伊藤数子: 2017年10月に清心内海塾を設立してから、約1年半が経ちました。今後はどういった事業計画をお考えですか?

佐藤富彦: 我々の財団は大田区に事務局を構えておりますので、今年度は地元との連携を深めようと思っています。大田区の事業となにかでコラボレーションできないかと模索しているところです。大田区には大田区総合体育館という素晴らしい施設があります。ここはサブアリーナがあり、車椅子バスケットボールの会場として使用できる。練習場としても広くアピールできたらと考えていきます。

 

二宮清純: 車椅子バスケットボールは体育館の床を傷付けるなどの理由で、使用を断るところもあると聞きます。

佐藤: そうらしいですね。我々が「大田区にはこういった施設があるんだ」ということも含め、もっと世の中に周知していく必要があると考えています。ハコモノをつくって終わりではなく、いかに有効活用するか。そのための情報をこちらからどんどん世間に発信していかなければいかないといけません。

 

二宮: 大田区は「ものづくりのまち」として知られています。区内の企業と協力するというのはどうでしょう。コートや競技用具の開発など、さらに「ものづくりのまち」としてアピールにもなります。

佐藤: そうですね。それこそ大田区は区内の中小企業と競技用車椅子の開発を行っています。パラリンピックでは練習場として区内の施設を開放する予定もあるそうです。我々もパラスポーツについて講演やセミナーを開催しています。できればそれを毎年の恒例にしていこうと考えているんです。大田区では秋に障がいのある人に関するイベントが各地で行われます。例えばその前日にシンポジウムを行い、大田区のイベントとタイアップできないかなと。“翌日にはこんなイベントがあります”“大田区にはパラスポーツをできる施設があります”と広報していきたい。

 

二宮: それは素晴らしいですね。スポーツ振興に加えて、産業振興にも繋がる。大田区にとっても多大なメリットのある計画ですね。

佐藤: ええ。おっしゃるようにスポーツ振興課から繋がって、産業振興課までに広がっていけば行政との連携も更に深まる気がします。そうすることで、我々がひとつの目的のためだけに動くのではなく、全体の仕組みづくりに繋がるような、うねりになればと考えています。

 

 行政との連携

 

伊藤: その他に取り組んでいきたいことはありますか?

佐藤: 今後は公益財団法人への移行を目指しています。今年5月には財団の目的でもある障がいのある人、刑期終了者、生活困窮者などに手を差し伸べるという意味合いのセミナーを開く予定です。人手不足の中小企業に雇用を働きかけたいとも考えています。それ以外では現在、企業側の求人情報が求職している人に届いていない問題があります。これは人手を必要としている企業や社会に出たい人たちの思いがあるのに、とてももったいないことです。だから月に1回発行される大田区の区報に我々が“求職の手助けをできますよ”と、インフォメーションすることを考えています。

 

二宮: 区報に求人広告を載せるということですか?

佐藤: そうではなく求職をしている人に対し、我々が“こんな企業を紹介できますよ”“こんな企業がありますよ”とお伝えするんです。公的なものですから、一企業が求人募集を載せることは難しい。でも我々はお金目的ではないので、公益的な考えです。企業と求職者の接点をつくり、社会の仕組みづくりに繋がればと考えております。

 

伊藤: 区報に掲載するということは大田区にお住いの多くの方に届きます。新聞の折り込みでご自宅にも届くので、なかなか外出しにくい人や積極的に就職活動を行っていない人の目にも留まるメリットがありますね。

佐藤: おっしゃる通りです。私は大田区在住なので、家に区報が届きます。居住者の8割に届いているそうです。ただ、その中に区内のイベント情報は載っていますが、求人情報までは載っていないんです。少しでも多くの人に求人情報を知っていただき、更なる雇用に繋がればと思っています。

 

二宮: 日本は人手不足と言いながら、社会的弱者と呼ばれるような方々のポテンシャルをまだ生かし切っていない。まずは勤労者になり、ひいては消費者や納税者になる。いつまでも保護の対象では、消費者や納税者になりえませんからね。区報を使ったこの取り組みが多くの人に広まるといいですね。

佐藤: そうですね。大田区でひとつのモデルをつくれることができれば他の区や市町村にも広がっていく可能性があります。

 

二宮: 大田区モデルで成功したら、全国に広がっていく可能性もありますね。

佐藤: ひとつのまちから、2つのまち3つのまちへとどんどん広がって、大きなうねりになっていけばうれしいです。そのために我々の活動を地道にやっていきたいと思います。

 

(おわり)

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佐藤富彦(さとう・とみひこ)プロフィール>

一般財団法人清心内海塾専務理事。1956年3月13日、宮城県出身。宮城県白石高校、東京農業大学を経て、羽田タートルサービス株式会社に入社する。取締役、常務取締役、取締役副社長を歴任。2018年に代表取締役副社長に就任した。関連会社の内海晴和企画株式会社の取締役副社長も兼務。清心内海塾では、内海章雄理事長の構想の具現者として活動している。現在、清心内海塾は公益法人移行に向けての準備中。配慮を必要とする人々への支援活動が社会のインフラの一つとして機能することを目指している。大切にしている言葉は『過去が咲いている今、未来の蕾がいっぱいの今』。

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