1年後に迫ったリオデジャネイロパラリンピック。車椅子バスケットボール男子日本代表は、第2回大会からの11大会連続出場を目指す。今年10月には千葉で「三菱電機2015IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」(三菱電機アジアオセアニア選手権)が行われ、上位3カ国・地域までがリオへの切符を掴む。2013年、男子代表のヘッドコーチ(HC)に及川晋平が就任した。及川HC就任後、バスケットボール界のトレンドも取り入れつつ、緻密な戦略を練ってきた。クレバーな指揮官が思い描くリオまでのストーリーを訊いた。
伊藤: ヘッドコーチ(HC)に就任して、2年が経ちました。チームとして意識していることはあるのでしょうか?

及川: 戦略的な要素を積極的に取り入れることは、今の日本代表の一番の特徴にしていますね。例えば、今年bjリーグで優勝した浜松・東三河フェニックスの東野智弥HCには我々の戦略コーチになってもらっているんです。これまでの2年、毎月のように僕が愛知に行き、東野さんとビデオを見ながら、計画を立ててきました。一緒に遠征に行くなどして、戦略的な部分をつめていっています。僕がbjリーグの試合を見に行って、東野さんと話し合うこともある。今のバスケットボールのトレンドを、いかに車椅子バスケに落とし込めるかをずっとやってきた。それが今、確実に力となっている気はしています。

二宮: 浜松・東三河と秋田ノーザンハピネッツのbjリーグファイナルを見ていても、浜松は非常にシステマティックな動きでした。そのチームマネジメント術を参考にするわけですね。

及川: ええ。やはり選手のエネルギーをどうやってマネージしていくかも大事になってきます。バスケは選手交代をいくらでもできるので、いかに選手のエネルギーをいいところで使えるかがカギです。メンバーチェンジ以外にもタイムアウトを駆使するなど戦略的にどう組み立てていくか。いかに起承転結を4つのクオーターでつけられるかを、東野さんとはいろいろとディスカッションしてきましたので、その点の相互理解もだいぶ深まりましたね。

持ち点を計算し、どのようなオーダーを組むかも指揮官の腕の見せ所である二宮:車いすバスケは選手の障がいに応じてポイントが決まっていますよね。コートに立てる選手たちのポイントの合計には上限(※)があり、それを計算してオーダーを組まなければならない。バスケとは違う苦労があるでしょう?

※障がいの程度により、1.0点から4.5点まで8段階でクラス分けされる。コート上の5人の合計が14.0点以内でなければならない。

及川: そうですね。そこがまさに僕の仕事です。バスケットボールから得られるコンセプトとか、やり方を車椅子バスケに変換して、使えるようにしていく。その点を非常に細かくやっていますね。やはり1個のボールを5人で扱い、シュートをゴールに入れるという基本は、車椅子でも、健常者でもゲーム自体は変わらないです。ルールに則って、勝つための策を練るのは同じ。それを車椅子バスケにどう反映させられるかが一番のポイントになってくると思います。

伊藤: メンバー構成においては「ユニット」(5人の組み合わせ)を組み立てていくとお聞きしました。

及川: 持ち点がある以上は、“この選手を出すには、この選手も出さないといけない”といったように自然とグループになってくるんですね。そのグループでチーム(ユニット)を作り上げ、完成度を高めていく方が合理的です。だから1人ずつ替えるよりは、“チームAの次はチームBでいく”というふうにすればいい。それぞれ、リーダーや戦術も違ってきますので、チーム(ユニット)ごとに交代したほうが選手たちにとってクリアーだし、チームビルディングもしやすいんです。

二宮: そのチーム(ユニット)ごとに、お互いのやるべきことを理解し合っているんでしょうね。その方が、ミスも少なくなるはず。及川HCの狙いとしては、完成度を高める作業をさらに充実させていきたいと。

及川: 僕はそこに戦略的な緻密さをチームに盛り込んでいきたい。将来、世界に向かって戦う上での売りにしたいなと思っています。

このつづきは>>「挑戦者たち」〜二宮清純の視点〜 でお楽しみください!
◎バックナンバーはこちらから