<好評につき、今回は対談未公開部分を特別編として公開します>

二宮: 先日、南アフリカでコンフェデレーションズカップを観戦した人に話を聞くと、コートをはおっても肌寒いくらいの気候だったとか。基本的に日本の冬はオフシーズン。本番に向けて寒さの中でのゲーム経験も必要ではないでしょうか?
セルジオ: でも、これから南半球の国と試合を組んでも季節のシミュレーションにはならないよね。南米に遠征する予定もないみたいだし、この前のアウェーのオーストラリア戦が本番前にやる南半球最後の試合になりそうだね。


二宮: しかも、南アフリカのスタジアムは割と高地にある。会場のひとつであるエリスパークの標高は約2000メートル。高地での戦いに日本は不慣れではないでしょうか?
セルジオ: アジアでもイエメンやイランなどは標高が高いから、選手たちも多少は経験があるでしょう。高地への対応は日本だけの問題ではない。ブラジルやアルゼンチンも苦労しているから。

二宮: 確かに彼らは南米のエクアドルやボリビアで苦戦しています。あれだけの強豪も高地では羽根をもがれた鳥のように無力です。ただ、ブラジルやアルゼンチンはたとえ負けたとしても、高地での戦いを体験している。この点で、日本には経験すらほとんどない。代表合宿では高地トレーニングも実施したほうがいいかもしれません。
セルジオ: そこはあまり神経質になってもね。条件はお互いに平等だし、慣れていないところでも、最後にモノを言うのは実力だから。実際に高地でやったメキシコ大会では最初(1970年)がブラジルとイタリアの決勝で、2度目(1986年)もアルゼンチンと西ドイツの決勝だったでしょう。いきなり現地で即試合をするわけではないし、キャンプの準備期間で充分、対応できると思います。

 指導者ライセンス制の功罪

二宮: 前回、エリート教育の是非について伺いましたが、指導者のライセンス制にも良し悪しがある。確かに子どもたちの技術は上がったかもしれませんが、一方で個性的な選手が少なくなった気がします。
セルジオ: みんなカリキュラムにのっとって教えているからね。昔は静岡学園高校の井田勝通監督が「俺は徹底的にボールを持たせる」と言ったり、四日市中央工業の城雄士監督は「若い子は攻めて攻めて育つんだ」と言っていた。理念のぶつかり合いが競争を生んで、いろんな選手が出てきた。今はライセンス制で指導者が同じ考え方ばかりになっている。

二宮: 試験に合格したらライセンスを与えるだけでなくて、実際の指導者としての実績を評価する面も必要でしょうね。
セルジオ: もっと競争させればいいじゃない。せっかくライセンスを発行したなら「じゃあ、いい選手を作ってみろ!」ってね。いい選手を輩出することによって、その指導者が評価される仕組みが全くないんですよ。

二宮: 野球には指導者ライセンスがないから、サッカーみたいにガイドラインを定めるべきとの意見があります。でも、ライセンス制を導入したら、果たしてイチローの振り子打法や野茂英雄のトルネード投法は生まれたのか。「これは基本じゃない」と、最初から直されていた可能性も否定できない。
セルジオ: その通りですよ。個性というものは選手を放っておくことで育つわけだから。あと、ライセンスをとると、どうしてもモノが言えなくなる。みんな、メディアの仕事をしながら監督のイスが空くのを待っている状態だからね。テレビ番組とかで討論会をしても、「みんな、思っている事をもっと言えばいいのに。自分たちの世界を自分たちでちゃんと意見を出して作っていかないと」と言いたいんだけど……。
 僕があちこちでモノを言っているのは、好き嫌いじゃなくて、「日本のサッカーを良くしようよ。自分たちの職場を良くしようよ」という思いから。「会社が傾いてから悪口言っても遅いんだよ」って。でも現実は「監督を狙っていない人はモノを申せ。狙っている人は黙っておけ」。これが暗黙の了解だそうですよ(笑)。

 WBCはサッカーW杯と一緒?

二宮: セルジオさんはプロアイスホッケーチームのHC日光アイスバックスのシニアディレクターとしても活動されています。異なる競技から日本のスポーツ界を眺めてみて、感じることは?
セルジオ: 僕は日本にひとつもプロスポーツがあるとは思えないんです。野球だって完全なプロじゃない。未だに還元事業で運営していて、ビジネスになっていないでしょう? それを裏付けるように、球団社長といっても経営者じゃなくて単なる管理者。本当の経営者がいない。トップの選手たちより給料が少ない球団社長が会議をやったところで、話が進むわけがないでしょう。

二宮: 一昔前はどの球団もフロントの人間は親会社からの出向でしたからね。完全な天下り先だった。そんな環境の中で経営のプロは生まれないのは当然です。
セルジオ: 野球のWBCだって、日本ではサッカーのW杯と同じように考えられているけど、あれはあくまでもメジャーリーグ機構とメジャーリーグ選手会のイベント。だからメジャーリーグの球団サイドは本音では選手を出したくない。仕方がないから球数制限のルールをつくって出場を認めたんです。日本人と韓国人の多い西海岸で試合をしたり、組み合わせで日韓対決が何度も起こるようにして、なんとか盛り上がったようにみせただけ。アメリカ本国では全く盛り上がっていなかった。

二宮: おっしゃる通りです。WBCはメジャーリーグの世界進出プロジェクトの一環。日本球界はただ、それに乗っかってうまく利用されてしまった。優勝しても日本は大会収益の13%しかもらえない。対してメジャーリーグ側は選手会とあわせて3分の2の収益が入るシステムになっていた。球界に経営のプロがいれば、大会運営の方法も含めて、もっと交渉できたはずです。
セルジオ: それなのに国内では、読売新聞と中日新聞の対立がメンバー選考に影響したり、一枚岩ではなかった。こんな競技ではオリンピックの種目から外されるのは当たり前ですよ。

二宮: ただ、野球やサッカーはプロとして維持できているだけ、まだマシという意見もあります。現に世界同時不況の荒波で、アマチュア競技は次々にチームがつぶれてしまっています。
セルジオ: サッカーだって潰れてはいないけど、だいぶ影響は出ているみたいね。親会社の経営が大変だから、補強費も自然と削られてしまう。ウォンが暴落した影響で韓国人を安く獲得できるから、大きな痛手になっていないだけ。ちょうどいい時にアジア枠の導入が決まったよね。
 でも、よく考えてください。いくら不景気でもレアル・マドリードはクリスティアーノ・ロナウドに100億円以上の移籍金を払った。アメリカだって年俸何10億円の選手がいる。なんで経営縮小にならないのか。それは彼らがプロだからですよ。

 外資導入で自由競争を!

二宮: 日本はプロスポーツといっても、まだ企業スポーツの域を脱していない。球団やクラブ単体で独立採算がとれるほど経営が成熟していません。
セルジオ: 巨人が読売新聞、中日が中日新聞、横浜がTBS……。親会社に放送局やメディアも多いでしょう? 新聞やテレビはよほどのことがないとつぶれないから、支援してもらって安心かもしれない。でも、それじゃ、いつまでたっても経営のプロは生まれないですよ。
 メジャーリーグなんて、日本人の選手が海を渡ったら、ちゃんと日本のファンからお金が流れるようなマーケットの仕組みをつくるでしょう。逆に日本ではメジャーリーガーがやってきたとしても、球団が儲ける手段ができていない。選手に高い年俸を持っていかれるだけですよ。これはスポーツというより、日本の構造的な問題だね。

二宮: 近年はソフトバンクの孫正義さんや、楽天の三木谷浩史さんのように、従来の日本的経営とは違う形でトップに立ったオーナーが出てきました。遅かれ早かれ、日本のスポーツ界にも変革の時がくると感じています。
セルジオ: そのためには、外資も容認して自由競争にすべきでしょう。アイスホッケーの世界では、NHLのサンノゼ・シャークスが中国にチャイナ・シャークスというチームをつくりました。このようにアメリカやヨーロッパではアジアを巨大マーケットとしてとらえている。自由競争にすれば、必ず日本の球団やクラブを買いにきますよ。

二宮: 現状では名門のヴェルディでさえ、複数の会社と出資交渉をしてもまとまらないとか。
セルジオ: 今の構造ではサッカーチームって誰も買いたくないでしょ。買うならもう誰かが買っていますよ。村上ファンドが阪神の筆頭株主になって、球団株の上場を提案した時に、阪神の球団社長が嫌ったよね。自分たちの仕事がなくなるから。マンチェスター・ユナイテッドをアメリカの投資家が買った時とは反応が違う。
 さっきも言ったけど日本のプロスポーツは本当に歓迎事業だよ。Jリーグのクラブは多くても赤字が3億円。僕らのアマチュア時代よりも赤字は少ないのよ。アマチュアの時と比べれば安いから、これ以上赤字を増やさない限りは、そのままにしておけという感じだもん。だから、経営規模は大きくならない。出資する側にしてみれば、クラブに対する魅力は薄いよね。世界と戦うためにはクラブの質を変えていかなければダメですよ。

二宮: 弊害があるとはいえ、プレミアリーグは外国資本の導入によって、世界が注目するリーグになりましたからね。
セルジオ: 世界の投資家たちはサッカークラブを完全にビジネスの対象としてみています。C・ロナウドに100億円以上のお金を払えるのも、それ以上の儲けを期待した投資があるから。日本では、100億円の使い捨てという発想しかできないかもしれないけど、裏ではグッズを売って儲けようとするメーカーなどがクラブに投資しているはず。仮に10億円を出してくれるところが10社あれば、100億円はすぐ集まる。これが世界のスポーツビジネスの現実ですよ。

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<セルジオ越後(せるじお・えちご)プロフィール>
1945年7月28日、ブラジル・サンパウロ出身。両親が日本から移民した日系2世。18歳で名門クラブ・コリンチャンスと契約を結ぶ。入団後から頭角を現し、ブラジル代表候補にも選出される。23歳で一度引退するものの、日本からのオファーを受け72年に来日を果たす。藤和不動産サッカー部で2年間プレーし、現役を引退。その後は指導者に転身し「さわやかサッカー教室」を開催、長年に渡り全国の子供たちにサッカーの普及活動、指導を行った。現在はサッカー解説者として活躍する一方、アイスホッケー「HC日光アイスバックス」の役員に就任し、地域密着を目指したチーム作りに参画している。






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