感じ取ってくれるんじゃないかと思うんです」
(写真:子どもたちの姿に秦氏も笑顔がこぼれた)

 全国の子どもたちに「夢、感動、力」を――これこそがまさに「ミズノビクトリークリニック」の活動指針だ。地道な草の根活動は今、全国に広がっている。


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(このコーナーでは北京五輪に向けたミズノの取り組みと、子どもたちへの普及、育成活動を随時レポートします)
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