早稲田大学女子バスケットボール部に所属する細貝野乃花は関東女子大学バスケット界屈指のシューターのひとりだ。
<2018年5月の原稿を再掲載しています>
バスケットにおいてスリーポイントシュートは見せ場の1つ。シュートが得意な選手はシューターと言われる。チームの、サポーターの期待を一身に背負い、シューターは綺麗な放物線を描く。シュートが決まる瞬間――場内は一瞬静まり返り、大きな声援に包まれる。
細貝に自らの長所を聞くと「やはりシュートです」と語り、こう続けた。
「シュートにかける思いは強いです。特にスリーポイントの練習は中学、高校からこだわってやってきました。ノーマークの状態で綺麗に打てる場合、決めて当たり前のレベルにならないといけない。チームとしてスリーポイントが欲しい時に1本入るか、入らないかで試合の流れが左右されてしまう。そこは自覚を持ってやっています」
対戦相手からは当然、厳しいマークがつく。細貝はシュートを打つこと以外でもチームの勝利に貢献しようと必死だ。ドライブでゴール前に切れ込む、相手を引き付けておとりに徹する……。シュートが強みなだけに、相手は翻弄されるだろう。自身でも「外のシュートが入る分、狙われてしまう。その時は、周囲の選手をどういかしてあげるか、どうしたら私が効率よくおとりになれるかを考えています」と口にする。
早大に入学後、2年生でチームの主軸に成長し、そして3年生になった今年はチームを引っ張ることも考えている。
「NBAやWリーグはあまり見ないです」
そう語る細貝には意志の強さを感じた。細貝曰く、「誰かに影響されることはない」という。誰かの真似は得意ではない。同じ動きをしろと言われてもできない。
「自分のこだわりが強いからだと思うんです。自分で課題を見つけて、自分で改善に取り組みたいんです」
母・亜砂子も細貝の性格について、こう語った。
「自立心は昔から強かったです。あの子なりのこだわりもいろいろあるようです。自分で考えることは、いいことかなぁと思っています。女の子特有の“あの子があそこに行くから、私も行く”とか、そういったことはなかった。やりたいことは大体はっきり言うタイプの子でしたね」
自分の芯をしっかりと持った細貝にも普通の女子大生の一面がある。2歳上の姉がおり、「最近では姉と2人で海外旅行にも行きました」と茶目っ気たっぷりに話す。
「最近、台湾に行ったのですが、どこを観光するかで揉めたかと思うと、いつの間にか仲直りをして普通に会話をしたり(笑)。地元の宮城に帰ったら、友人と出かけたりもしますが、基本的に姉と出かけることが多いです。姉には本当に支えられているな、と感じます」
地元から遠く離れた地で活躍している者にとって、リラックスの時間は大事である。こんなことをフランクに話すところに、彼女の親しみやすさが表れている。
関東大学女子バスケット界屈指のシューターはいかにして育ったのか。細貝が「シュートが武器」と胸を張るようになったのは、母との早朝練習の成果だった。
(第2回につづく)
<細貝野乃花(ほそかい・ののか)プロフィール>
1997年8月26日、宮城県仙台市生まれ。小学2年からミニバスケットボールを始める。松陵ドリーム-仙台市立八乙女中学-聖カタリナ女子高校(現聖カタリナ学園高校)。シューティングガード。スリーポイントシュートが最大の武器。聖カタリナでは2年時からレギュラーの座を掴む。2014年度のインターハイとウィンターカップでチームを3位に導いた。高校時代には年代別の日本代表にも選出された。早稲田大学女子バスケットボール部入部後、2年生からレギュラーとして活躍。身長169センチ。
(文・写真/大木雄貴)

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