二宮: サッカー日本代表で監督がイビチャ・オシムから岡田武史に代わった。以前、金子君は岡田さんへの批判の急先鋒だったけれど、今はどう?
金子: 今は考えが変わりましたね。9年前と今の岡田さんは違う。あの時、岡田さんは監督経験がなかったし、日本もW杯に出場したことがなかった。その状況で、いくら将来的に有望だったとはいえ、大企業の社長に昨日まで係長だった人を抜擢してはいけないだろうと僕は反対したんです。今では岡田さんはもちろんのこと、日本サッカー界自体も経験を積んだ。状況が変わりましたよ。
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二宮: 今では大企業の社長にふさわしい経験を積んだと。
金子: それに、あの頃に比べて、監督がやらなければならない仕事は遥かに少なくなっている。しかもW杯の本大会が近いわけでもない。今の岡田さんであれば、大丈夫だと思いますけどね。

二宮: フィリップ・トルシエにしても、ジーコにしてもW杯まで4年間の任期を全うしてきた。今回、オシムさんが倒れたことで日本代表は急な方向転換を強いられた。これは今までになかったことだね。
金子: 僕は、今の時期に代表監督が代わることがあっていいと思うんですよ。トルシエの時から代表監督は4年任せなければいけないという不文律のようなものがあるでしょう。成績がふるわなくて監督を交代させようという動きが出てくると、「今からでは間に合わない」という声が上がる。韓国代表の監督なんてアジア杯2007から4ヶ月も空白だった。韓国は、日韓W杯の時にフース・ヒディンクが就任わずか1年でW杯ベスト4まで導くという甘い汁を吸ったため、短期間でもチームはつくれると思っているフシがある。そういう風に考えるのもおかしな話だけれど、日本のように絶対に4年間任せなきゃいけないという考えも受け入れがたい。

二宮: 確かに、今の日本には代表監督は4年間務めて当たり前みたいな雰囲気がある。これを不文律にしてはいけない。仮に優秀な監督であったとしても……。
金子: とりあえず次のW杯までは任せてあげようという日本人の優しさでしょうね。今回、岡田さんが結果を出したら、「何だ、2年で大丈夫じゃないか」と変わると思いますよ。

二宮: 98年のフランス大会予選で加茂周監督が更迭された時、「(監督交代は)今からでは遅いよ」と言う人がいた。今回も、岡田さんが監督になって「たった2年で大丈夫なのか」という雰囲気があるよね。その考えが僕にはどうもわからない。要するに与えられた時間の中でミッションを果たすのが監督の仕事でしょう。無理だと判断したら受けなければいい。ただ厳しい状況下で結果を出したらボーナスがもらえるとか。こういうインセンティヴがあってもいいんじゃないかな。要するに「今からでは遅い」という言葉は選択肢を逆に狭めている。
金子: 全く根拠がありませんよね。

<岡田監督は勝負師タイプ?>

二宮: 僕の考えでは、サッカーの監督は勝負師と教育者に分かれる。ハンス・オフトは教育者ですよ。オシムもどちらかと言えば教育者だった。彼らは日本代表を成長させてくれた。若手の育成などには適した指導者ですよ。でも、その一方で、W杯など絶対に勝たなければいけない大会は、ヒディンクのような勝負師タイプが適している。教育者には、ここまでチームをつくってくれてありがとうございました。でも、W杯は勝負師に任せますよとなってもいい。役割が違うわけだからね。もっとも勝負師としてのオシムを見たかったという心残りはある。
金子: それに当てはめれば、ジーコもまた教育者でしたよね。僕は、サッカーにおける教育者というのは、いいチームを作りたい、いいサッカーをしたいと考えている監督と捉えているんですね。一方、勝負師タイプはどんなサッカーをしてもいいから結果を追い求める。例えば、ヒディンクは、いいチームをつくろうなんて全く考えてないですよ。勝とう、そのために相手の長所を潰そうと。岡田さんはまさにそういうタイプの監督ですよ。内容よりも結果にこだわる人だと思う。こういう人が日本の代表監督を務めるのは面白いですよ。

二宮: 日本はスポーツを教育としてとらえてきた。だから、今でもこの国は教育者型の指揮官を好む傾向にある。ヤマっけのある勝負師を受け入れるだけの度量があるかどうか。
金子: 確かに博打打ちのようなタイプは少ないですよね。ただ、世界が大人だとすれば、日本のサッカーは実質、まだ中学生になったくらいだと思います。これから色々と経験していって、学んでいくんじゃないですかね。

二宮: いい方向に変わってくれればいいんだけどね。岡田さんは、まずは守備ありきで組織的なチームをつくるんじゃないかな。
金子: 岡田さんの根本にあるのは、点を獲られないサッカーですからね。苦しいシチュエーションに追い込まれれば追い込まれるほど、そういうサッカーを前面に押し出していくと思いますよ。だから、爆発力は期待できない。オシム監督の時もジーコ監督の時も、時々、目の覚めるような美しいサッカーをする試合があったんです。それは、いいサッカーを志向してきたがゆえのご褒美のようなものだった。でも、それは岡田さんになってからは見られないでしょうね。

二宮: そうだろうね。あと、岡田さんとオシム前監督のサッカーは根本的に違うと思うけれど、オシム時代のベースをうまく生かしてほしい。ヒディンクは韓国の監督に就任した時、「韓国はスタミナがあるけれど、それだけでは駄目だ。変わっていかなければいけない」という声に対して「いい部分を伸ばせばいいじゃないか。スタミナがあるんだったら、そこを伸ばせ」と言ったという。長所があれば、素直に伸ばせばいい。何もすべてを変える必要はない。リアリストの岡田さんは、きっとそうするでしょうね。合理的な考え方をする人だから。
金子: ヒディングもリアリストですよね。持っている材料で最高の料理をつくる。岡田さんもそのあたりはうまくやるんじゃないでしょうか。

二宮: 岡田さんは一度、代表監督としてW杯を経験しているし、Jリーグで優勝経験もある。勝負強い指揮官ですよ。ただね、とりあえず契約は3次予選終了時まででいいんじゃないかと。3次予選の中身を見て、延長するかを決める。絶対に南アフリカW杯まで任せようと考える必要はないと思う。
金子: それはそうですね。ただ、現実を見た場合、今回の3次予選は対戦相手に恵まれたわけですよ。加えて、2位までに入ればグループを突破できる。最終予選進出の可能性はかなり高い。それでいて、予選を突破したのにクビを切るというのもおかしな話ですよ。よほど内容が悪くない限りはね。

二宮: 確かに日本は比較的楽なグループに入ったね。豪州なんて大変だよ。アジア杯2007優勝のイラクに、W杯出場経験のある中国……。
金子: あれは厳しいですよね。僕は、韓国と北朝鮮が同じグループに入ったことに一番驚きましたけどね。

二宮: あれもすごいよね。平壌での韓国対北朝鮮なんて想像しただけでも恐ろしい(笑)。
金子: そう思いますよね。僕は今まで2度行こうとしたんですが、2度とも北朝鮮のミサイル発射が理由で入国できなかった(笑)。今度は是非行きたい。きっと痺れる試合になると思いますよ。

(後編に続く)

金子達仁(かねこ・たつひと)<スポーツライター>
1966年1月26日神奈川県横浜市出身。法政大学卒業後、テニス雑誌とサッカー専門誌の編集者を経て、95年にフリーとしてスペイン・バルセロナに移住。96年、アトランタ五輪サッカー日本代表をテーマにした「叫び」「断層」が「Sports Graphic Number」に掲載され、「ミズノ・スポーツライター賞」を受賞した。主な著書に『28年目のハーフタイム』(文藝春秋社)『決戦前夜Road to France』(新潮社)『惨敗 2002年への序曲』(幻冬舎)『泣き虫』(幻冬舎)などがある。



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