二宮: 陸上部では選手同士で飲みに行くこともあるんですか?
尾崎: そうですね。試合がないときの週末に行ったりしますよ。


二宮: チームでも飲む機会ってあるんですか?
山下: 駅伝が終わった日の夜とか、歓送迎会など節目の時は飲んだりしますね。

二宮: 山下監督は飲むと何か決まって言うこととかあるんですか(笑)?
山下: 説教おばちゃんみたいな……(笑)?
尾崎: いえ、そういったことはないです。逆にいつも楽しませてもらっています。

二宮: 尾崎さんはレースの前に何か食べ物とかでゲンをかついだりしますか? 
尾崎: 豚足を食べますね。

二宮: 豚足!? 女性で豚足好きって珍しいですよね。
山下: 実は私はもともと苦手だったんです。でも、彼女が好きだって言うので、一緒に食べているうちに「あぁ、なるほど」って。段々とその美味しさがわかってきました。今では合宿先で豚足が美味しい居酒屋を見つけたりしています(笑)。

二宮: また、ビールと合うんですよね。味噌で食べますか? 塩で食べますか?
尾崎: 塩の方が好きですね。

二宮: それはツウですね(笑)。
尾崎: ありがとうございます。

二宮: でも、スポーツ選手はウエイトコントロールもしなければいけませんよね。お菓子やジュースといった甘いものは
山下: 特に禁止にはしていないですね。普通にとる分には、OKです。でも、試合直前だというのに体がしぼりきれていない選手にはスイッチを入れるために「今日はこれはやめとこうよ」と言ったりはしますけどね。

二宮: ところで、昨年山下監督はご結婚されたそうですね。改めておめでとうございます。
山下: ありがとうございます(笑)。

二宮: ご主人はチームの元マネジャーさんですから、山下さんの仕事にも理解があるでしょうね。
山下: そういう意味では確かに幸せかもしれませんね。仕事に関しては120%理解してくれていますから。

二宮: 尾崎さんの理想の男性は?
尾崎: やっぱりまだ走りたいと思っているので、この競技に対して理解がある人がいいですね。あとは陸上に限らず、スポーツをしている人がいいです。もちろん、同じ陸上であれば、理解もあると思いますので、理想的ですけど。

 稲盛氏の訓え

二宮: 山下さんは京セラの創業者・稲盛和夫さんから、かなり影響を受けたそうです。
山下: はい。もともと京セラ時代に指導していただいた浜田安則監督が稲盛さんの影響をすごく受けた人だったんです。浜田さんは「あの人の言うことは本当にすごい」って言ってたんです。私自身も稲盛さんと接する機会がありましたね。世界陸上で銀メダルを獲ったときには、高価なステーキをごちそうしていただいたんです。稲盛さんにはいろいろな話をいただきました。

二宮: 例えば、どんな?
山下: 私が京セラを辞める時なんか、稲盛さんに怒鳴られたんですち。「オマエは目標が小さいんだ! もっとグローバルな目標をもて!」って。私にしてみたら、鳥取の田舎から出てきたような自分が、世界陸上でメダルを獲り、オリンピックで4位になったというのに、何でそんなふうに言われなければいけないのか、当時は全くわかりませんでした。

二宮: それは深い話をしてもらいましたね。今に生きているんじゃないですか?
山下: はい。まだはっきりとした答えは出ていないんですけど、チームが駅伝で優勝するだけじゃなくて、もっと国内や世界に何か発信させられるような考えて持った上で、指導していかなければいけないのかなとか、いろいろ考えますね。それと「指導者になるんだったら、自分が選手時代の成績は神棚に上げておきなさい」とも言われました。だから今は自分の時はああだった、こうだったっていうのは極力言わないようにしています。
尾崎: 確かにアドバイス的なことで話をいただくことはあっても、必要以上に山下監督が昔の話をしたりすることはないですね。

二宮: 他にはどんなアドバイスを?。
山下: 稲盛さんにはよくレース展開のことを言われました。一緒にビデオを観ながら「何でオマエはこの位置にいるんだ。勝ちたいんだったら、何でもっと前にいないんだ」って。でも、私にしていたら42.195キロもあるわけだから、勝ちたいから人の後ろにいて、最初はなるべく体力を消耗させないようにしていたんですけどね。
尾崎: 私もすぐ人の後ろについていってしまうタイプですね。その方が精神的に楽だったりしますから。

 気になる後続ランナーとの差

二宮: さて、尾崎さんはベルリン世界陸上で一躍時の人となったわけですが、次に目指すものは当然……。
尾崎: やっぱり、オリンピックですね。それまではずっとなんとなくしか考えられなかったのですが、今はもう現実的な目標となっています。

二宮: 逆に世界陸上で金メダルではなく、銀メダルだったからこそ、オリンピックへの気持ちが膨らんでいるのでしょうか?
尾崎: そうですね。それはあると思います。あと少しのところで獲ることができなかったので、その分「次こそは」という気持ちになっていると思います。

二宮: ロンドンで一度、買い物でもしたらどうでしょうか? やっぱりその街を知っているというのは安心感が生まれますよね。
尾崎: それはいいですね。知っているコースだと、なんとなく安心して走ることができます。

二宮: 走っている時って、沿道からの声は聞こえるものなんですか?
尾崎: はい、だいたい聞こえますね。

二宮: どんなことを言われると、選手は嬉しいものなんですか?
尾崎: そうですね。やっぱり後ろのランナーとの差が気になってしまうので、それを言ってくれるとありがたかったりしますね。
山下: 私が沿道にいたら「後ろとの差はこれくらいだから気にしなくていいよ」とか、言ってあげるんですけどね。監督としては走っている選手が後ろを向くような余計な動作はして欲しくないんです。結構労力使いますし、バランスを崩す危険性もある。だから沿道からそういう情報を発信してあげたいんです。スタッフがいれば、手分けしてやったりするんですけど、世界陸上には私しか帯同していなかったので、ちょっとできなかったんです。

二宮: 山下監督は、ご自身がバルセロナオリンピックで走った時にはは聞こえたんですか?
山下: ちょっと記憶にないですね。というのも、舞台が大きくなればなるほど、沿道からの指示なんて聞こえないも同然なんです。ですから、最終的には指導者のアドバイスに頼るのではなく、自分になってくる。尾崎にもオリンピックではスタートしたら私からのアドバイスはないものと思いなさい、と言っているんです。

  打倒! 小出監督

二宮: 2000年シドニーオリンピックでは高橋尚子がサングラスを投げるのがラストスパートの合図でした。それを父親が拾うんですから、すごいですよね。でも、私はあの重要な場所に父親がいたのは偶然じゃなかったと思うんです。サングラスを拾ったのはたまたまだったとしても、あそこでスパートをかけるということがわかっていたと思うんですよ。
山下: 小出義雄監督の戦略として、前もって「こっからが本当の勝負です」というふうに伝えていたのかもしれませんね。

二宮: そこの気持ちが通じたってことでしょうね。当時、実力的には弘山晴美さんが勝ってもおかしくなかったと思うんです。二人の差は何だったかというと、金メダルへの執念ですよ。ですから、父親がサングラスを拾ったのは偶然ではなく、必然だったと思うんです。
山下: 小出監督は、同じ指導者として「ここまでするんだ」っていう驚きは常にありますね。

二宮: 有森裕子さんとボルダーに行った時には、太陽の位置を確認して、自分が太陽を背負うようにして有森さんに話をするようにしたんだそうです。後ろから太陽の光が射してくると、自分が神仏のように見えるからと(笑)。
山下: それはすごい話ですね。でも、私は逆なんです。私の話をちゃんと聞いてもらいたいので、選手が眩しくないようにしているんです。
尾崎: 確かに監督の方が眩しいと、話に集中できないですよね。

二宮: やり方は違っても、山下監督も太陽の位置まで気にしていんですから、やっぱりカリスマ性があるということですよ。マラソンって、屋外を42.195キロも走るわけですよね。そうすると、無意識に選手って自然に関心をもったり、感謝するものなんです。
山下: まさにそうだと思います。天候って人間にはどうしようもないことなんですけど、例えば「今日は外でこういう練習をしたいな」っていうときに、快晴で無風だったりすると、「ありがたいな」って思ったりするんです。

二宮: とにかく小出さんという人はサービス精神旺盛なんですよ。勝っても、何ともないと言った顔で「オレは何もやってない。選手がやってくれたんだ」ってわざとやるんですから(笑)。
山下: 同じ指導者としてみても、本当に面白いんですよ。

二宮: 小出監督の口癖ですが、マラソンはたかが駆けっこだって。でも、その「たかが駆けっこ」だから真剣なんだと。
山下: 死ぬって言われると考えちゃいますけど、私も陸上に人生はかけていますね。

二宮: 現在の日本女子マラソン界は小出さんなくしてはなかったでしょうね。今では指導者たちが「打倒小出」に燃えているから、どんどんいい選手が育っているんです。
山下: その通りだと思います。私も小出監督がお元気なうちに、駅伝でも何でもいいから小出監督から「さっちゃん、本当に参った」って言わせたいんですよね。

二宮: 尾崎選手がロンドンオリンピックで金メダルをとれば、小出監督も山下監督にライバル心を燃やしてくるのではないでしょうか(笑)。期待しています。
山下: そうなってくれたら嬉しいですね。
尾崎: 自分にとってもチャンスだと思っているので、頑張りたいと思います。

 注目されるとやる気が出る!

二宮: 尾崎さんにとって、陸上とは?
尾崎: 私にはそれしかないものだと思っています。

二宮: それほど大事なものだと。尾崎さんの名前が一躍有名になったのが、初優勝した昨年11月の東京国際女子マラソンです。あの時、前半から先頭をいく渋井陽子選手にだいぶ離されましたよね。最後、よく追いついたなと。
尾崎: スタートラインに立った時から、調子は悪くないなと思っていました。でも、10キロあたりから、どんどん離されてしまったんです。渋井さんの背中は全く見えませんでしたね。疲れているのもあったし、ついていけなかったんです。でも、途中で山下監督が「(自己)記録出るよ」と声をかけてくれたんです。それで「あぁ、やっぱり自分は決して悪い走りをしているわけではないんだ。これでいいんだ」って思えたんです。それが精神的に大きかったですね。結構ハイベースだったので、前から落ちてくればいいなと思っていたら、その通りになったんです。

二宮: よくマラソンは「30キロの壁」と言いますが、尾崎さんはどうですか?
尾崎: 私は「30キロの壁」を感じたことがないんです。東京国際でも最後の30キロはすごく元気でしたし。逆にあの時は10〜15キロが一番辛かったですね。

二宮: ご両親は陸上をやっていたんですか?
尾崎: いえ、それが二人とも陸上経験は全くないんです。姉も私も陸上なので、結構驚かれるんですけど……。

二宮: お姉さんの朱美さん(セカンドウィンドAC)も頑張っていますよね。11月のアテネクラシックマラソンでは2位に30秒以上もの差をつけて優勝しました。
尾崎: 姉は結果がどうというよりも、走ることが好きなので、レース自体を楽しんでいます。でも、私はどちらかというと勝負することが好きですね。意外と目立つことが嫌いじゃないですし、注目されればされるほどモチベーションが上がるんです。今はロンドン五輪が最大の目標。だからロンドンでメダルをとったら、すっぱりと引退するかもしれません。逆に、メダルがとれなかったら、またリオデジャネイロを目指すかもしれませんが(笑)。

(おわり)


尾崎好美(おざき・よしみ)プロフィール
1981年7月1日、神奈川県出身。中学時代はバスケットボールに所属していた。4つ上の姉・朱美(セカンドウィンドAC)の影響を受け、相洋高校で陸上を始めた。3年間の最高成績は3年時の県総体800メートル8位。2000年に第一生命に入社。08年3月の名古屋国際女子マラソンでは初マラソンながら2位に入り、同年11月の東京国際女子マラソンで初優勝に輝いた。今年8月のベルリン世界選手権で銀メダルを獲得し、低迷傾向にある日本女子マラソン界の期待の星として注目されている。






山下佐知子(やました・さちこ)プロフィール
1964年8月20日、鳥取県出身。鳥取大学卒業後、いったんは中学校教員に就くが、陸上への思いを断ち切れず、87年に京セラに入社。1991年の東京世界選手権で銀メダルを獲得。翌年のバルセロナ五輪では4位入賞を果たした。94年、第一生命に移籍し、選手兼コーチとなる。96年から監督に就任し、2002年には全日本実業団女子駅伝で女性監督としては初めてチームを優勝に導いた。



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(構成:斎藤寿子)
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