21日、世界陸上選手権モスクワ大会に出場するマラソン代表選手が、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターでメディカルチェックを受け、その後会見を行った。女子は合宿などを理由に欠席した木良子(ダイハツ)、福士加代子(ワコール)を除く野口みずき(シスメックス)が、男子は川内優輝(埼玉県庁)、中本健太郎(安川電機)ら5名が世界陸上に向けて、それぞれが抱負などを語った。
「あきらめないで良かった」。アテネ五輪の金メダリスト・野口は、会見で笑顔を見せた。世界陸上は銀メダルを獲得したパリ大会以来、10年ぶりの出場だ。連覇を期待された北京五輪では、直前のケガにより、スタートラインに立つことすら叶わなかった。その後も故障続きで、なかなか第一線で結果を残すことができなかったが、「絶対に世界の舞台に戻ろうという気持ちは持ち続けていました」と諦めなかった。そして3月の名古屋ウィメンズマラソンでは、先頭集団を引っ張る積極的なレースを展開。優勝は木に譲ったが、3位に入り復活を印象付けた。

 メディカルチェックでは、北京五輪の時のカルテもあり、当時のものと比較した。北京では大腿四頭筋の左右のバランスが悪く肉離れを引き起こす前兆があったという。今回は検査結果は問題なく、データ上でも復活を確認できた。2008年の北京五輪ではディフェングチャンピオンという大きなプレッシャーを背負ったが、「今回は純粋な気持ちで走りたい」と、本音を口にした。それでも「ショックだったのは、身長が縮んていたこと」と、報道陣を笑わせる余裕も見せた。

 世界陸上での目標は「高速化が進んでいるマラソン界に負けないぐらいの走りをしたい。アフリカ勢に挑戦し、表彰台に上りたいです」と語った。日本記録保持者の34歳には、メダリストの自負がある。「アテネもパリも積極的な走りをして、メダルを獲ってきました。若い選手たちに“こういう走りをしたら世界と戦える”というのを見せたい」と、後輩たちへメッセージを体現することを誓った。

 男子は全5名が会見に出席した。“最強の市民ランナー”川内は。今後のスケジュールは今月はハーフマラソンに出場し、スピード強化を図る。6月は距離を延ばし、フルマラソンや50キロ走で長い距離での“練習”を積むという。

 世界陸上は前回の大邱大会が初出場(18位)。2回目の大舞台に、川内は「前回の経験をいかし、前回以上の結果は間違いなく出したい。何とか6位入賞という目標に向かって、ベストな状態でスタートラインに立てるように頑張りたいです」と抱負を語った。レースに出場することがトレーニングという“川内式練習法”。国内外問わずレースを転戦している。特に海外のレースでアフリカ勢と対戦を踏んでいることは大きい。本人も「並走した時に、その経験を生かせるかなと思っています」と自信をのぞかせた。

 ロンドン五輪6位の中本は、五輪と世界陸上合わせて3度目の挑戦。「昨年の結果が今年問われる。入賞に恥じないような結果を残したいです」と述べ、「(日本代表)5人の中で自分が一番、ベストタイムが遅い。他の4人にも負けたくない気持ちがあります。日本人トップを目指して頑張りたい」と、ライバル心もうかがわせた。

 川内、中本ら男子マラソン代表は検査前の昼食会で親睦を深めた様子。5人全員が目標を「入賞」と口をそろえた。川内をのぞく4人が明日からモスクワへ現地視察をする予定だ。それぞれの挑戦、それぞれのリベンジ向かって、チームジャパンが世界と戦う。

(杉浦泰介)