世界一の足技だ。徳田耕太郎(21歳)は、今年9月に行なわれたフリースタイル・フットボールの世界選手権(イタリア・レッチェ)で初の日本人王者となった。フリースタイル・フットボールの主な大会形式は、ひとつのボールを2人の選手が交互に使い、リフティング技術を競い合うというもの。徳田の技術の高さは元サッカーイタリア代表ファビオ・カンナバーロをして「ここまでの技術は見たことがない」と言わしめた。なぜ、徳田は世界一に輝くことができたのか。二宮清純が訊いた。
(写真:大会後、開催地ではサイン攻めにあったという)
二宮: 徳田さんの代名詞と言えばオリジナル技の「Tokuraクラッチ」(「Tokura」は本名の「徳田」をもじったもの)。空中に蹴り上げたボールをバック宙しながらヒザでキャッチする大技ですが、マスターしたきっかけは?
徳田: 「これができたらすごいな」と単純に思ったんです(笑)。「空中でボールを挟めたらかっこいいな」と思ってやり始めました。

二宮: 習得するのにどれくらいかかりましたか?
徳田: 練習し始めて約1カ月後に初めて成功しました。技の精度を100パーセント近くにするまで、さらに2年ほどかかりましたね。今はよほど疲れていない限りは百発百中です。

二宮: 大会で初披露したのはいつですか?
徳田: 2011年9月にマレーシアで行なわれた世界大会です。その大会では僕が憧れている世界王者が審査員を務めていたのですが、彼も「Tokuraクラッチ」を繰り出した瞬間はすごく興奮していましたね(笑)。結局、「Tokuraクラッチ」が評価されて、4位に入賞することができました。

二宮: 徳田さんは「Tokuraクラッチ」に代表される大技のみならず、細かな技術にも定評があります。
徳田: 日本人独特の繊細さというのは、すごく大事にしています。足を綺麗に伸ばすとか、無駄な動きをあえて取り入れています。ボールとは関係ないところで足をメカニックに動かす。そういう動きがかっこいいんです。ただ、当然ボールを落とすわけにはいかないので、緻密なボールコントロールが必要になってきます。あとミスをしないところも、日本人らしさだと思っています。

二宮: アクロバティックとファンタジーを兼ね備えるということですね。
徳田: フリースタイル・フットボールでは人を魅了することが大事です。ただ単に難しい技を連発すれば、審査員には伝わるかもしれません。ですが、オーディエンスに伝わらないと会場の雰囲気が作り込めないんです。僕は「Tokuraクラッチ」のようなちょっと大きく見せる技を入れながら、繊細な技も練習もしてきました。そういう普段からのこだわりが、今回の世界一にすごくつながったと思います。
(写真:「バイシクル」を披露する徳田)

<現在発売中の小学館『ビッグコミックオリジナル』(2013年1月5日号)に徳田選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>