二宮: ウイスキーの飲み方はいろいろありますが、オススメはありますか?
久光: ウイスキーはお酒の強い方でも弱い方でも濃さを調整して楽しめるのがよいところです。好みに合わせて飲んでいただくのが一番ですが、しいていえば、少し濃い目で飲み始めるのがオススメですかね。ちょっと水を垂らすくらいがおいしいでしょう。
<提供:アサヒビール株式会社> 水を入れると“花が咲く”二宮: ウイスキーのおもしろいところは水の量で味わいが変わってくる。水を足すとフワーッとまろやかになりますよね。
久光: ウイスキーはいろんな香りが溶け込んでいるお酒です。水を加えることで、それらがどんどん外に出てくる。これを私たちは“花が咲く”という表現をしています。少しずつ水の量の変えながら、ぜひ、次々と“花が咲く”のを楽しんでいただければうれしいですね。
二宮: “花”を楽しむためにも、やはり氷や水にもこだわったほうがいいと。
久光: あまり「ウイスキーは難しい飲み物だ」と思われるといけないのですが、できればミネラルウォーターか、水道水でも浄水器を通したものを使っていただけるとありがたいですね。
二宮: 一番おいしく飲める適温はありますか?
久光: 10度くらいですね。とはいえグラスの中に温度計をつっこむわけにもいきませんから、とっておきの飲み方をご紹介しましょう。ウイスキー1に対して水は2、そしてロックの氷を3個入れてください。名づけて「1・2・3」。これをかき混ぜて飲み頃になったときには、だいたい温度が10度くらいになっています。
サッカー観戦にウイスキーが最適?二宮: さて、久光さんがブレンダーを志したのは何がきっかけですか?
久光: お酒が好きだから、それにまつわる仕事がしたいなと。学生時代から、よくニッカのウイスキーを飲んでいたので、受けてみようと思いました。単純な動機ですよね(笑)。
二宮: 入社以来、ブレンダー一筋と?
久光: いや、そうでもないんです。入社直後に先輩の佐藤茂生マスターブレンダーの下で「ピュアモルト」などの製作に携わらせてもらった後、一度ブレンダーの仕事を離れました。マーケティング部門で商品のプロモーションを考えたり、本社の生産管理部門で原料の購買などを担当したりしました。自分でも意外だったんですが、営業をやったこともあるんですよ(笑)。
二宮: へぇー。いろんなお仕事を経験されているんですね。ブレンダーといえば職人ですから、専門職だと思っていました。
久光: 私の場合はいろんなセクションを経験して、ブレンダーに戻ってきたことがプラスになっています。商品をつくるところから、お客様の手に渡るまでの工程をひととおり学ぶ中で、どんなウイスキーなら多くの人に飲んでいただけるのか勉強することができました。
二宮: ただ、ブレンダーはやはり鼻と舌が問われる職業ですから、感覚を鍛えるのは大変だったでしょう。
久光: 他部署にいた頃は、普段はそういうトレーニングをする機会がないですから、ときどき佐藤マスターブレンダーの仕事場へ行って、原酒をみさせてもらったりしていました。あとは家でいろんなお酒を飲み比べました。
二宮: 久光さんは現在、チーフブレンダーとして部下のブレンダーたちがつくってきたものを最終判断する立場でもあります。決断力を磨くためには何がポイントになるでしょうか。
久光: これは僕たちの仕事にかかわらず、すべてに共通しますが、ウイスキーの世界だけでなく、日頃から多くの経験を積むことでしょうね。たとえば僕はサッカーが好きで、よく見ています。そういうリラックスする時間があったほうが集中できますし、人間にも幅ができる。ウイスキーのことを四六時中考えていると言えば、かっこいいかもしれませんけど、それでは身が持ちませんよ(笑)。
二宮: 野球だと観戦しながらお酒を飲むという習慣がありますが、サッカーはボールから目が離せないこともあって、日本ではまだお酒と結びついた文化には熟成されていません。ただ、イングランドなど外国にいくと、スタジアムのパブでウイスキーを飲みながら観戦する光景をよく目にします。サッカー観戦にもってこいのウイスキーをお考えになったこともあるのでは?
久光: 以前、柏レイソルのホームスタジアムが近くにあったので、実際にウイスキーを持っていったことがあります。ビンはスタンド内に持ち込めませんから、水割りをつくって水筒に入れていきました(笑)。ビールはガバガバ飲みますからトイレが近くなってしまいますが、ウイスキーだと少しずつ楽しめます。確かにサッカー観戦に適しているかもしれませんね。
安心づくり、夢づくり、魅力づくり二宮: ズバリ、ブレンダーとはどんな職業と言えるでしょう?
久光: 僕は「あ・ゆ・み」だと感じています。「あ」=安心づくり、「ゆ」=夢づくり、「み」=魅力づくり。“安心づくり”の原点は常に同じ品質を保ち続けることです。簡単なようでこれが難しい。たとえば同じ12年モノといっても原酒は年々、変わっていきます。同じやり方では、同じものは生まれません。試行錯誤の中で、お客様に同じ親しまれている味わいを維持しなくてはいけないわけです。
二宮: ブレンダーの腕ひとつで長年築き上げてきたブランドを壊してしまう危険もある。そう考えると責任は重いですね。
久光: 次に“夢づくり”。前回、12年モノとか20年モノという表示について説明しましたが、今飲んでいるウイスキーは少なくとも10年も20年も前につくられたお酒からできています。逆に言えば、今つくっているお酒は10年、20年経って、もしかしたら僕がここにいない頃に、未来の大人たちが飲むものかもしれない。どれが将来の名酒に化けるかわかりませんが、未来のお客様のために、未来のブレンダーのために仕事をしている。とても夢のある職業だと思っています。
二宮: 自分のつくったものが後世に残るというのは素晴らしいことですね。
久光: 最後が“魅力づくり”。僕たちはもっとウイスキーを多くの人に飲んでいただきたいと考えています。そのために飲みやすく、飲み飽きないお酒を世の中に出していくことが目標です。そして、こういう機会やセミナーなどを通じて、ウイスキーにこんな世界があるんだよと伝えていきたい。みなさんにウイスキーを飲んでおいしいなと思ってもらえることが何よりの喜びですから。
さぁ、次のお酒はいかがですか? 「シングルモルト余市1986」は限定品。「竹鶴21年」と比べると個性のあるウイスキーです。
二宮: 確かにグッときますね。味が自己主張していて訴えかけるものがあります。今回はたくさんおいしいお酒をいただけて幸せだなぁ(笑)。
(後編につづく)
久光哲司(ひさみつ・てつじ)
1983年、ニッカウヰスキー株式会社にブレンダーとして入社。その後、マーケティング、生産管理、原料調達、営業など幅広い部門を歴任。2006年1月よりブレンダー室長兼チーフブレンダーとなる。2007ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)で世界最優秀賞「アワード」を受賞した「竹鶴21年ピュアモルト」、「ベスト・ジャパニーズ・シングルモルト」を受賞した「シングルモルト余市1986」のチーフブレンダーでもある。
★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
日本のウイスキーの父・竹鶴政孝。今から90年も前に単身スコットランドに渡り、日本人として初めて本格ウイスキーづくりを体得した男。竹鶴という名こそ、日本のウイスキーの原点なのです。
・竹鶴21年ピュアモルト
容量:700ml/アルコール度数:43度
21年熟成ならではの味わい深いコクとバランスの良さが特徴。熟成した果実のような豊かな香りと華やかな樽熟成香、フィニッシュに近づくに従って現れる、複雑な風味の変化をお楽しみ下さい。・シングルモルト余市1986
容量:700ml/アルコール度数:55度
花が咲き、一斉に蜜の香りが広がり漂うような香り。熟成を経た柔らかな口当たりで、完熟した果実の甘みとピートのビター感が程よいバランスの一品です。※現在、販売は終了しております。
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<対談協力>
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