二宮: 太田選手とは五輪後にいくつかのテレビ番組で一緒に出演しましたが、まじめな討論番組でも、しっかりと自分の意見が言える。感心しました。
太田: ありがとうございます。個人的にはマイナースポーツだからこそ言えることがあると思っているんです。メジャースポーツのアスリートはどうしてもてっぺんの景色しか見えない。でも、僕は裾野の景色もてっぺんの景色も見ている。これは他のアスリートにはない部分だと自負しています。
二宮: でも最初、テレビに出るのは緊張したでしょう?
太田: いや、ほとんどないですね。僕がテレビに出ることで、絶対にフェンシングの映像が流れる。それを見た人が少しでもこの競技に興味を持ってくれればうれしいと思っています。フェンシングってかっこいいとか、こんなにスピード感があるんだとか、ポイントを獲るとピカピカ光ってきれいだとか、どんなことでもいい。それが僕にとっては価値あることなんです。
全国にフェンシング道場を二宮: 確かに太田選手の快挙でフェンシングへの注目度は一気に高まりました。
太田: ただ、日本人には熱しやすく冷めやすいところがありますよね。フェンシングの競技人口って実際には数千人レベル。僕は現役選手ですし、ひとりしかいませんから、あっちこっち普及活動に行くには限界がある。ここからは協会の取り組みが重要になると思います。
二宮: まずは普及、そして育成、強化。この順番を間違うと、一過性のブームに終わってしまいます。ピラミッドのように底辺が大きくないと頂点も高くならない。太田選手がつくった追い風をうまく利用して、競技人口を増やすことが、将来的なフェンシングのレベルアップにもつながるはずです。
太田: 実際、中国が強化ばかりしていて、シドニー五輪後に主力が抜け、ガクンとレベルが落ちたことがありました。仕方なくアテネではシドニーの代表メンバーを再び戻し、団体で金メダルを獲りましたが、世代交代はなかなか進みませんでした。
現在、フェンシングでは各地で発掘タレント事業を行っています。ところが、そこで見つけた有望選手は全部東京のナショナルトレーニングセンターに集められる。
二宮: 一極集中型の強化だと、東京と地方の往復で時間もお金もかかる。続かなくなる選手も出てくるでしょう。
太田: やはりフェンシングの専用道場が全国に5カ所は必要です。フランスなどの強豪国は6〜9歳くらいから子どもたちがフェンシングを始めています。一方、日本でタレント発掘するのは中学1年生が対象。中学1年といえば13歳です。この歳月の差はめちゃめちゃでかい。フェンシングを好きになってもらう上でも、剣が届く、届かないという自分の中の絶対距離感を育む上でも。
二宮: 距離感を養うには、スタートは早ければ早いほうがいい。ヨーロッパでは総合型スポーツクラブが各地にありますから、小さい頃からフェンシングを含め、いろんなスポーツに親しめます。
太田: もし地方にフェンシングのできる環境があれば、わざわざ東京まで連れてくる必要がない。今回、僕が決勝で負けたドイツのクライブリングは地元のクラブでずっとフェンシングをやってきた選手です。
エペで世界と戦え二宮: 太田選手の中で、具体的に普及のためのアイデアはありますか?
太田: フルーレ、エペ、サーブルと種目があるなかで、僕はエペに重点を置いたほうがいいと考えています。フェンシングはルールが分かりにくいと言われる中、エペはどこを突いてもいいし、攻撃権の決まりもない。先に突いたほうが勝ち。だからわかりやすい。
二宮: でも、先に突いたもの勝ちとなると、手の長いヨーロッパの選手が有利では?
太田: 有利です。確かにエペは日本人には厳しい。ところが韓国や中国はエペでも好成績を残している。同じアジアの彼らが勝てるのであれば、日本もやり方次第で世界と対等に戦えるはずです。
二宮: 防具とか剣など道具を一式そろえるのに、結構お金がかかるイメージもありますが……。
太田: それでも野球道具を一式揃えるよりは安いと思います。昔はドイツ製ばかりで、どうしても値段が高かったのですが、最近は中国製が出てきて一気に価格は落ちました。
二宮: 選手としての当面の目標はロンドン五輪での金メダルですが、将来的にはもっと大きな夢がある?
太田: はい。何かを変えたいですね。フェンシングのみならず、他のマイナースポーツを盛り上げる勉強もしていきたい。スポーツを通じて、いろんな人と出会う中で、その素晴らしさは誰よりも理解しているつもりですから。
ただ、どんな立場になるにせよ、今の気持ちは忘れずにいたい。みんな、「初心を忘れず」とか言いますけど、だいたいは変わってしまう。それは環境がそうさせるんだと思います。今の気持ちが変わらないためには、自分を支えてくれるメンバーを大切にすること。そうすれば、もし間違った方向に行きそうになっても、厳しく指摘してくれるはずです。
五輪前に聴いた音楽
二宮: ところでフェンシング以外で好きなことは? 映画を観に行ったりはしますか?
太田: 映画館行ったら、寝てしまいますね(笑)。今までもコックリ、コックリした経験があるんで。
音楽はよく聴きます。今回の五輪では相手選手の映像が見られるように、iPod touchを提供していただきました。試合前には相手の研究をしながら、音楽も聴けて有効活用できました。
二宮: マラソンの高橋尚子選手がシドニー五輪でhitomiさんの「Love2000」を直前に聴いていたと話題になりました。試合前に決まって聴く曲はありますか?
太田: 特に決まったものはないですね。直前にテンポのいい音楽を聴くとテンションが上がりすぎてしまうので、そういうときはゆっくりめの曲を聴いたりしています。今回の五輪では各テレビ局のテーマ曲ばかり流して、気持ちをオリンピックモードに高めていました。
FRIDAYされる相手は○○ 二宮: 普段飲むお酒は?
太田: 僕はビール党です。最初はマズイと思ったのですが、飲めば飲むほどおいしく感じるようになりました。逆に焼酎は苦手です。
二宮: 練習後に一杯、というのは?
太田: それはダメです。コーチからも「オマエは酒飲むな」と止められています。僕自身、お酒は弱いほうなので、数々の失敗事例がある(笑)。今は楽しいメンバーがそろえば飲む程度です。
二宮: 家族同士でもあまり飲まない?
太田: そうですね。父もビール程度です。ただ、姉がワインも焼酎も飲めるので、東京に出てからは2人でよく飲みに行っています。練習がうまくいかなかった時とか、姉とお酒を飲むのが気分転換になっていますね。普通はそういう時に会うのは彼女とかなんですけど、僕の場合は姉(笑)。「悲しいわ〜」ってみんなに言われます。
二宮: お姉さんと顔は似ている?
太田: 全然似ていないです。もしかしたら彼女に間違えられるかもしれないですね。「FRIDAYされようぜ」って姉とは話しています(笑)。ちょっとアルコールがまわって気持ちよくなってきました。しゃべりすぎましたかね(笑)。
>>前編はこちら<
太田雄貴(おおた・ゆうき)プロフィール>

1985年11月25日、滋賀県出身。小学3年生から父に誘われてフェンシングを始める。95年の少年全国大会で優勝を飾り、京都・平安高時代には史上初のインターハイ個人3連覇を達成。2002年には全日本選手権を史上最年少(17歳)で制す。04年アテネ五輪では日本人最高の9位(3回戦敗退)。06年のアジア大会で日本勢では同種目28年ぶりとなる金メダルを獲得。北京五輪では世界ランク上位の強豪を次々と撃破し、日本フェンシング界初の銀メダルに輝いた。
★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
世界的な酒類・食品などのコンテスト「モンドセレクション」のビール部門で、3年連続最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)を受賞したザ・プレミアム・モルツ。原料と製法に徹底的にこだわり、深いコクとうまみ、華やかな香りを実現しました。
提供/サントリー株式会社<対談協力>
harden−tighten(ハーデンタイテン)青山東京都港区南青山1−15−3 ペガサスビル2F
TEL:03−3479−3786
営業時間:
11:30〜15:00(L.O.14:30)
18:00〜03:00(L.O.02:00)月〜金
18:00〜24:00(L.O.23:00)土・祝
◎バックナンバーはこちらから