大相撲夏場所は20日、千秋楽を迎え、西前頭7枚目の旭天鵬(友綱)が栃煌山(春日野)との史上初の平幕力士同士による優勝決定戦の末、12勝3敗で初優勝を果たした。モンゴル出身の旭天鵬は37歳8カ月で、入門から20年、121場所目で初の賜杯。これはいずれも現行の優勝制度が導入されて以降の最年長&スロー記録となった。また平幕優勝は2001年秋場所の琴光喜以来で、史上17人目(19度目)。2場所連続優勝を目指した横綱・白鵬(宮城野)は10勝5敗と振るわなかった。
3人が3敗で並び、3人が4敗で追う混戦模様の千秋楽は取組前から異例の事態となった。3敗の一角である栃煌山との割が組まれていた大関・琴欧洲(佐渡ヶ嶽)が右足を痛め、午前中に休場届を提出。栃煌山の不戦勝が決まり、4敗力士の優勝が消えた。
残る2人の3敗力士のうち、最初に土俵に上がったのは旭天鵬だ。関脇・豪栄道との一番は立ち合いで左下手を引かれ、正面の土俵際まで寄り立てられる。だが、ここで持ち前の懐の深さが生きた。回り込みながら右から半ば強引に投げを打つと、体が入れ替わり、豪栄道は勢い余って左足が土俵の外へ。蛇の目の砂が飛び、旭天鵬に軍配が上がった。
これで旭天鵬の優勝決定戦進出は確定。決定戦が1対1の勝負になるか、巴戦となるかは大関・稀勢の里(鳴戸)の結果に委ねられた。稀勢の里は大関・把瑠都(尾上)顔を合わせ。立ち合いから鋭くぶつかると、2メートル近い巨体を一気に土俵際まで押し込む。しかし、あと一押しができず、把瑠都につかまると右からの上手投げ。右足一本での粘りも及ばず、先に土俵下へ転落した。稀勢の里は4敗に後退し、優勝決定は旭天鵬と栃煌山の直接対決に持ち込まれた。
どちらが勝っても初優勝となる決定戦。栃煌山は本割をとっていない分、体力的に優位に立つ。一方で優勝のかかった大一番を先に経験した点は旭天鵬にプラスになる。注目の立ち合いを制したのは栃煌山だ。右を差し、一気に出た。ところが、緊張感からか足がついてこない。旭天鵬がタイミングよくはたくと、栃煌山は前のめりになり、バタリと倒れた。
旭天鵬は92年に大島部屋にやってきたモンゴル出身第1号力士だ。最初は角界の環境になじめず、他の来日力士とともに部屋を脱走したこともある。その後は徐々に力をつけ、98年に新入幕。彼の姿を追って多くのモンゴル人力士が入門し、一時代を築くきっかけとなった。まさに角界の歴史を変えたパイオニア。その名が遅ればせながら朝青龍や白鵬らモンゴルの後輩たちとともに賜杯に刻まれる。