北京五輪が8月24日閉幕した。今回の大会には204の国と地域から役員も含めて約1万6000人が参加、17日間にわたって熱戦が繰り広げられた。中国政府が国家の威信をかけて臨んだこの大会から何が見えたのか。上海出身の大学教授兼ジャーナリスト葉千栄氏、金融コンサルタントの木村剛氏、スポーツジャーナリストの二宮清純が討論した。(今回はVol.6)
木村: 日本人の心がコスモポリタンじゃないからですよ。韓国は野球で金メダルを獲得しましたが、韓国の人口は約4800万人で日本の3分の1。GDPも比較的小さい。韓国は米国産牛肉の輸入で大変な状況になっていますが、それは、「韓国は自由貿易でいこう。グローバルでいこう」と決めたからです。結果として、予想以上の混乱が起きたかもしれないが、世界と戦おうという意思を持って国家を運営している。だからこそ、韓国は金メダルが取れた。日本はスポーツも経済も社会も「内向き」になってしまっている。二宮さんの指摘した星野ジャパンの敗北は、本当にその象徴です。

二宮: 韓国プロ野球には、実は日本のプロ野球出身のコーチがたくさん行って指導している。現在は5人以上います。今回準決勝の日本戦で8回まで投げたキム・グァンヒョン投手のコーチは、巨人にいた加藤初です。
 韓国は世界と戦うためにいろんな人材をほかの国から入れた。しかし、日本のプロ野球には韓国出身のコーチはほとんどいない。優秀な人材なら国籍に関係なく起用すべきです。
 最近はスポーツ界に限らず、中国や韓国と比べたがる日本人が増えている。自信のなさの表れなんでしょうか。敵失を待つ前に、「この国を何とかしようぜ」という気概のある若い人に出てきてもらいたい。

木村: 敵失どころか、自分たちがマネジメントできていない。けがで出場できなかったマラソンの野口みずき選手の代役を出せなかった。選手を試合に出せないのでは、そもそも勝てるわけがない。

二宮: 代表選手はギリギリまでトレーニングしているから、けがをすることは十分にあり得るんです。それを前提に準備しなければならない。国際陸上連盟のルールに補欠制度があって、監督会議でOKだったら、補欠として名簿登録をしていた選手となら、試合前日までに交代させられるのに、これを解除してしまっていた。マネジメント側の怠慢です。
 結局、野球もマラソンも「玉砕主義」だった。逆にマスコミに「裏切り者」と言われた野茂英雄が、日本野球の価値を世界に知らしめたんです。本物の“ナショナリスト”の足を引っ張ってはいけない。

: どの国にも愛国者のふりをして、真の国益を損なう人がいるんです。そういう人は常に「国を愛せ」と叫びながら、他人に「国賊」のレッテルを被せる。日中双方にとって、相手の実像、全体像を冷静に見ないと、外交のみならず、政治、経済にも関わる大きな過ちになると思います。

(続く)
<この原稿は「Financial Japan」2008年11月号に掲載されたものを元に構成しています>
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