日本シリーズ連覇を狙う巨人とチャンピオンフラッグ奪還に燃える西武。1990年の日本シリーズは、相撲でいえば横綱同士の対決となった。

 初戦は10月20日、東京ドーム。西武の先発はこの年、18勝(10敗)をあげた渡辺久信。巨人は9勝(5敗)の槙原寛己。両軍ともに速球派をマウンドに送った。

 初回がすべてだった。先攻の西武は先頭の辻発彦が一塁線を破る二塁打を放つと、森祇晶監督は2番・平野謙に手堅く送らせた。3番・石毛宏典はセカンドライナーに倒れたものの、4番・清原和博が四球を選び、二死ながら一、三塁のチャンス。ここで打席に入ったのは、長打力のあるオレステス・デストラーデ。

 制球の定まらない槙原はボール球を3球続けて投じた。デストラーデは「ど真ん中のストレート」だけに的を絞った。狙い通りのボールがきた。デストラーデがバットを振り切ると、打球はライトスタンドの中段へ。絵に描いたような先制パンチだった。

 西武はこのゲームを5−0でとると一気に波に乗り、4連勝で巨人を葬った。敗れた巨人の岡崎郁は「野球観が変わった」と言ってうなだれた。

 日本シリーズ後、森監督にインタビューする機会があった。「すべては初戦の初回。もし巨人に3ランが飛び出していたら、結果は逆になったかもしれない」。名将はポツリと言った。たった1球の失投が明暗を分けたのである。


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