23勝38敗1分、借金15、首位から15ゲーム差の最下位……。
 雨の時期は燕が低く飛ぶと言われるが、交流戦期間中も地を這いそうな低空飛行だった。2年連続の最下位こそ免れたものの、7勝16敗1分と9つも負け越した。まだシーズンは半分以上の試合数を残しているとはいえ、浮上のきっかけがなかなかつかめない。
(写真:目立っているのは投の小川、打のバレンティン、そしてマスコットのつば九郎……)
 各部門の成績をみれば、最下位もやむを得ない現状である。
 まずはピッチャーが抑えられない。先発ピッチャーを評価する値であるクオリティースタート率を見ても、6回を3自責点以内で抑えている登板が6割を超えているのはルーキーの小川泰弘ただひとり。エースの石川雅規、「今季は最多勝を狙う」と宣言した村中恭兵、2ケタ勝利を目指していた赤川克紀は早々に崩れるケースが目立った。この3人で5勝13敗と大きく負けが込んでいるのは大誤算だ。

 中継ぎの防御率も4.33とリーグワースト。先制した30試合のうち、逆転を許したのは13試合もある。ここ数年、ブルペンを支えてきた押本健彦、松岡健一はともに防御率が5点台で1軍登録を抹消された。昨季は貴重な中継ぎ左腕だった日高亮も故障で戦列を離れている。

 何より抑えのトニー・バーネットの不調が痛い。4月中旬に戦線を離脱して約1カ月で復帰したものの、5月31日、6月1日の埼玉西武では2試合連続で救援に失敗し、サヨナラ負けを喫した。中継ぎに配置転換されてもピリッとせず、16日のオリックス戦では3点リードをすべて吐き出して4安打4失点。17日付で2軍降格した。現時点ではルーキーの石山泰稚から山本哲哉につなぐのが勝ちパターンだが、盤石とは言い難い。

 加えて守れない。失策50は広島に次いでリーグで2番目に多い。悪夢のような出来事は9日の北海道日本ハム戦で起こった。この日はサード・荒木貴裕、ショート・山田哲人の三遊間コンビが3失策ずつ。昨季のゴールデングラブ賞、セカンドの田中浩康も前進守備でバックホームできずに得点を許し、途中交代させられた。負の連鎖は断ち切れず、11日の福岡ソフトバンクでもチーム全体で5つの失策が出た。特に内野の要である二遊間で21エラー。これは昨季1年間の12個を既に大きく上回ってしまっている。

 おまけに打てない。チーム打率.237はリーグ最低。打撃3部門で上位に顔を出しているのは4番のウラディミール・バレンティンくらいだ(打率.313=6位、本塁打21本=2位、打点46=3位)。開幕4番だった畠山和洋は5月17日の千葉ロッテ戦こそ球団史上初の逆転サヨナラ満塁ホームランを放ったものの、打率.204と低迷。交流戦の打率も1割台に終わり、ついに2軍落ちが決まった。

 田中浩康も打率.217と苦しんでおり、1、2番が固定できない。比屋根渉や川島慶三、上田剛史らを入れ替えながら戦ってきたが、出塁率が3割に満たないと得点力は上がらない。交流戦期間中、同じメンバーで3試合以上、スタメンを組めなかったところに小川淳司監督の苦悩がうかがえる。

 と、ここまでは燕党にとっては正直、目をそむけたくなる内容だ。ただ、次の数字を見てほしい。

 22勝37敗2分、借金15、首位から13.5ゲーム差の5位……。
 これは2010年の交流戦終了時の成績である。3年前のシーズン、何が起きたかファンなら覚えているだろう。7月に6連勝、8月に10連勝と白星を重ね、Aクラスには届かなかったものの、終わってみれば貯金を4つつくってシーズンを終えたのだ。

 今季もパ高セ低の交流戦は相変わらず、セ・リーグ勢は3位以下のチームが軒並み成績を落とした。クライマックスシリーズの進出圏内である3位までは、たった4ゲーム差。借金を抱えてのAクラス争いに違和感はあるが、まだシーズンを諦める段階ではない。

 もちろん先に示したように、抑えられない、守れない、打てないの三重苦が続けば、このままズルズルと借金が増えていくのみである。レギュラーシーズン再開までの間に、首脳陣も打開策を練るはずだ。3年前の大逆襲を思い出すと小川監督代行は、かなり大胆な手を打っている。

 勝負手とも言えたのが、畠山の外野でのスタメン起用だった。この年のヤクルトはアーロン・ガイエル、ジェイミー・デントナの両外国人が機能せず、貧打に喘いでいた。そこで打力のある畠山を守りには目をつぶってレフトで起用した。途中補強した新外国人のジョシュ・ホワイトセルとともにクリーンアップを形成し、打線を活性化させたのである。

 そしてヒットメーカーの青木宣親(現ブルワーズ)を1番に固定したのも大きかった。それまでの3番から1番に打順を変えた青木は6月以降、4割近い打率と5割近い出塁率でこれ以上ないチャンスメイクの役割を果たした。

 このように、トップバッターとクリーンアップのメンバーが固まってくれば、攻撃のかたちが見えてくる。3年前とは違い、4番にはバレンティンという大黒柱がある。ならばトップバッターを誰にするかだ。1番には交流戦ラストのオリックス戦からラスティングス・ミレッジを起用しているが、今後も彼で固定すべきだと考える。

 ミレッジは打率.251ではあるが、出塁率は3割を超える。昨季もトップバッターでの打率は.355、出塁率は.412と高かった。10年の青木のようにリードオフマンとして打線を牽引するには適役である。畠山を2軍に落とした状況で、ミレッジが1番に回ると中軸は手薄になるが、そこは打撃好調の相川亮二や、長打のある岩村明憲でフォローする。ここに川端慎吾が戻ってくるとクリーンアップを任せられるだろうし、畠山が復調してくれれば打線に厚みが出るはずだ。

 機動力も活用したい。チーム盗塁数28はリーグトップの広島(61個)の半分以下。現状の1軍メンバーをみるとミレッジ、比屋根、山田、三輪正義ら走れるメンツは揃っている。前任の高田繁監督時代はチーム成績は振るわなかったが、08年、09年と2年連続で盗塁は100個以上を記録していた。攻撃が弱い状態で、せっかく出た走者を大事にしたいとの気持ちは理解できる。だが、単に送りバントで得点圏に走者を進めるだけでは相手ピッチャーにプレッシャーがかからない。野村克也元監督ではないが、弱者には奇策も必要である。

 投手陣は村中を中継ぎに回し、配置転換が行われる見込みだ。当面の先発は勝ち頭(6勝)の小川に、石川、八木亮祐の3枚に、クリス・ラルー、オーランド・ロマンの外国人と、2軍調整中の赤川らでローテーションを組むことになるだろう。村中に関しては思い切ってセットアッパーか抑えを任せるのもひとつの方法ではないか。

 村中のリリーフ登板といえば、2年前の巨人とのクライマックスシリーズが印象深い。初戦で先発・館山昌平の後を継いで3回3分の2を投げると、第3戦でも2回を投げて最後を締めくくり、ファーストステージ突破へ大きく貢献した。短いイニングではストレートがよく走り、怖い巨人打線をキリキリ舞いさせていた。

 この左腕は立ち上がりが悪く、今季も初回の失点が多い。本来はリリーフ向きではないと思われるが、昨季の埼玉西武の涌井秀章のように先発から抑えにチェンジしてうまくいったケースもある。中途半端な中継ぎではなく、終盤の1イニング限定で投げさせたほうが、本来のピッチングを取り戻せるかもしれない。石山、山本哲と右が続く勝ちパターンに左を1枚加える意味でも、村中のセットアッパー、抑え案は巻き返しの切り札として一考の余地があるだろう。

 いずれにしても、常識的な方法ではV字回復は見込めない。3年前、最大19あった借金を返済した実績を持つ指揮官である。あの時、“メイクミラクル”にひっかけて“メイクミルミル”なる言葉が流行語になった。2013年は“メイクミルミル、アゲイン”だ。「じぇじぇじぇ」と驚かせる“オガワノミクス”を断行するのは、今でしょ! 

(次回は7月1日に更新します)

(石田洋之)
◎バックナンバーはこちらから