中学3年の秋、細貝野乃花は進路を決めることに億劫になっていた。そんなある日、バスケットボール雑誌を読んでいて鮮やかな山吹色のユニフォームに目を奪われた。細貝が「可愛いな」と思ったデザインは愛媛県の聖カタリナ女子高校(現聖カタリナ学園高校)のユニフォームだった。

 

愛媛新聞社

 

 

 

 

 聖カタリナ入学へと物語は加速

 

 ユニフォームが気になったことをきっかけに聖カタリナのバスケット部について調べ、「この高校に行きたい」と思い始めた。躍動感あふれる聖カタリナのプレーに心を惹かれたのだ。

 

 ここから聖カタリナ入学への物語が加速する。細貝は中学のバスケット部顧問に相談した。顧問が聖カタリナに連絡を入れてくれて、急きょ、練習に参加できることになった。

 

「顧問の先生に相談したのが11月下旬。そして、12月3日に練習に参加できることになったんです」

 

 母・亜砂子は娘が遠方の学校に進学したがっていることに、一抹の不安があった。

「愛媛の高校に行きたいと言われた時は、もちろん戸惑いはありました」と語り、こう続けた。

 

「何かあった時に、すぐに飛んでいけないですから。反対と言えば、反対でした。でも、娘は未知の世界を見てみたかったんでしょう。それに言ってもきかない部分もありますから(笑)」

 

 練習に加わると、最初は雰囲気に飲まれそうになった。だが、徐々に楽しみながら高校生たちと一緒にトレーニングができたという。ここでのアピールが奏功し、細貝は志望校への入学が決まった。

 

「中学卒業後、すぐに親元を離れることの不安はなかったのか」と聞くと、彼女は凛とした表情でこう答えた。

「自分がやりたいことなので全く不安はなかったです。あまり深くは考えていなかったです」。そういったところにも、細貝の芯の強さを感じた。

 

 とはいえ、東北の宮城県から四国の愛媛県に渡るのだから、環境はガラッと変わる。彼女が最初に苦戦したのは方言だった。愛媛県出身の同期と会話をしていて、「なんでこの人、怒っているの?」と誤解することがたびたびあった。

 

「方言の違いで最初はすごくケンカしました。すごく怖く聞こえるんです。しばらくして、耳が慣れて、いつの間にか方言がうつってしまうくらいになるんですけど」

 

 最高のパートナーとはケンカから始まった

 

 細貝曰く、最初のケンカ相手は軸丸ひかる(現白鴎大学)だった。のちに“コンビ”“ペア”と呼ばれるほど息の合うプレーを見せるベストパートナーになるのだが、第一印象はお互い良くなかった。

 

 懐かしそうに細貝は振り返る。

「軸丸とは一番仲が悪かったかもしれないです。喋らない時期もあったような気もします。2年生になって軸丸と私がレギュラーになりました。まだ2年生だしミスも多かった。しんどい時にコートの中で支えてくれたのが、軸丸だったんです」

 

 軸丸とは何も言わなくても阿吽の呼吸で何を考えているか通じ合った。「周囲の人たちに“2人は息が合っているコンビ”と思われるのは嬉しい」と細貝は頬を緩める。

 

 最高学年になると、軸丸と苦しい時期をともにした。3月に広島県で行われた全関西バスケットボール大会。32校が出場し、上位4校が決勝リーグに進出できる。聖カタリナは決勝リーグに勝ち上がったものの、決勝リーグで3戦全敗。帰りの道中で2人は顧問に怒られ、バスの中で一緒に試合映像を見直し、反省会をした。

 

 そして迎えた3年の冬のウィンターカップ2015。聖カタリナは細貝と軸丸らの活躍で準決勝まで勝ち上がった。相手はこの大会を制する岐阜女子高だった。しかし、聖カタリナは岐阜女子相手に76対79と敗北を喫する。この試合、チームの得点源だった細貝は相手に抑えられていた。彼女は苦い思いと同時に軸丸の奮闘ぶりが心に残っているという。

 

「あの試合は私の調子さえよければ勝てていました。3ピリオドまでで0点。いつもは2ピリオド終了時点で10点以上は取っていたんですが……。岐阜女子戦は自分が抑えられたのもありますが、何をしてもシュートが決まらなかった。その試合は軸丸がすごく頑張ってくれた。その姿を見て“私も頑張らないと”と思えたんです。ただ、私が決めていれば勝てたと思います。タラレバの話ですけど。振り返ってみると、軸丸は私にとってなくてはならない存在でした」

 

 高校生活最後の公式戦であるウィンターカップを4位でフィニッシュした。悔しい思いもしたが、東北から四国に渡り過ごした日々を「人生の中でとても濃い3年間だった」と述懐する。

 

 屈指のシューターが次の進学先に選んだのは私学の雄、早稲田大学だ。全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)を制したこともある名門である。細貝は2年生からレギュラーに定着。5月に行われた関東大学女子バスケットボール選手権大会は肘の故障明けで途中出場が多かったが、「徐々に感覚は戻ってきている」と口にする。

 

 2016年に入学した早稲田ではスポーツ科学を専攻し、充実した日々を送っている。

「データ分析や、戦術的なことも学べます。あとは動作解析も面白いです。成功したシュートフォームと失敗した時のフォームを重ねて、違いを見つけ出すのがすごく楽しい。大学では専門的な知識を学べるので、今のうちにたくさん吸収したい。将来はプレーする立場か、支える立場かはわかりませんが絶対、バスケットに関わっていたい」

 

 プレーヤーに固執するわけではない。だが小学2年から続けているバスケットへの想いは強い。細貝の野乃花という名前は「野に咲く花のように強く生きて欲しい」との両親の想いが込められている。すでに自分の芯をしっかり持った細貝ならば、どんな場所であろうとも自分色の花を咲かせてくれるはずである。

 

(おわり)

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<細貝野乃花(ほそかい・ののか)プロフィール>

1997年8月26日、宮城県仙台市生まれ。小学2年からミニバスケットボールを始める。松陵ドリーム-仙台市立八乙女中学-聖カタリナ女子高校(現聖カタリナ学園高校)。シューティングガード。スリーポイントシュートが最大の武器。聖カタリナでは2年時からレギュラーの座を掴む。2014年度のインターハイとウィンターカップでチームを3位に導いた。高校時代には年代別の日本代表にも選出された。早稲田大学女子バスケットボール部入部後、2年生からレギュラーとして活躍。身長169センチ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

愛媛新聞社

 

 

 

 

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