二宮: 今回は雲海酒造さんの地元でもある宮崎から対談をお届けします。宮崎といえば春はプロ野球のキャンプですね。シーズン開幕も間近ですし、田尾さんとそば焼酎「雲海」をいただきながら、今季の注目選手などを語り合いたいと思っています。
田尾: 朝まででもお付き合いしますよ(笑)。よろしくお願いします。


 朝9時まで祝い酒!?

二宮: 田尾さんはかなりお酒が強いとお聞きしています(笑)。
田尾: そんな普段はガンガン飲むタイプではないですよ。ただ、1986年に西武で優勝した日に、ビールかけが終わって夜中の1時30分に六本木で集合したことがありましたね。選手全員で集まって祝勝会をやりました。1次会、2次会、3次会と進んでいくうちに、気がつけば僕と郭泰源だけになっていた(笑)。

二宮: 郭泰源も台湾出身だからお酒が強そうですね。
田尾: 最後まで2人で飲んで、家に帰ったのが朝9時でした(笑)。当時の森祇晶監督からは「どうせ、お酒を飲んで酔っ払うだろうから明日は試合に出なくていい。ただゲーム前の練習には来て汗を流せ」と言われていたんです。ところが、家でちょっと寝ているうちに練習時間に遅れてしまいました。球場に着いたら、もう練習は終わってゲーム前のミーティングをやっていたんです(苦笑)。

二宮: 森さんから怒られたのでは?
田尾: いえ、何も言われなかったんです。石毛宏典には「お前は冷たいヤツだな。電話くらいくれよ」って言いましたよ。そしたら、「もしかしたら田尾さん、違う家にいるかもしれないと思いまして……」と(笑)。アイツ、ああいうところだけは気がまわるんですね(笑)。携帯電話がない時代ならではの思い出です。

二宮: 当時の西武は野球だけじゃなく、お酒も強い選手が多かったですね。
田尾: 六本木が好きだったんですね。そういえば、モノマネをやってくれるショーパブに何人かで行った時に、おもしろくてお店を出たらセミが鳴いていたこともありましたよ(笑)。そのあと球場に行くと、「田尾さん、あそこ面白かったですね」って言われたので、「じゃ、今日も行くか」となりました。「でもセミが鳴く前に帰ろうな」と。ところが、また店を出るとセミが鳴いていました(笑)。

二宮: 家でも晩酌は毎日?
田尾: いや、普段はあまり飲まないんですよ。長男の嫁が来た時に「一緒に飲もうか」と誘うくらいです。飲まない日がずっと続くときもありますね。

二宮: 現役時代、会心のヒットやホームランを打った日は、お酒がおいしかったのでは?
田尾: あまり野球の結果とは関係なく飲んでいましたよ。むしろ、そこにこだわっていましたね。野球は仕事と考えていましたから、それに感情を左右されないように気をつけていました。打てなくても家に帰ってヤケ酒を飲んだり、何かに当たり散らすといったことはしない。逆に良かったといって有頂天にもならない。自分が良かったということは、逆に打たれたピッチャーはつらい。そんなことを考えていると、意外と自分だけでは喜べないんですよね。大学時代までピッチャーをやっていた経験がそうさせたのだと思います。

二宮: 田尾さんは同志社大からドラフト1位で中日に入団しました。当時の中日も酒豪が多かったでしょう?
田尾: お酒が好きな人がいっぱいいました。堂上(照)さんはいくら飲んでも変わりませんでしたね。ただ、僕は「酒は飲んでも飲まれるな」というポリシーがありましたから、本当に酔っ払って記憶がなくなるくらい飲んだことはないですね。

二宮: せいぜいセミが鳴くまで飲む程度だと(笑)。
田尾: そうそう。そこまで飲んでも、記憶は結構しっかりしていますからね。

 ポスト川は今宮!

二宮: さて、キャンプで各球団を巡ってみての感想は?
田尾: まず、ここ宮崎でキャンプを張っている巨人、福岡ソフトバンク、埼玉西武はどこもレベルが高かったですね。今年も当然、上位争いをするチームでしょう。ソフトバンクでは川宗則の後を継げるショートとして、2年目の今宮健太がとても印象に残りましたね。もし川が近い将来、メジャーに行っても、彼がその穴を埋められるんじゃないかと感じました。

二宮: 体は171センチと小柄ですが、パンチ力がありますよね。
田尾: バッティングも理にかなったスイングをしていました。肩も強くて、野手なのに150キロのスピードボールが投げられるそうです。これは楽しみですね。

二宮: 今、挙がった3チームには巨人の沢村拓一や西武の大石達也といったゴールデンルーキーにも注目が集まります。
田尾: 沢村くんは体がすごくしっかりしていますね。大石くんは握手をすると意外に手が女性のように柔らかくて優しい手をしていました。どうかなと思って、実際に投げる姿を見ると、軸がしっかりしていて腕が振れるいいフォームで投げています。非常に楽しみなピッチャーです。

二宮: そして何と言っても北海道日本ハムの斎藤佑樹。今季は大物ルーキーが多いですね。
田尾: 梨田昌孝監督とは同い年で、彼から話を聞くと、「斎藤は何か持っている」と言っていますね。「持っている」という意味合いが僕にはちょっと分からない部分もありますが、何か雰囲気を感じるのでしょう。だからこそ、あれだけファンを集められるのだと感じます。プロ野球界の発展のためにも何とか活躍してほしいですね。

二宮: 梨田さん自らミットをもって佑ちゃんのボールを受けていましたからね。期待の大きさがうかがえます。
田尾: 彼はまだ気持ちが若いですよ。今でも下手なキャッチャーよりもキャッチングはうまいかもしれない。実際に彼が受けて感じるものがいろいろあったと思います。まず高めにボールがいかないのは彼の良さです。あれだけ注目されると、どうしても力んで上ずった球がいきやすいのですが、きちっとコントロールした球を投げられる。学生時代の投球を何回か見た中では、やっぱり斎藤くんは技巧派の印象が強いですよね。真っすぐだけでどんどん攻められるピッチャーではなくても、総合力で勝負できる。もう少し体を大きくして、スピードが上がってくれば、変化球もより生きてくるのではないでしょうか。

二宮: やはりピッチングの基本はストレートだと?
田尾: そうです。一昨年の11月に行われた「NPB選抜vs.大学日本代表」の試合では、プロのバッターに変化球を合わされていましたよね。あれで本人も感じた部分があったはずです。真っすぐを磨いて、変化球を生かすピッチングをしないと、プロでは厳しいんじゃないかと。

二宮: やはりストレートの球速が150キロ近く出ることが理想ですか?
田尾: それだけじゃないと思いますよ。130キロ台の真っすぐでも、うまく変化球を生かしているピッチャーだっていますから。ただ、プロの一流のバッターを相手にかかると、単にかわすだけの投球では限界がある。そのことは本人も自覚しているでしょう。

 今季は菊池雄星にも期待

二宮: 昨季は最も騒がれながら、故障でシーズンを棒に振った菊池雄星はどうでしょう?
田尾: 昨年とはまるっきり違いますね。昨年のキャンプのブルペンで見た時には、全くピッチングになっていなかった。キャッチボールにもならないようなボールしか投げていなかったんです。普通、高卒1年目のピッチャーがキャンプでガンガン投げないわけがないでしょう? 渡辺久信監督に訊くと「去年のキャンプの段階で故障していた」と言っていました。今年は甲子園で投げていた頃のいきいきとしたフォームで投げていましたから、力を発揮するんじゃないかなと感じました。

二宮: 昨季は一軍で1試合も投げられなかったですからね。今年は一軍デビューしそうですね。甲子園であれだけのピッチングをしたのですから、一皮むければ大きな戦力になる。
田尾: あとはいいボールをどれだけコントロールできるかどうかでしょうね。渡辺監督は先発で大きく育てたいという考えのようです。大石くんもまずは先発を任せるとか。その中でチームのピッチャー陣の編成を考えて、場合によっては配置転換することになるのでしょう。

二宮: 左ピッチャーで成功している選手は、何か強力な武器を持っています。たとえば中日・山本昌のようなシンカーだったり、日本ハム・武田勝のスライダーだったりと。菊池の場合も「これは」という武器がほしい。
田尾: 山本昌のシンカーは特に右バッターには非常に有効なボールです。右バッターから見てタイミングを外して逃げるボールがあるかどうかは、まず重要ですね。逆に僕のような左バッターが対戦していて打ちにくいのはシュートを投げる左ピッチャー。たとえば、僕らの現役時代だと広島の大野豊がそうです。シュートが145キロくらい出ていて、ものすごく厄介でした。当時の広島には大野、川口和久と左が2枚いましたが、川口はシュートをあまり投げなかったので、打ちやすかった印象があります。まぁ、菊池くんの場合はまだ若いですし、最初は一軍でどのくらい通用するか本人が感じた上で、どうするべきか考えればいいと思いますよ。

 楽天・山、復活の理由

二宮: 注目チームの1番手は東北楽天でしょう。田尾さんの中日時代の先輩にあたる星野仙一新監督が就任しました。
田尾: 就任が決まった直後、星野さんに「おめでとうございます」と電話を差し上げると、「田尾のようにならないように頑張るよ」と毒を吐かれました(笑)。その後も仙台でお会いすると、本当に現場でやれるということにいきいきとされていましたよ。星野さんもヘッドコーチの田淵幸一さんも、もう64歳なのに、かなり張り切っていますよね。

二宮: やはり野球人はユニホームを着るのが一番なんでしょうね。
田尾: 山武志から話を聞くと、中日時代とはガラリと変わって、いいおじいちゃんみたいに選手を見ているそうですよ(笑)。でも、おそらく公式戦が始まると、本性が出るでしょう(笑)。

二宮: 山といえば田尾さんの指導を抜きにしては語れません。彼が楽天で復活を遂げたのは、田尾さんによる打撃改造の賜物でしょう。
田尾: もともと中日時代にホームラン王も獲得して実力はある選手でしたからね。オリックス時代はフォームが完全に崩れていたんです。極端にいうと引っ張り専門のスイングになっていた。いいバッターは必ず反対方向にいい打球を打てるものです。たとえばキューバのバッターを見ても必ず逆方向にホームランを打てる。引っ張ってのホームランはいつでも打てるという発想です。特に国際試合はストライクゾーンが外に広いですから、アウトサイドのボールで大きいのを打てるバッターが求められる。山の場合も、ここを修正できれば大丈夫だと見ていました。

二宮: 山は今季から2年契約を結びました。まだまだ活躍しそうですね。
田尾: ウチの家内は「彼はいつもお中元とお歳暮を贈ってくれる。だから1年でも長く選手をやってもらいたい」と言っていますよ(笑)。野村克也さんが指揮を執っていた時も監督を立ててコメントできる男ですし、そういった気配り上手なところも長く現役を続けられる秘訣かなと感じますね。

二宮: 世間的には豪放磊落でやんちゃなイメージが強いのですが、実像は異なると?
田尾: 僕が楽天の監督に就任した時、彼はオリックスを戦力外になってやってきました。僕は「オマエは今まで監督の使い方に対して反発して、チームの害になるような態度をとっていただろう? そういう選手はいらない」とはっきり言ったんです。すると「もう、そういうことは一切しません。チームのために頑張ります」との言葉が返ってきたので、「じゃあ、今の体重から10キロ落として2月1日(のキャンプイン)に来い」と条件にを出しました。

二宮: で、実際に減量してきたんですか?
田尾: はい。だから彼のヤル気をひしひし感じましたね。山は中日で山田久志監督の構想から外れ、オリックスでも伊原春樹監督とうまくいかなくて、もう野球がおもしろくなかったみたいですね。一時は現役引退も考えていた。それが楽天に来て、もう一度野球の楽しさを再発見できたと。そんな話を聞いて本当によかったなと感じています。

二宮: だいぶお酒も進んできました。そば焼酎「雲海」のお味は?
田尾: 本当に癖がなく、すっきりしていて飲みやすいですね。僕がお酒を飲む時には、最初はビールからスタートしますが、2杯目からはだいたい焼酎なんです。

二宮: 焼酎の好みの飲み方は?
田尾: その時々にもよります。焼酎は温かくしても冷たくしても飲めますし、水の量も調整できる。その日の体調や気分に応じて、いろんな飲み方ができるのがいいですよね。まぁ、最初からロックでいくと、あとが怖いですけど(笑)。

(後編につづく)

<田尾安志(たお・やすし)プロフィール>
1954年1月8日、大阪府生まれ。泉尾高を経て同志社大では、投手兼4番打者として関西六大学リーグで2度の首位打者を獲得する。1976年、中日にドラフト1位で入団。1年目に打率.277で新人王を獲得する。82年には惜しくも首位打者を逃すが打率.350の好成績で中日のリーグ優勝に貢献。この年から3年連続でリーグ最多安打を記録する。85年からは西武に移籍し、86年には日本一も経験。87年から阪神へ移り、91年限りで引退した。01年にアジア大会の日本代表コーチを務め、05年には東北楽天の初代監督に就任。現在は野球解説者、タレントとして幅広く活動している。現役時代の通算成績は打率.288、149本塁打、574打点、1560安打。ベストナイン3回。


★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

日本初の本格そば焼酎「雲海」。時代とともに歩み続ける「雲海」は、厳選されたそばと九州山地の清冽な水で丁寧に仕込まれた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎の定番です。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
中国料理 龍王
宮崎県宮崎市青島1丁目16番1号 宮崎・青島パームビーチホテル内
TEL:0985-65-1555
営業時間:
ランチ   11:00〜15:00(L.O.14:30)
ディナー 18:00〜21:30(L.O.21:00)
※季節により営業時間が異なることがあります。

☆プレゼント☆
田尾安志さんの直筆サインボールを本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「田尾さんのサインボール希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、田尾安志さんと楽しんだお酒の名前は?


 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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