ボクシングのWBAスーパーフェザー級タイトルマッチが17日、さいたまスーパーアリーナコミュニティアリーナで行われ、王者の内山高志(ワタナベ)は同級13位の挑戦者アンヘル・グラナドス(ベネズエラ)を6R1分42秒TKOで下し、初防衛に成功した。内山は序盤から終始相手を圧倒。6Rに右フックがグラナドスのテンプルをとらえてダウンを奪い、試合を決めた。内山は1月に王座を獲得。地元・埼玉で行われた今回の凱旋試合で完勝し、故郷に錦を飾った。
(写真:きれいな顔で勝利を振り返る内山)
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 ベルトを守ったチャンピオンの顔には傷ひとつなかった。
「こんなに早く終わるとは思わなかった、もっと厳しい試合展開を予想していた」
 初防衛戦に迎えたのは、身長185センチと長身のベネズエラ人。内山より身長で12.7センチ、リーチは11.5センチも上回った。過去8敗(18勝)と打たれ弱さが弱点とはいえ、越えるには容易ではない“高い壁”だった。

 だが、王者の戦略は明確だった。
「長身なので右のストレートボディは当たりやすい。右に行ったら、(相手の体勢が)全部落ちてくる。そこで上を狙ってフェイントで入れる」
 立ち上がり、そのボディがローブロー気味に入り、試合が中断するアクシデントもあったが、構わず下から挑戦者のストマックを攻め上げた。

「打った時の拳の感触で、どのくらい入ったか分かる。嫌がっているなと思った」
 グラナドスがボディを警戒して、前傾姿勢をとったのも内山には吉と出た。身長差のハンデがなくなり、ジャブが相手の顔面をとらえた。「思ったよりジャブが当たった。後半、ダメージがたまって行けるなと思った」。勝利を確信したのは4Rだ。ボディでガードが下がったところへ、練習を重ねた遅れ気味の右クロスがヒットした。挑戦者の顔がゆがみ、動きが鈍くなる。上下両面からの攻撃に、もはやベネズエラ人はなす術がなかった。
(写真:「6Rに入ってもまったく疲れはなかった」。スタミナ面でも相手を上回った)

 決着の予感が会場内にも漂い始めた6R、その時はやってきた。内山が突き刺した左ストレートをグラナドスが嫌がって左によける。そこへ強烈な右フック。こめかみを打ち抜かれた185センチの壁が横倒しになった。「いいパンチが入った。効いているなと思った」。レフェリーがカウントを重ねる中、挑戦者はロープにもたれ、片ひざを付いたまま立ち上がれない。それを見たレフェリーが試合終了を告げた。

「思っていた通りの強いチャンピオン。内山は強いよ。しつこいけど(笑)」とジムの渡辺均会長も納得のKO劇だ。危ない場面は5Rに右のカウンターを浴びた1度だけ。懐に入りつつも、長い腕を振り回してくる相手と適度に距離をとる冷静さも持ち合わせていた。ただ、本人はさらなる高みを見据えている。
「パンチの精度や打ってからの動きには課題がある。今日も中に入って気を抜いたら、アッパーが頭に入った。アゴに入っていたら危なかった」

 次の防衛戦は夏以降の予定。暫定王者のホルヘ・ソリス(メキシコ)のほか、2階級制覇を果たした元王者ホルヘ・リナレス(帝拳)など、この階級には強豪がひしめく。
「僕には勝つしかない。これからも1戦1戦勝つだけ。まだまだ練習して強くなりたい」
 絶対王者の長谷川穂積(WBC世界バンタム級、真正)が王座陥落し、今の日本ボクシング界は33歳の西岡利晃(WBC世界スーパーバンタム級、帝拳)が名実ともに第一人者となった。亀田興毅(WBC世界フライ級)、名城信男(WBA世界スーパーフライ級、六島)と20代の王者が相次いでベルトを失う中での30歳・内山の防衛。20代が全盛といわれるボクシングのリングにおいて、30代の経験豊富なボクサーが牽引する新時代がやってきた。

(石田洋之)