プロ野球の開幕が目前に迫ってきた。パ・リーグでは昨季の覇者・福岡ソフトバンクと、最後まで優勝を争ったオリックスの２強がペナントレースを引っ張るとの予想が多い。昨季、選手会長としてチームをまとめた松田宣浩は、リーグ優勝を決めるサヨナラ打や、日本シリーズの決着をつける決勝打を放ち、勝負強さが光った。球団初の連続日本一を狙うチームリーダーに、今季への決意を二宮清純が聞いた。
（写真：今季は自身初のベストナイン獲得も目標のひとつ）二宮： 今季のソフトバンクは監督に工藤公康が就任しました。ソフトバンクは王貞治さん、秋山幸二さん、工藤さんと、いずれも現役時代、偉大な実績を残した“レジェンド”がチームを率いるスタイルが続いていますね。
松田： そうですね。どの方も球界の歴史に名を残していますから、そういう監督の下で野球がやれるのはうれしいです。ただ、これまでは王さん、秋山さんとバッター出身の監督でした。困った時にはバッターの立場でアドバイスをしていただくこともあって、ありがたかったんです。工藤監督はピッチャー出身ですから、バッテリー中心に目がいくはず。その分、野手は自覚と責任を持って臨むことが大事でしょう。
二宮： 今季は松坂大輔投手の入団も話題になっています。一緒に野球ができるのは楽しみでしょう。
松田： やはり甲子園でもプロでも、ものすごい実績を残している方。プロ入り１年目に、松坂さんが西武にいて、対戦相手として見たことはありますが、同じチームでバックを守れるのはうれしいです。
二宮： 今季は本拠地の仕様も変わります。高い外野フェンスの前にテラス席ができて前にせり出すかたちになり、ホームランの増加が予想されます。とはいえ、一発狙いのバッティングではフォームを崩してしまう恐れがある。このバランスが難しそうです。
松田： 去年まで、僕たちはヤフオクドームの日本一高いフェンスを越すイメージでバッティングをしていました。それは変えないようにしたいですね。手前のフェンスを狙おうとすると、バッティングもこじんまりとしてしまう。今まで通り打って、試合ではラッキーゾーンがあるという感覚で臨んだほうがよいと考えています。
二宮： あまり意識し過ぎないと？
松田： はい。若い選手が１軍に上がってくると、打球がヤフオクドームのフェンスになかなか届かない。そこでフェンスを越えるような打球を飛ばすことを目標にレベルアップしていくんです。だから、あくまでもこれまでと同じ気持ちで練習に取り組むべきだと思っています。
二宮： 松田さんは低反発の統一球が導入された2011年にはリーグ２位の25本塁打を放っています。グラウンドの広さにかかわらず、しっかり打てば自ずとホームランは増えるというわけですね。
松田： 王会長にも言われましたが、「大振りは禁止」。グラウンドが狭くなったからといって振り回すのはかえって良くないでしょう。僕が意識しているのはボールの芯とバットの芯を結ぶこと。それだけを考えて打席に立っています。
二宮： ここ数年、松田さんはバッターボックスのインコースのラインから下がって構えています。この意図は？
松田： ２つあります。まずインコースを苦にしたくない。その部分に空間をつくりたいんです。もうひとつはアウトコースのスライダーを勝負球にしてくるピッチャーが多いので、それにつられて振らないようにしたい。打席では打ちたい、打ちたいという気持ちになりますから、ラインギリギリに立つと、どうしても近くに見えて振ってしまう。だから離れることで、アウトコースは遠いという感覚にしておきたいんです。
二宮： アウトコースいっぱいいっぱいのボールは、バットの先に当ててファウルでもいいと？
松田： はい。極端にいえば、そのコースは手が出ないと割り切るくらいでいいと思っています。アウトコースを意識しすぎると、どんどん近づいてボール球にも手を出すようになってしまいますから。
二宮： 昨季のソフトバンクは松田さんも内川聖一選手も長谷川勇也選手も途中離脱がありながら優勝しました。最後は苦しい展開ながら勝ち切ったことでチーム力がアップしたのではないでしょうか。ただ、今季はオリックスも大補強をしています。中島裕之選手に、小谷野栄一選手にトニ・ブランコ選手……。強力なライバルになりそうです。
松田： どこも優勝目指してチームづくりをしますから、連覇は簡単なことではありません。当然、オリックスも昨年の結果を踏まえて、あれだけの補強をしたのですから優勝を狙っている。僕たちはそういったチームを叩いて優勝しないといけない。逆にやりがいがありますよ。
二宮： 選手会長として今年のテーマは？
松田： 監督も言っていましたが、連覇を狙えるのはホークスだけ。チャンピオンフラッグがバックスクリーンに掲げられているのは、12球団で唯一ですから、その中で、もう一度優勝したい。当然、昨年とは僕たちも相手もチームは変わっていきますが、変化する中で連覇するからこそ価値があると思っています。
二宮： もちろん、ファンはプレーでもチームの主力として松田さんの活躍を期待しています。
松田： やはり、同じ優勝でもチームの中心であるかどうかで全然、達成感が違ってきます。昨季の日本一は“やった”という思いが大きかった。だから、今年も連覇の中心選手でありたいとの気持ちは強いですね。
＜現在発売中の小学館『ビッグコミックオリジナル』（４月５日号）に松田選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください＞