二宮: いよいよプロ野球が開幕しましたね。今シーズンはどんな展開になるのか、西本さんにじっくりとお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 まずはパ・リーグですが、昨季始めて最下位を脱した東北楽天が一時は7連勝するなど、今季も勢いを感じます。ただ、先発ローテーション入りが確実だった新人の長谷部康平がケガで出遅れたのは痛いですね。
西本: キャンプで長谷部を見た時、「これは2ケタは勝つな」と思いましたよ。だから、そのまま彼が順調にいっていたら、僕はひょっとしたら今季の楽天はAクラス入りの可能性もあるんじゃないかと感じていたんです。
<提供:アサヒビール株式会社>
二宮: 高い評価をされていたんですね。長谷部のよさとはどんな部分ですか?
西本: 日本代表に選ばれるだけあって、ピッチングが安定していました。コントロールもそう悪くないから、四球で自滅することもないでしょうし、“ゲームをつくれる”ピッチャーだなと。ボールも真っすぐにキレがありました。フリーバッティングで真っすぐのみを投げても、結構詰まらせていましたからね。
それと、フォームが独特で、ボールの出所が全く見えない。杉内俊哉や和田毅(ともに福岡ソフトバンク)のように、バッターとしたらタイミングがとりづらいでしょうね。

二宮: 楽天には「マー君」こと田中将大がいますし、エースの岩隈久志も復活した。そこに長谷部が加われば……。
西本: そう思って期待していたんですけど、「半月板損傷」というニュースを聞いて、これで楽天は今季もBクラスかなと。

二宮: 長谷部の手術回避の選択には賛否両論ありますが。
西本: 僕は長い目で見て、手術した方がいいと思いますね。本人とすれば、1年目だし頑張りたいという気持ちもあるのでしょうが、中途半端が一番よくない。左ひざをかばうことによって腰を痛めたり、フォームが悪くなったりと、いろいろとマイナス面も出てきますからね。

二宮: 一場靖弘は4年目になりますが、いつまでたってもパッとしませんね。
西本: 能力的にはいいものを持っているんですけどね。あの投げ方じゃ、コントロールが全くつきませんからダメですよ。

二宮: フォーム上の問題ですか?
西本: そうです。ストライクゾーンに投げるリリースポイントというのはだいたい決まっています。それがずれるとストライクゾーンにいかなくなる。一場は軸がぶれてリリースポイントが一定じゃないから、ストライクが入らないんです。

二宮: 軸がぶれるというのは?
西本: (右投手の場合)体重を右足にしっかり乗せて、次に右足に少し残しながら左足に体重移動させるんですけど、その時に開きが早くなって力任せに投げてしまうんです。要は下半身の使い方が全くできていないんです。

二宮: それは意識的に練習すれば修正できるものではないでしょうか。本人に危機感が足りないのかもしれませんね。
西本: 危機感はあると思いますよ。本人も勝ちたいという思いで一生懸命やってるんだろうけど、どうしていいかわからないというのが正直なところなんでしょう。そこはコーチがしっかりと指導していくべきでしょうね。

 オリックスが台風の目に

二宮: さて、パ・リーグの大本命に福岡ソフトバンクを本命にもってきているっていうのは、ピッチャー陣がいいからですか?
西本: というよりも、個人的に王(貞治)監督が今年最後だという噂を聞いているので、ぜひ優勝して有終の美を飾ってもらいたいなと思いまして。もちろん、実力的にもバランスのとれたチームですから、優勝の可能性は十分にあると思います。
特に大場翔太が入ったのは大きいですね。大学No.1というだけあって、キャンプでもいいピッチングをしていましたよ。また、2年目の大隣憲司も調子がいいですから、斉藤和巳が未だ復帰の目途がたっていませんが、投手陣の戦力は昨季より層があつくなっているのではと感じています。

二宮: 大場は西本さんから見てどこがいいですか?
西本: やっぱり腕の振りですね。腕が思いっきり振れているから、たとえ甘いところにボールがいっても、勢いで詰まったりするんです。そこがまずは魅力ですよね。それとスライダーのキレもいい。腕の振りが速い分だけ、バウンドするようなボールでも振らせることができるんです。

二宮: 逆に課題をあげるとしたら?
西本: 少し負担のかかる投げ方をしているので、肩やヒジにこないか心配ですね。今まで肩やヒジがはったことがないようですが、実際プロで1年間やってみて、どうなのか。
彼は伊良部秀輝や野茂英雄みたいな上からかぶせてくる投げ方をします。僕としてはあまりいい腕の使い方をしているとは思えないんですけど、それをカバーするだけの背筋の強さがあるんです。

二宮: その大場に影響されたという大隣はどこがよくなったんでしょうか?
西本: 腰を痛めて出遅れた昨季は、四球で自滅していましたが、今年見た限りではその辺がきちんと修正されています。ちょっと力を入れると、体の開きが早くなって抜けるボールがあることはあるんですけどね。でも、力の配分のコツがわかってきたようで、四球で自滅しなくなりました。今季は2ケタいく可能性は十分にあると思いますよ。

二宮: 前評判はあまりよくなかった西武、オリックスですが、善戦していますね。
西本: 特にオリックスは打線はいいですねぇ。

二宮: ラロッカ、ローズ、カブレラが並んだ打線は怖いですよね。
西本: ピッチャーのコマ不足は否めないものの、たとえ3点取られても打線が5点取ってくれると思えば、ピッチャーとしては楽に投げることができる。だから、3人のスラッガーがピッチャーに与えるものは大きいと思いますよ。自分たちの展開にもっていければ、台風の目になる可能性は十分にあると思います。

二宮: 清原和博がいなくても十分戦っていけると。
西本: もちろん、清原の状態がよくなって活躍すればそれに越したことはありませんが、“清原”という名前だけで使う必要は全くありませんよ。

二宮: 埼玉西武もなんとなく目処がたってきましたね。
西本: 西武はカブレラが抜けたのは大きいと思いますが、開幕戦では最終回でランナーが出た場面で初球からスチールをかけるなど、渡辺久信監督に代わって細かい野球をやってくるようになっています。ピッチャー出身の監督は野手出身の監督よりも攻撃的な野球をするものですから、楽しみです。

二宮: それは意外ですね。
西本: 野手出身の監督ってピッチャー交代が早いじゃないですか(笑)。不安なんですよ。現役時代にいつもピッチャーの後ろで「いつ打たれるかな」って心配しながら守っていたわけですから。

 梨田野球は浸透するのか!?

二宮: 昨季は日本ハムがリーグ2連覇を果たしましたが、ホームランは12球団最低の73本でした。珍しいケースだと思いますが、今季もピッチャーが中心ということになるんでしょうか?
西本: ピッチャーとあとは1点を取りにいく野球ですよね。ワンチャンスをものにして2連覇達成したわけですから、チームとしても自信をもっていると思いますよ。

二宮: 今季は指揮官が梨田昌孝監督に代わりました。梨田監督というと、“いてまえ打線”というイメージがあるのですが……。
西本: 梨田監督は、“いてまえ打線”を率いた近鉄時代は、それほど細かい采配をしていなかったと思います。その梨田監督が機動力で勝ってきた日本ハムの指揮官になって、どういう戦い方をしていくのかがポイントとなることは間違いないでしょう。
既に、これまでの日本ハムとは明らかに違う野球だなと感じることもあります。例えば3月26日の西武戦、初回に森本稀哲が四球で出た場面で、次の田中賢介がエンドランをかけたんです。結局、森本は盗塁を失敗しチャンスを広げることができなかった。昨年までの日本ハムだったら、絶対に送りバントでした。こうした梨田監督の采配を選手が受け入れられるのかどうか……。

二宮: 今季も好調なダルビッシュは今や日本のエースに成長しました。
西本: 実は彼には心配な部分があるんです。今は若さでいってますけど、あと2、3年後に肩やヒジが大丈夫かなと。

二宮: 負担のかかる投げ方なんですか?
西本: バランスが悪いですからね。昨年12月の北京五輪予選でもそうでしたが、抜けるボールが多いんです。確かに150キロは出るし、いいボールもあります。でも、指先にひっかからないケースが結構あるんですよ。だから、逆球になってしまう。今はそれでもボールに勢いがあるからバッターは振ってくれるんですけどね。
 松坂大輔が入ったときも、みんな「素晴しいピッチャーだ」って言ってましたけど、最初見た時に結構無理な投げ方をしているなと感じました。早くて3年、遅くて4年でヒジにくるだろうと言っていたら、4年目にヒジにきましたよね。ダルビッシュも今は若いから回復も早いでしょうが、疲労の蓄積って怖いですからね。

二宮: なるほど。じゃあ、来年あたり危ないですね。
西本: 楽しみなのは東京ヤクルトから移籍した藤井秀悟です。彼はヤクルト時代から踏み込んだ時に右ヒザが突っ張りすぎて、ブレーキがかかってしまうクセがありました。そうすると、体重が前に乗らずに手投げになってしまうんです。キャンプで会った際に「もっと右ヒザにゆとりを持たないと」という話をしました。その時にはできていましたが、今後はどうでしょうか。右ヒザの使い方をマスターすれば、勝ち星も伸びてくると思います。そうなれば、日本ハムにとっては大きいでしょうね。

二宮: 3年ぶりの優勝を狙う千葉ロッテはどうでしょうか?
西本: やっぱりYFK(薮田安彦、藤田宗一、小林雅英)が抜けたというのは大きいでしょうね。後ろが抜けるというのが、チームにとっては一番嫌なものなんですよ。詰めの部分ですから。詰めが甘くなって勝ちゲームを落としてしまうと連勝は生まれてきません。逆に連敗が始まってしまうんです。その差はすごく大きいですよ。

二宮: 優勝争いとは別に、日本ハムの中田翔がいつ1軍に上がってくるのかにも注目が置かれています。西本さんから見て、中田はどうですか?
西本: まずは体を絞ってプロとしてやっていける体づくりをしなければいけません。期待をしているのならなおさら、特別扱いせずに厳しい指導をしていくべきでしょう。
 
二宮: 中田はインコースを苦手としていますよね。
西本: 高校時代、大阪の予選を見た時から内が打てないなとわかっていました。それでも金属バットだったから、多少詰まっても遅れても力でもっていけた。それで高校通算本塁打記録を塗り変えてしまったんですから。でも、プロではそうはいきません。フォームやタイミングの取り方をしっかりと教えていかなければダメだと思いますよ。当たれば飛ぶんですから、あとはいかにバットの芯に当てられるようになるかでしょうね。

(後編につづく)

<西本聖(にしもと・たかし)プロフィール>
1956年6月27日、愛媛県松山市出身。75年、松山商からドラフト外で巨人に入団し、3年目の77年には8勝を挙げて1軍に定着。80年から85年まで6年連続で2ケタ勝利を挙げるなど、江川卓とともにエースとしてチームを支えた。日本一を達成した81年には18勝を挙げ、沢村賞を受賞。日本シリーズでは2度の完投勝利(うち1度は完封)を挙げ、MVPに輝いた。88年、トレードで中日に移籍し、翌年20勝を挙げて最多勝を獲得。92年にオリックスへ移籍、94年には巨人へ復帰するも1軍のマウンドを踏むことなく同年オフに現役を引退した。通算165勝128敗17セーブ、防御率3.20。2003年、阪神の投手コーチを務め、リーグ優勝に貢献。現在は主に野球解説者として活躍している。


★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
 日本のウイスキーの父・竹鶴政孝。今から90年も前に単身スコットランドに渡り、日本人として初めて本格ウイスキーづくりを体得した男。竹鶴という名こそ、日本のウイスキーの原点なのです。
▼詳細は画像をクリック!


・竹鶴17年ピュアモルト
容量:700ml
アルコール度数:43度
 円熟した旨みと沸き立つ香りのモルトを厳選。まろやかな口当たりと爽やかな余韻が特徴です。









提供/アサヒビール株式会社
  商品のご注文はこちらからも可能です>>>

<対談協力>
うすけぼー 南青山店
東京都港区南青山 5-4-31
ニッカウヰスキー本社ビル B1
TEL:03-3486-9200/9201 FAX:03-3400-0011
>>HPはこちら
◎バックナンバーはこちらから