二宮: 中西さんは7月から日本サッカー協会の特任理事になられました。テレビなどの仕事との両立が大変でしょう。
中西: 北澤豪さんや僕のような若い世代から理事が選ばれるのはありがたいことです。僕の仕事はメディアのなかで感じていることを伝えること。サッカー界は表面的にはうまくいってるように見えますけど、近い将来、厳しい状況になるという思いが強い。その危機感を協会に早めに伝えられればいいと思っています。
二宮: 危機感を抱いている理由は?
中西: 現在、日本代表の試合はある程度視聴率を取っていますが、Jリーグ中継は残念ながら10%取れるようなコンテンツではない。この状況をどうするかを考えないといけない。今はサッカー選手の露出が少なく、地上波のテレビ番組でほとんど見かけません。
オリンピックのある時はオリンピック代表の顔が出てくるけれども、その選手たちもテレビの前の人に、刷り込めるくらい露出しているわけではないですよね。選手の顔と名前が一致するっていうことがないんです。そうすると試合を観にいこうという新しいファン層を開拓するのは非常に難しいと思います。
二宮: 1993年にJリーグが開幕したときはみんな目立とうとしてた。今はそういう姿勢が見えなくなった。それだけサッカーが根付いた証拠とも言えますが、プロである以上、もっとファンサービスには積極的であらねばならない。
中西: もっと露出していいし、するべきだと思うんです。その辺りの価値観が違うんです。選手は露出することが面倒だという感じですし、チームや選手の調子が良くないときは、監督たちも選手が出ていくことを快く思っていないようです。
二宮: 古い話ですが、カズがブラジルから帰ってきたときなんて、インタビューを謝礼なしで受けてくれましたよ。「出してもらうだけでありがたい」って。ところがJリーグも誕生して15年がたつと、様変わりしてしまった。カズやゴンのようなベテラン選手の方がプロ精神が旺盛ですね。
中西: 取材して頂いているのに、取材させてやってるという感じになっているように感じます。フットボールが成熟して文化になっている国なら別ですが、まだプロリーグができて10数年の国で、しかも視聴率が10%も取れていない状況です。取材していただくことはありがたいこと。宣伝して頂いているわけなんですから。
二宮: 昔の巨人は「取材なんか受けるか」って態度だったけど、最近は随分軟化してきた。こちらとしては助かるけど、もっと前から協力的であって欲しかったですね。
中西: こういったことを選手たちや日本サッカー協会、Jリーグにも発信していきたいと考えています。本当に悲しいことなんですが、僕が現役選手と一緒にサインする機会があると、僕の方にファンが並んでしまうんです。僕はそんなこと望んでいない。有名になりたいわけではない。選手やサッカーのすばらしさを伝えて、サッカーが大きくなって、日本がW杯で優勝するのを見たいだけなんです。
そのためには取材も全部受けますし、テレビにも出て行く。そうすると僕の方が選手より露出度が高いからファンに顔を覚えられているというわけです。これでは本末転倒ですよね。サッカー界としてはメディアをうまく使って選手の価値を高めて、Jリーグというコンテンツ自体の価値もあげていかなければいけない。これはここ何年か僕が日本サッカーに抱えているジレンマです。
韓国と戦いたかったW杯最終予選
二宮: さて、9月にはW杯の最終予選がスタートします。日本はオーストラリア、バーレーン、ウズベキスタン、カタールと対戦することになりました。組み合わせからみると、楽な組に入ったなという印象があります。
中西: 日本と反対のB組は厳しいです。5カ国全部がW杯出場経験がある国ですから。A組には日本とオーストラリアだけ。確かに簡単ではありませんが、B組よりは明らかにいい組み合わせですね。
二宮: 日本もW杯に出場するまではドーハの悲劇など苦難の歴史がありました。本大会に出ている国と出ていない国の経験の差は大きいです。
中西: 最後の苦しみを知っている強さがありますからね。しかし、僕としては韓国と同じ組になってほしかったです。やはり予選でチームを強くしていくことがW杯の本大会で実力を出すために大事です。韓国という強いライバルと同じ組にいたら大変なのはわかるんですが、彼らと真剣勝負をすることによって、切磋琢磨できる部分があります。
二宮: 順当に日本が勝ち進めば、今回の予選では韓国と対戦せずにW杯に出場します。
中西: テストマッチでもいいので日韓戦をやってほしい。W杯の最終予選の前にぜひ組んでほしかったです。
二宮: 同じ組のオーストラリアとはアジアのライバルという雰囲気はない。
中西: 感情以上のものが入る相手ではないですよね。本当の因縁というものもないですし。その意味では日本―韓国、日本―北朝鮮っていう試合がないのは残念です。たしかにW杯本戦に出るのが一番大事ですから、そんなことも言ってられませんけど(笑)。
二宮: 韓国、北朝鮮との対戦があったほうが、鍛えられて良かったと?
中西: 本戦出場が叶わなかったらどれだけ大変かと考えると、マイナスも大きいんですが、やっぱりW杯予選でチームが成長しないとW杯でのベスト8進出は難しいと思いますからね。
勝つことより負けないこと二宮: 今回の予選はグループ2位まで入ったら問題ないのですが、大切なのは初戦の入り方ですよね。負けたら大ピンチ。
中西: 初戦は(対バーレーンの)アウェーなんで引き分けでもしょうがないです。しかし仮に負けたら……。サッカーの試合というのは絶対勝たなければいけない試合で勝ち点3を取ることが一番難しいんですよ。前回のW杯予選の北朝鮮戦のときもそうでしたけど、これほど難しい試合はない。例えば天皇杯でもJリーグクラブが大学生、JFLとやる時はすごくやりづらい。実力差があっても難しいのですから、実力が同じくらいの相手ならなおさら難しい。
日本が初戦で負けたら、2戦目のホームゲームは絶対勝たなきゃいけない試合になります。連敗したら監督が代わるかもしれない。絶対に勝ち点3を取らなければいけない状況に、監督交代の危機という心理状態が加わると、当然選手の動きは硬くなる。そうなると連敗の可能性も出てくると思います。とにかく初戦の入り方、これが重要です。
二宮: 最終予選はグループ3位になった場合でも、B組3位とのプレーオフがあり、W杯出場の可能性はあります。ただし、反対のグループ3位は韓国、イラン、サウジアラビア、北朝鮮、UAEのいずれか。おそらくは韓国、イラン、サウジアラビアのどこかでしょう。これはきつい。
中西: 普通にいったら、この組み分けで2位に入らなければダメですよ。アウェーでは引き分け、ホームで勝ちという戦い方をしていけば大丈夫です。とにかく負けるのが一番ダメ。相手に勝ち点3が入ってこちらにはひとつも入りません。引き分けなら勝ち点を2点失ったけれど、相手にも勝ち点1しか与えなかったんだという感覚が持てますから。特にアウェーの場合はその考えが大切ですね。
(後編につづく)
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中西哲生(なかにし・てつお)プロフィール>

1969年9月8日生まれ。愛知県出身。同志社大学卒業後、92年名古屋グランパスエイト(当時)に入団し、中盤の選手として活躍。97年にJFLの川崎フロンターレへ移籍。99年には主将としてJ2初優勝、J1昇格に貢献し、その活躍からミスターフロンターレと呼ばれた。2000年に現役引退し、その後スポーツジャーナリストとして活躍。テレビ、ラジオなど様々なメディアに登場し、サッカーの普及活動に尽力している。08年7月に日本サッカー協会特任理事に就任。J1・J2通算126試合出場、7得点。
★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
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