二宮: 吉永さんとはテレビ番組のコメンテーターなどでもよくご一緒させていただいていますが、不二家の期限切れ原料問題によって発足した「『外部から不二家を変える』改革委員会」や西武球団の裏金問題での調査委員会など、本当に多方面にご活躍されていますね。まずは西武の裏金問題ですが、調査委員会の最終報告が出されて、どうにか一段落つきましたね。
吉永: 委員会のメンバーに選ばれたときは「どうして私が?」と思いましたけど(笑)、いろいろ勉強をさせてもらいましたね。今回、調査に携わったことで、日本の野球界がどういう構造になっているのかよくわかりました。
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二宮: いろいろと大変だったのでは?
吉永: 最初は、裏金の調査といっても「いったい、どうすればいいんだ!?」と。不二家の場合は「なぜ衛生管理体制に問題があったのか」と探っていったら、企業の体質や風土など改革するべきところが浮き上がってきた。裏金は、その言葉どおり「裏」にあるお金なんだから、普通は解明しようとしても強制捜査でもしない限り無理でしょう。でも「この際、とにかく全部を明らかにさせたい」という西武側の姿勢があった。だから、全部資料を出してほしい、と。資料を出してもらっても、裏金の実態がわかるようなものが出てくとは思わなかったけど、それが出てきてビックリしましたね(笑)。

二宮: よくその資料が残っていましたね。
吉永: あの会社は特殊ですよね。社会に対してというよりも、元オーナーの堤義明さんに対するコンプライアンス(法令順守)の方が重視されている(笑)。調査委員会で関係者にヒヤリングしたときも、ある元幹部は「私は何も知りません。(元社長の)星野好男氏が全部やったんです」の一点張り。裏金支給は、球団社長あるいは球団代表以下の管理職の決裁を得て行われていた。書類にはしっかりとその人の印も押されているんです。「このお金はおかしいと思わなかったんですか?」と聞いても「いや、何もわかりません」と。でも、印鑑が押してあるということは、ただ押すわけじゃないんだから。「書類というものがあって、そこにハンコを押すんでしょ?」と聞いたら「みんなが書類の部分を隠していたんです」と言う(笑)。

二宮: アッハッハ。そこまでいくと笑い話ですね。
吉永: それを聞いて、みんな目がテンになっちゃった。新しい印鑑を買って“試し押し”しているわけじゃないんだから(笑)。おそらく西武も、今回の件を機に、古い体質を一掃して生まれ変わろうとしたのかもしれないね。

二宮: 太田秀和球団副社長はそのつもりだったのでしょうね。
吉永: 西武の体質を変えたいという思いがあるからこそ、すべての資料を出してくれたんだと思いますよ。だから調査もうまくいった。でも本当に資料が出てきたときは「エッ!?」となりましたよね。出てきたものは発表するしかない。そうしたら今度は「問題はアマチュア野球界まで浸透している」と……。
 今までは証拠がなかっただけで、こういう問題があることは誰もが薄々分かっていた。今回、裏金問題が表面化しても誰も「そんなことがあったの?」なんて、驚かない。それよりも、このことが明確に証拠つきで解明されてしまったことの方が驚きですよ。

二宮: まったく同感です。証拠が出てきたことの方が驚きましたね(笑)。
吉永: 今回、ここまで問題が公になってしまったから、本当に大事なのはこれからですよね。この問題を野球界がどう受け止めて、今後、変わるか変わらないか…。こういう問題は、組織的に立て直さないとダメでしょうね。

二宮: おっしゃるとおりですね。西武は、前任の堤義明氏が辞任して以来、企業体質の改善を図ってきているから、今回のような調査が思い切ってできた。しかし、実際にそれができる球団は少ないですよね。
朝日新聞が、調査委員会の最終報告を受けて「調査が中途半端だ」と批判していましたけど、自分たちが主催している高校野球はどうなんだと言いたい(笑)。
吉永: 本当だよね(笑)。最近のマスコミを見ていて感じるのは、社会で何か面白いことがあれば飛び付くけど、新しく何かをつくりあげるということにはまったく興味がない。情けないなと思いますよ。マスコミはもう少し冷静でないといけないし、何をどういう視点で報じていくのかという使命感をもっと持ってほしい。自分にも、もちろん返ってくることですが。

 選手が犠牲になる制度はおかしい

二宮: 今、高校野球の特待生制度が問題になっていますが、僕は大目に見るべきだと思っています。今までは公然と行われているのに、何を今さらという感じですね。人の才能はいろいろで「文武平等」だと。ただ、それが裏金につながったり、行きすぎるのはもちろん良くない。でも特待生制度と裏金は切り離して考えなくちゃ。
吉永: 結局、日本学生野球憲章に「野球選手であることを理由としたスポーツ特待生制度は禁止」と謳ってしまっているからね。普通の特待生制度とはやはり違いますよね。今は、高校野球で学校の名前が売れる。ちょっと良い選手は、ほかの高校に行かせないようにお金で呼び込む。でもいざその高校に入っても選手層が厚くてレギュラーになれない。それが欝憤につながって事件を起こしたりもするわけですよ。お金の質をきちんと透明にするべきですよ。

二宮: そう。奨学金も特待生制度も、きちんと表に出して明確な基準をつくればいい。
吉永: 憲章で禁止していることをみんながやっていて、見て見ぬふりをして、そのことをファンがみんな知っている。この構図はとっても異常だと思う。これでクリーンとか夢を追うとか言われてもねぇ。

二宮: 行き過ぎは指導すべきだけど、出場辞退や地区予選自粛が続出するなど、選手が犠牲になる方向に行っている。選手が責任を負わないといけない制度はおかしい。高野連の会長は「生徒にも責任がある」と言っているが、じゃあ中学生の時点で学生野球憲章を高野連は配布し、指導したのか。自分たちは誰も責任を取らないというのはアンフェアですよ。それに西武の裏金問題が表に出なければ、あの制度は続いていたわけでしょう。
吉永: 本当にそうよね。例えば、ほかの企業で不祥事があった場合、二度と同じことをしないために原因を究明するでしょ。信頼を取り戻すために外部改革委員会をつくったりして、何とか体質を変えようとするじゃない。西武も、企業としてトップが判断して動いた。野球界を根本から改革するためには、誰が動くんでしょうか。コミッショナーに期待しても無理でしょう(笑)。

二宮: それにしても、吉永さんも、不二家問題や野球の裏金問題など、大変な仕事ばかりですね(笑)。
吉永: なぜでしょうね(苦笑)。やはり不幸な出来事をしっかりと見据えて、本気で生まれ変わろうとする意志がないところは、再建できないですね。信頼が回復しない。制度を形だけ整えても、人間の気持ちが入っていなければ、結局形骸化してしまうんですよね。


(続く)

吉永みち子(よしなが・みちこ)プロフィール
ノンフィクション作家。1950年生まれ、東京外語大学卒。競馬新聞記者、日刊ゲンダイ記者を経て1977年騎手の吉永正人氏(故人)と結婚(後に離婚)。「気がつけば騎手の女房」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。テレビコメンテーターなどとしても活躍。



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