
東北楽天・野村克也監督といえば“ボヤキ”が代名詞だ。勝っても負けてもなにかと話題を提供してくれる。
WBC開催期間中には日本代表の正捕手・城島健司(マリナー)のリードについて「城島の配球が悪い。相手がヤマを張って待っているところに、シュートで攻めてまたシュートじゃダメ」などと酷評した。
怒った城島が「野村監督は生涯で1点も取られたことがなかったんでしょうね」とやり返してバトルはヒートアップ。しかし毒舌ならノムさんのほうが一枚上だ。「彼は人間形成をやらなくちゃいけない」。
このように舌禍の絶えないノムさんだが、メディアの評判はすこぶるいい。ネタが豊富なことに加え、話がおもしろいからだ。ノムさんのボヤキを連載コラムにしているスポーツ紙もある。
なぜノムさんはかくもメディアに対しサービス精神旺盛なのか。以前、本人からこんな話を聞いたことがある。
「南海時代、何を言っても大阪のスポーツ新聞はほんのちょっとしか取り上げてくれんかった。大阪は1面から阪神、阪神ですから。。では、どうすれば取り上げてくれるのか。少々、、乱暴でも見出しになるようなことを言うしかないんです。この苦労はセ・リーグ出身者にはわからないでしょうね」
同じような話を、今は亡き仰木彬さんからも聞いたことがある。仰木さんは近鉄やオリックスの監督時代「パ・リーグの広報部長」を自称していた。
オールスターゲームで「イチローをピッチャーで使う」と言明し、セ・リーグの監督だったノムさんとやり合ったのは、もうずいぶん前のことだ。今考えれば、二人のバトルは“暗黙の了解”だったような気がする。
今季限りで契約が切れるノムさん。毒舌がパ・リーグの“内需拡大”に一役買っていたことを考えれば、あまりにも惜しい。
<この原稿は2009年5月2、9日合併号『週刊ダイヤモンド』に掲載されたものです>
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