セレッソ女子(通称セレ女)。昨シーズン頃から増加してきているセレッソ大阪の女性サポーターを表した言葉だ。今季はディエゴ・フォルランの加入に伴い、観戦に訪れる親子連れも多くみられ、ホーム戦のみならず、アウェー戦でもチケットが完売するなど、C大阪戦の来場者が増加した。これらはセレッソ現象といわれる。セレッソ現象の仕組みを解き明かそうと、Jリーグ事業部マーケティング戦略チームは立命館大学スポーツ健康科学部の協力を仰ぎながら「増えたセレッソファンはどういう層か?」「ファン化と、固定化のトリガーは何か?」というテーマを軸に同現象を分析。3日、現時点での分析結果をメディアに報告した。
 分析ではまず「いつからセレッソに関心を持ったか」というアンケート(マクロミル調査)でC大阪のファン層を調べた。そこで、観客数が増えた昨年とそれ以前とで分別すると、ある事実がわかった。2013年からC大阪に関心を持ったという人の割合が全体の27パーセントを占めたのだ。会員数を見てみても、2013年4月末時点の会員総数は1万4992人であったのに対し、今年6月始めには2万8196人に倍増。なかでも女性会員が占める比率は35パーセントから40パーセントに増えた。また女性会員は関西圏のみならず、全国的な広がりを見せており、関東甲信越には10%のファンが存在。これが関東アウェーゲームでの観客数増加に大きく寄与している。

 C大阪ファンが急造した背景には2つの要因があると見られている。ひとつは「若くカッコいい代表選手」のマスメディアへの露出増加である。これにより女性がC大阪ファンになる「きっかけ」「ファン化」「固着化」「来場へ」の流れが生まれやすくなった。C大阪の女性ファンがチームに関心を持ったきっかけは、圧倒的に「選手」だった。柿谷曜一朗(現バーゼル)のブレイク、山口蛍、扇原貴宏、杉本健勇といったロンドン五輪組など、C大阪には20代前半以下の有望な選手が多い。またサッカーの戦術やプレーのみならず、選手の容姿がファン化へのきっかけとなるのは女性ファンの特徴といえる。

 さらに女性ファンの特徴として挙げられるのは、選手の情報を簡易投稿サイト「twitter」やSNSを通して入手する点だ。twitterでは気になる選手のアカウントをフォローすれば、別の選手とのやり取りを垣間見ることができる。選手間のやり取りを見るうちに、お気に入りの選手にたいしての親近感が育まれ、かつ関係のある選手にも関心を抱く。このような流れが20代から40代のセレ女には顕著に見られた。

 そしてC大阪の選手が練習する大阪・舞洲グラウンドには、多くのファンが詰め掛ける。ここでのファンサービスの充実が、ファンから好評を得ているという。練習後には選手が1時間半から2時間近くかけてサインや写真撮影などのファンサービスを行うのだ。Jリーグ事業部マーケティング戦略チームの担当者によれば、練習前後に見せる選手同士の和気あいあいとした様子も、女性ファンの心をつかんだ一因であると分析した。ファンがその模様をtwitterやSNSに投稿し、それを見たファンが舞洲に行くというサイクルができあがっていた模様だ。また試合会場で既存サポーターがセレ女へ肯定的態度を示していることも、彼女たちがスタジアムへ行きやすい環境をつくるのに一役買っている。

 C大阪ファン増加のもうひとつの大きな要因は「フォルラン加入での期待感」である。昨季のC大阪はリーグ4位に食い込み、ACL出場権を獲得(※リーグ2位の横浜FMが天皇杯を制したために繰り上がり)するなど、上々の成績を残した。さらなる飛躍を遂げるべく今年を迎えた。そこに、南アフリカW杯得点王&MVPのウルグアイ代表ディエゴ・フォルラン加入が決定した。フォルラン移籍のニュースは連日、メディアで取り上げられ、それに伴ってC大阪の認知度も大きく上昇したのは言うまでもない。大物選手の加入によって、タイトル獲得への期待も高まった。

 意外にもフォルランのことは、C大阪加入まで全く知らなかった、もしくは名前を聞いたことがある程度(C大阪ファンアンケート)のファンが40.6パーセントだったという。それでもフォルランの加入がきっかけでC大阪に関心を持ったというファンは多い。フォルラン加入によって新たなファンになったと考えられる層は、全体の5パーセントに及ぶ。報告書によれば、小中学生、離脱層に対しての興味喚起効果があったと見られる。フォルランという世界的ネームバリューとそれに付随した報道が、サッカー関心層に幅広く影響を与えたのだ。

 C大阪はセレッソ現象によって急激にファンの数を増加させることに成功した。しかし、柿谷が今夏にチームを去り、チームも残留争いを強いられる中で、セレッソ現象に陰りが見えて始めていることも事実である。W杯によるリーグ中断前までのホーム戦6試合の平均観客数は2万5034人。だが、リーグ再開後のホーム戦8試合のそれは2万60人にまで減少した。W杯前まで盛り上がっていたにわかファンが去っていったとの向きもあるが、そのにわかファンを固着化させていかなければならない。新規ファン獲得と固着化を併行して進めていく二の手、三の手こそが、クラブには求められている。他クラブも“第二のセレッソ現象”を起こそうと目論んでいることだろう。だが、大事なのはセレッソ現象を起こすことではない。現象を起こした後に継続、発展させていくことだ。

(文・鈴木友多)