3日、ヤマザキナビスコカップ決勝が東京・国立競技場で行なわれ、ジュビロ磐田がサンフレッチェ広島を5−3で下し、12年ぶり2度目の優勝を収めた。磐田は1点を先行しながら逆転を許したが、終了間際の後半44分、FW前田遼一が貴重な同点ゴール。延長戦に持ち込むと延長前半12分、コーナーキックからMF菅沼実が左足で押し込んで勝ち越す。その後も2点を加え、追いすがる広島を振り切った。MVPには2得点をあげた前田が選ばれた。
菅沼、大一番で今季初ゴール(国立)
ジュビロ磐田 5−3 サンフレッチェ広島
【得点】
[磐田] 船谷圭祐(36分)、前田遼一(89分、109分)、菅沼実(101分)、山崎亮平(104分)
[広島] 李忠成(43分)、山岸智(48分)、槙野智章(105+3分)
両クラブで120分間戦って8ゴール。決勝では史上最多得点となった熱戦の行方を決めたのは、7月から磐田に加わった菅沼だ。延長前半12分、左からのコーナーキックをニアでMF那須大亮が競り勝って頭で合わせる。コースが変わってゴール前に飛んだボール目がけて得意の左足を振り抜いた。「ゴールへの執着心は人一倍強い」と自ら語る男に、ようやく生まれた今季初得点。それが大一番での決勝ゴールとなった。
背番号15を背負った菅沼がピッチに入ってから、試合の流れが変わったと言っても過言ではないだろう。1点ビハインドの後半15分、MF船谷圭祐に代わって出場すると左サイドで躍動した。愛媛時代にチームメイトだったDF森脇良太とのマッチアップにも負けず、ドリブルやクロスで次々とチャンスを演出する。
「(攻撃の)スイッチになりたかった。負けたくなかった。最後に必ずチャンスがあると思ってやっていた」
後半22分にはMF西紀寛の右クロスにヘディングシュートをみせるが、惜しくもオフサイド。続く26分にはフリーでボールを受けると、一旦逆サイドへ振って、再び西からのクロスに左足をあわせる。これはうまくヒットせず、相手DFにクリアされたものの、攻撃が身上の広島が守勢に回らざるを得なくなった。
そして後半44分、磐田は2−2の同点に追いつく。この劇的な場面でも陰の働きをみせていたのが菅沼だ。コーナーキックに対する激しい競り合いの中、173センチと小柄な男は、地上で広島DFの寄せをブロック。那須が高い打点でヘディングシュートを放つのを助けた。このこぼれ球をゴール前に詰めていた前田が押し込んだ。
菅沼にとって、今季は苦しいシーズンだ。開幕時は柏の主力として1年でのJ1復帰を目指していた。だが、順調に勝ち点を伸ばすクラブとは裏腹に出場機会が減った。「出られなかったのは実力がなかったから」と本人は語るが、内心は忸怩たるものがあっただろう。セルティックから水野晃樹の加入もあり、押し出されるかたちで磐田にやってきた。
新天地では豊富な運動量を買われ、後半の苦しい時間帯に投入される役割を得ている。クラブに欠かせない存在になりつつあるとはいえ、「やっぱり次の試合は最初から出たい」と本人は貪欲だ。「今日、やっと一仕事できたというくらい。ホッとはできない」。ブラジル、愛媛と渡り歩くたびに大きく成長した25歳は、磐田の地でも飛躍への第一歩を刻んだ。
それにしても広島は、目前に迫っていた初の栄冠を逃した。1点を先制された前半終了間際にはMFミキッチの右クロスにFW李忠成が左足で合わせて同点。後半の立ち上がりには相手のスキを突き、左サイドを抜け出したMF山岸智が勝ち越しゴールを決める。磐田の反撃にあう時間帯は多かったものの、ゴールは割らせず、悲願達成へのカウントダウンは始まっていた。そこを最近の直接対決で5戦6発とやられている前田にまたも得点をあげられ、追いつかれた。
それでも延長では前半3分にビッグチャンスがあった。李がポストプレーでゴール前中央に落としたボールに、MF高萩洋次郎が反応する。
「タイミングがあったのでシュートを選んだ。手ごたえはありました」
そのままダイレクトで左足を振りぬくと、鋭い弾道がゴールマウスを襲う。しかし、ボールはGK川口能活の伸ばした手をかすめ、カンと乾いた音を響かせてバーに当たった。「カップは我々のほうに来たくなかったのかもしれない」とゼリコ・ペトロビッチ監督も不運を悔やむしかなかった。
ただ、最後まで目が離せない好ゲームになったのは、広島の頑張りがあったからに他ならない。2点ビハインドを背負った延長前半ロスタイムには、ペナルティーエリアの外中央からDF槙野智章がゴール左隅に絶妙のFKを決める。リーグ戦から中2日のゲームで体力的にも厳しい中、120分間、全員が精一杯のプレーをした。
「(相手が)カップを掲げている姿はもう2度と見たくない。下から(その光景を)見上げるのはもう終わりにしたい」
そう森脇が口にした悔しさは広島の誰もが持っているはずだ。この準優勝は“三本の矢”の結束をさらに強くするに違いない。
(石田洋之)