一般財団法人清心内海塾は、スポーツ活動支援や障害者・高齢者などへの支援事業を行っている。同塾は航空貨物の運搬などの空港事業や物流を手がける羽田タートルサービス株式会社代表取締役社長の内海章雄氏が2017年10月に設立したものだ。理事長の下、実務を取り仕切る佐藤富彦専務理事に今後の展望を訊いた。

 

伊藤数子: 設立2年目を迎えた清心内海塾ですが、立ち上げのきっかけを教えていただけますか?

佐藤富彦: 財団をつくったのは2年前ですが、構想自体は10年からあったんです。元々は羽田タートルサービスの内海章雄社長は、創業当時から困っている学生がいたら支援していました。自らがイギリスに留学経験もあり、“若い人たちには広く外を見てもらいたい”との思いがあったんです。ただ構想から10年が経ち、“このままいくと構想倒れになる”との危機感から、内海社長が私財を投じて、「これで、あの話(財団設立)を動かしてくれ」と始めたのが設立に至った経緯です。

 

二宮清純: なるほど。内海理事長の思いをより具現化するため、羽田タートルサービス副社長でもある佐藤さんが実務役を任されたわけですね。

佐藤: はい。社会的に困っていて支援が必要な人たち、これから日本を背負って立つ若い人たちの夢や希望を描ける環境を整備し、サポートしていかないといけない。その思いで清心内海塾はスタートしました。

 

伊藤: 組織が法人化したのは2年前でも、既に活動の下地を築かれていましたよね。パラスポーツの支援もされてきました。資金不足などを理由に開催が危ぶまれていた2005年の第20回記念視覚障害者柔道大会の支援を買って出て、大会存続に力を尽くされました。

佐藤: 当時は新聞社に協力していただき、他にも支援してくださる方々にも集まっていただけました。それも内海理事長の今までの人脈と言いますか、いろいろなことに関わってやってきた結晶なのかなと思っています。視覚障害者柔道連盟も今では全日本柔道連盟の加盟となりました。今年は知的障害者柔道大会にも関わらせていただく予定です。

 

二宮: 全柔連の山下泰裕会長が進める「柔道教育ソリダリティー」は柔道を通じて共生社会の実現を図っています。いわゆる柔道の「自他共栄」の精神。清心内海塾の活動にも通じる部分がありますね。

佐藤: そうですね。内海理事長の考えるのも<一人でも多くの人がそれぞれの立場で活躍できる健全な生活環境を整えること>で、それが元気な日本を取り戻す原動力になることを目指しています。

 

 問われる“おもてなし”

 

二宮: 来年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックです。外国からも障害のある人が数多く日本にいらっしゃる。国内における障害者に対する理解を深めることは大事な課題のひとつです。それは羽田タートルサービスの事業ともリンクしますよね。

佐藤: 重なる部分がたくさんあると思いますね。重要視すべきは“何を提供できるか”です。そこがブレてしまってはいけない。マニュアルだけのサービスを提供するのではなく、共生社会の醸成に繋がるような事業にしていかないといけませんね。

 

二宮: まさに“おもてなし”が問われますね。

佐藤: マニュアル通りにいかないことの方が多いと思います。当たり前のことが当たり前のようにできなくなることを想定していなければいけないのかもしれません。おっしゃるようにたくさんの方が日本に来られますので、それぞれの方をどうケアしていくのかを考えないといけない。今は介護の資格を持った人に空港業務のサービスを身に付けていただくプロジェクトも考えおります。それが“おもてなし”に繋がると思っています。

 

伊藤: さて財団を設立してから1年が経ちましたが、事業の手応えはいかがでしょうか?

佐藤: 10月5日に設立し、年が変わった4月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになりました。そのあたりから清心内海塾には羽田タートルサービス以外の人も加わって、考えがより『かたち』になっていっているような気がします。講演やセミナーを通じてNPO法人の方たちとも接する機会が増えて、お話を聞いて、やるべきことがより明確になってきました。

 

二宮: 大きく前進したと。

佐藤: ええ。やはり一歩動き出すと、良くも悪くも反応がある。言葉にして踏み出すこともあるし、出向いて直接話してみる。まずはそこからやっていくことに意味があると感じました。種を蒔かなければ芽も出てこない。だから種を蒔く作業もしながら、我々は畑を耕す作業も行っていきたいと思っています。

 

(後編につづく)

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佐藤富彦(さとう・とみひこ)プロフィール>

一般財団法人清心内海塾専務理事。1956年3月13日、宮城県出身。宮城県白石高校、東京農業大学を経て、羽田タートルサービス株式会社に入社する。取締役、常務取締役、取締役副社長を歴任。2018年に代表取締役副社長に就任した。関連会社の内海晴和企画株式会社の取締役副社長も兼務。清心内海塾では、内海章雄理事長の構想の具現者として活動している。現在、清心内海塾は公益法人移行に向けての準備中。配慮を必要とする人々への支援活動が社会のインフラの一つとして機能することを目指している。大切にしている言葉は『過去が咲いている今、未来の蕾がいっぱいの今』。

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