二宮: W杯へ向けて厳しいご意見をお持ちのセルジオさんですが、代表を支えている国内サッカーについては?
セルジオ: Jリーグのクラブが増えすぎて、試合内容が大味になってきたように思います。大した実力のない外国人に点を獲られて数字を上げられているよね。日本で最もサッカーのレベルが保たれるためには、トップリーグは14クラブくらいでいい。これでギリギリですよ。J1で18クラブも出来るというレベルにはないよね。


 補欠をなくせ!

二宮: セルジオさんの意見だと、J1に14クラブ。その下のJ2では?
セルジオ: J2も14。その下に3部リーグを作ればいい。今の日本の力はそのくらいです。そして、補欠をなくして登録を自由にできるようにするんです。

二宮: それは具体的に言うと?
セルジオ: これはプロリーグに限った話ではないんです。例えば大学生のリーグ。1つの学校で2つのクラブを登録していいことにする。同じ大学同士が戦って勝ち残るのであれば、決勝で当たってもいい。実力のあるチーム同士が対戦するほうがいいに決まっている。ある大学のAチームより、あるところのBチームが強いというのはおかしいでしょう。私立の大学は、色んなところからいい選手を集めて、周りの学校を弱くして勝っちゃっているんですよ。巨人軍みたいなやり方です(笑)。

二宮: 確かに、そのやり方ではサッカー界にいいことは何もないですね。
セルジオ: そうでしょ。日本には「補欠」という言葉があるけど、登録人数を自由にしたらこの言葉はなくなりますよね。スポーツで一番作ってはいけない状況は「選手の力を伸ばせない」ということ。「人数が溢れてきたら危ないよ、競争がなくなるよ」ということです。みんなが競争してこそ、その競技が伸びるんだから。

二宮: それは全くおっしゃる通り。日本の社会にはおかしな意識があって、技術のない選手でも「100人いる名門野球部の中でがんばっていました」というと就職が有利になったりする。しかしそれは、スポーツが本来持っている価値観ではない。
セルジオ: 競技が普及すれば競技は盛んになる。盛んになればなるほど受け皿をつくってあげなければいけない。僕は35年前から日本に来ているけど、その部分でこの国は何にも変わっていないよね。
 サッカー協会への登録人口は増えた。でも、サッカー人口は変わっていないです。サッカー人口というのは試合に出られる人数のこと。1校1チームのままでは、スタンドに入って応援する子だけが増えて、協会にお金が入る。それだけですよ。試合に出る子が増えないとレベルが上がるわけがない。そこに手をつけることを改革というんです。日本サッカー界には改革派がいないのよ。

二宮: サッカー協会は文部科学省の管轄下にあります。これはサッカーだけでなく、日本のスポーツは全部そうです。
セルジオ: 学校が「グラウンドを使わせてあげない!」と言ったら、日本にサッカーグラウンドが無くなるのよ。

二宮: 日本はスポーツを教育の一環と位置付けてきました。一方でパラリンピックは厚生労働省の管轄だったりして、スポーツが分断されている。その点、ブラジルにはスポーツ庁がありますよね?
セルジオ: スポーツ庁があるというよりも、学校ではスポーツをやっていないということですね。学校でスポーツをやっている国は、アメリカと日本、そして韓国です。

二宮: ジーコは向こうでスポーツ大臣とかやっていました。
セルジオ: でも、ブラジルのスポーツ大臣なんて政治家の票集めですよ。政治的に有名人を置いて、独立したものでは全然ないです。ジーコの次の大臣を知っていますか? 誰も知らないでしょう。政治が人気取りのためにスポーツを利用する。ブラジルのスポーツ庁と言ったって、そんなものですよ(笑)。

 日本サッカーは国体文化!?

二宮: 登録人数について貴重なご意見をお聞きしましたが、他にも日本サッカー界の問題点は?
セルジオ: 最近では、サッカー協会の風通しの悪さも気になる。組織の中に色々なポストがあるけれど、本当に人材も育っていないし、何をするにもマンネリ化している。仲良しクラブになってしまっているよね。昔はお金もなかったし、一致団結してサッカーを盛り上げようという気概があった。だけど今は、お金が発生したじゃない。名誉職にもお金が出るようになって、結局天下り先になっちゃった。だから会長選挙をやらないでしょう。選挙をやらないから、イエスマンばかりが組織に残ってしまっている。

二宮: たしかに、選挙はやったほうがいいでしょうね。
セルジオ: 僕は日本サッカーにもいいところがいっぱいあると思っているんです。何もないところから、皆でがんばってプロリーグを作ったわけだから。でも、最初の頃と理念がずれて来てしまっているんですよね。2002年で地元国体が終わったという文化なんです。それまでは結束して「大会を成功させよう!」というエネルギーがすごいんだけど、終わってしまえば冷めてしまっている。今度は南アフリカでやるから、「別に」という感じになる。

二宮: 地元開催を成功させていい結果を残したら、どんどん熱が下がっていく。たしかに国体文化ですね。
セルジオ: 2002年が国体だった。2018年かなんかに、もう一度国体をやろうとしているらしいんだけど(笑)。その前のミニ国体が東京に来て成功すればやろうとしている(笑)。2002年までのパワーが今はないね。僕は全国を回っているけど、どこも冷めてしまっています。みんなローカルでお腹いっぱいになってしまって。当然だよね、中央からお金を配って余っているんだもん。

二宮: 地元のクラブでいい選手を獲得すればいいのにな……(苦笑)。
セルジオ: でも、お金を持っているのは県のサッカー協会で、Jのチームとは別だから。そこにも問題がありますよね。分配金を中央からダーっと配っている。あとは箱物ばかり作っている。まるで郵政事業のようでしょう(笑)。福島にあるJヴィレッジにしても、いい天下り先じゃないですか。

二宮: あのJヴィレッジで行なっている「エリート教育」にも賛否両論ある。あれはよくわかりません。純粋培養で育つ選手は右向け右というタイプでしょう。でも、いいFWは「右向け右」といわれると左を向く(笑)。
セルジオ: 選手を育てようということよりも、お金をどう使おうか。そういうことしか考えていないんです。国と一緒ですよ。そのうちに箱ばかりが増えて、サッカーの実力は下降していくでしょう。

 16年経っても百年構想?

二宮: いずれにしてもスポーツが独立するためには、スポーツ省、あるいはスポーツ庁をつくらなければならない。
セルジオ: 僕もスポーツ大臣には大賛成なんです。でも、スポーツ大臣になる人は政治家でしょう。名前が変わるだけで、今までと全く変わらないことも考えられる。

二宮: それもおっしゃる通り。だからこそ、メデイアや国民が中身をしっかりとチェックをしなければいけません。
セルジオ: 監視という点で、またサッカー協会の風通しの悪さにつながるんだけど、協会の中に自分と同じ大学から後輩を連れてくる傾向が強いよね。様々なライセンスを大学のOBや学生に取らせておいて、自分の立場を確固たるものにしようとしている。

二宮: まるで家元制度のようですね。
セルジオ: 力を持っている人がそう考えるのは、仕方のないことかもしれない。ただ、そういう話に光を当てて検証していくのは、やっぱりメディアだよね。僕が思うに、サッカー雑誌ではダメ。サッカー週刊誌を作らなければいけない。今の週刊誌は、ただのサッカー雑誌。彼らは報告をするだけでしょう。サッカー週刊誌はもっと色々な問題につっこまなければいけない。サッカージャーナリズムが必要なの。それが日本にはない。外国にはそういうものがたくさんありますよ。サッカー協会や有力クラブの会長選挙の前には、みんなが知らなかった問題がいっぱい出てきて、みんなで議論する。それは政治の社会も一緒でしょう。調べたら面白いネタをいっぱい持っているんだから(笑)。だからね、協会がオレに文句があるんなら言ってみろって。本当ですよ。色んなことが証明できるもの。それくらい、今のサッカー界はルーズな社会なんですよ。

二宮: 今、それが言えるのはセルジオさんくらいだな。
セルジオ: 素晴らしい理念から始まった日本サッカーが、ある時期を境にみんなでお金を集めて、さらにお金を作るようにという流れになってしまった。それでもサッカーの実力が上がっていればまだいいけれど、現場のレベルがどんどんをお粗末になっている。そこが一番の問題なんですよ。
 今年のワールドユース(U−20ワールドカップ)には行けない。(北京)オリンピックはグループリーグで負けた。アジアカップは4位でしょ。W杯最終予選の戦いぶりも不甲斐ない。そして、若い世代は出てこない。
 なんでJリーグを作ったか。それは「日本サッカーが世界に勝つため」ですよ。カネだけ集めたって勝てなくなっては意味が無い。Jリーグ百年構想もいい方には向かっていない。そもそも百年から全く数字が変わらないのもおかしい。Jリーグ開幕から16年も経っているのに。中国四千年の歴史とJリーグ百年構想だけはいつまで経っても数字が変わらないよね(笑)。本当にサッカー界が小さくなってきている。これには大きな危機感を持つべきだと思いますよ。

 サッカー教室で生まれた人脈

二宮: 熱弁をふるっていただくうちに、どんどんグラスが空いています。セルジオさんはブラジルにいらっしゃった頃から飲まれていたんですか?
セルジオ: よく飲むようになったのは、日本に来てからですね。お酒を飲むというのは、日本の習慣だからね。昔、サッカー教室をやった時が一番飲んでいた時ですね。それぞれの都市で1泊2日の予定で全国を回っていたんですが、各地で大人同士の交流を深めるために懇親会をやるんです。スポンサーや地元の人たちも集まってね。
 そこではすごかった、僕ひとり対30人とか(笑)。もう盛り上がる、盛り上がる。途中で「明日(のサッカー教室)はもういいじゃん!」とか言われちゃって(笑)。2次会、3次会まで開いてくれましたよ。そういう飲み会を通じて、地方に行くと、皆さんが喜んでくれるということを実感しましたよね。今は全国を回ったらどこに行っても同窓会を開けます。しかもみんな偉くなっているんです。こないだ沖縄に行ったら、少年団の団長が県のサッカー協会会長になっていた。
 昨日も幼稚園に行ったら、お子さんを連れたお父さんが「長野のサッカー教室で教えてもらいました。だから今日はすごく嬉しいんです」と言ってくれて。その帰りに近くのイタリアンレストランで食事をしていたら、ウエイターの人に「熊本にいた時、県選抜でセルジオさんにお世話になりました」と言われた。1日に2人の教え子に会ったりするんです。みんな、あちこちにいるんですよ。

二宮: 中田英寿も教えたそうですね。
セルジオ: そう、小野(伸二)もね。今は引退した堀池(巧)とか長谷川(健太)も小学生の時に教えている。だから、(サッカー協会会長)選挙をやったらオレはきっと勝つよ(爆笑)。

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<セルジオ越後(せるじお・えちご)プロフィール>
1945年7月28日、ブラジル・サンパウロ出身。両親が日本から移民した日系2世。18歳で名門クラブ・コリンチャンスと契約を結ぶ。入団後から頭角を現し、ブラジル代表候補にも選出される。23歳で一度引退するものの、日本からのオファーを受け72年に来日を果たす。藤和不動産サッカー部で2年間プレーし、現役を引退。その後は指導者に転身し「さわやかサッカー教室」を開催、長年に渡り全国の子供たちにサッカーの普及活動、指導を行った。現在はサッカー解説者として活躍する一方、アイスホッケー「HC日光アイスバックス」の役員に就任し、地域密着を目指したチーム作りに参画している。






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(構成:大山暁生)
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