二宮: 相馬さんはお昼からビールを飲むほどのビール党とうかがっていますが(笑)。
相馬: 自宅にサーバーが欲しいくらい好きです。僕は基本的にビール党なんですよね。


二宮: どのくらい飲むんですか、ほぼ毎晩?
相馬: まあまあ、結構飲みますね。

二宮: でも相馬さんは引退されてからも体型が変わらないですよね。
相馬: 最近痩せたんです。コーチのS級ライセンス取得の講習を3カ月間受けていて、週の半分は体を動かしていました。そうするとさすがに痩せますね。今は74、5キロくらいです。

二宮: 現役時代と体重はそんなに変わらない。
相馬: ほとんど一緒ですね。ちょうどこの年末年始で少し増えてしまったんですけど(笑)。

 W杯本戦で勝てるかが重要

二宮: ビールの話はまた後程、お聞きするとして、まずは日本代表の話から入りましょう。2009年は南アフリカW杯アジア地区最終予選が佳境を迎えます。日本は昨年11月に行われたアウェーでのカタール戦で快勝しました。結果は3−0で内容もよかった。あれでW杯出場はほぼ決まったかなと思いました。
相馬: いきなり本題ですね(笑)。おっしゃる通りで、W杯予選を通過するという意味ではカタール戦の勝ちは大きかった。結果、内容、試合に臨むまでの過程を含めて、本当のチームになってきたと感じさせてくれる試合でした。さらにここからどのような上積みができるかが今後のカギになると思います。

二宮: 次はホームでのオーストラリア戦、2月11日です。同じAグループで戦っている5カ国の中でワールドカップを経験しているのは日本とオーストラリアだけ。それを考えると、オーストラリアとのホームとアウェーの2試合、ここが試金石になるかと思います。岡田JAPANにとっては、初めてやや格上の相手と戦うことになる。この2戦で岡田さんのサッカーも見えてくるのかなという気がしているのですが。
相馬: 南アフリカW杯が開催される2010年6月という時点での力を逆算して考えたとき、岡田さん自身の口からはまだまだ足りないという発言もありました。そこへ向けて今のチームでいいのかどうか、オーストラリア戦の結果でわかりますね。もしかしたらチームのベースとなる部分は残しながらも、選手の入れ替えなどどこか手直しをしていく可能性もあるのかなと思います。重要なことはW杯本戦でどこまで行けるかということですからね。

二宮: 岡田さんは今の代表を率いる時に、ラグビーの大西鐵之助さん(故人、元・早稲田大学ラグビー部監督)の「接近、展開、連続」というコンセプトを掲げた。前回のカタール戦では、わりと狭い空間を使った、フットサルのようなサッカーでした。岡田さんのやろうとしていたサッカーというのはこういうものだったのかなと思ったのですが、相馬さんは98年のW杯、岡田さんの下でサッカーをやっています。今回のチームと全部一緒ではないでしょうが、岡田さんの目指すサッカーというのはどういうものなのでしょう?
相馬: 今のチームに要求しているコンセプトは「ハードワーク」、一番には攻守の切り替えの速さです。どんな相手に対しても、その部分で負けていてはどうにもならない。もちろん速さだけでなく、質も高いレベルを要求しています。中でも僕がすごく大事にしていると感じるのは、ダイレクトプレーですね。一発で相手の弱点を狙おうとするのではなく、自分たちがボールを保持しながらいつ仕掛けるのかを共有できるチームにしたい。岡田監督の頭にはそれが一番にあるんじゃないかと思います。
 現状であれば、遠藤(保仁)と(中村)俊輔のところにボールが入ったら、まわりの選手が動き出す。つまりスイッチを入れるということですね。それまでのボールの動かし方では特別なことはしない、とにかく速くボールを動かす。そして、遠藤、俊輔につないでスイッチを入れるような状況をできるだけ早く作り出す。そうやって仕掛けていこうとの意図がみえます。

二宮: 岡田さんは好むと好まざるに関わらず、オシムさんのサッカーを受け継ぐことになりました。オシムさんのサッカーと岡田さんのサッカーは融合できているのか。それとも全く違うものを目指しているのか。
相馬: 全く違うという印象はないです。今のモダンなサッカーは、何より攻守の切り替えの速さが必要。これは言葉を変えれば「走る」ということになります。さらに言えば、相手よりもいいポジションを早く取るためには考えて走らなければいけない。全部その積み重ねでゲームを進めていくので、ベースとなる考え方はオシムさんだろうが岡田さんだろうが大きく違わない。

二宮: 基本コンセプトは同じだと?
相馬: ただ、勝負へのこだわりは岡田監督のほうが持っているんじゃないかと思います。メディアに対する発言もそうですけれども、オシムさんよりも選手たちに勝負に対するプレッシャーをかけている。オシムさんも勝負にこだわっていたとは思いますが、岡田さんのほうがそれを表に出して、選手に伝えているといます。チームのコンセプトを共有することが先なのか、目先の勝ち負けを優先するのか。どちらかを選んでしまいがちなのですが、岡田監督は、両方を突き詰めなければいけないとはっきり言っていますね。

 1対1で負けるな!

二宮: 代表の時、岡田さんと一緒にやっていて、印象に残っている出来事や言葉は?
相馬: それはいっぱいあります。「人生万事塞翁が馬」という言葉はよくおっしゃっていました。他にも「今持っている以上のものは出せない」とか、「お前らが100持っているものを110出せとはオレは言わない」とか。選手のメンタルな部分に対する言葉が非常に多かったですね。取り組む姿勢やいかに平常心でいられるかとかといった内容もよく話していました。

二宮: サッカーの戦術面では?
相馬: 岡田監督就任以前、加茂(周)監督は「ゾーンプレス」をやっていました。当時はファーストディフェンダーがボールを取りにいった時に、交わされてもいいと指示されました。その代わり、迫力をもって取りにいくことを徹底された。そうしないと、相手が余裕を持ってしまうから次のディフェンダーがボールを取れない。もし抜かれても迫力を持っていけば、相手がボールを遠くに離してしまうとか、無理にパスを入れてしまうとか、すぐにサポートにいきやすくなる。これが加茂さんの狙いでした。
 ところが岡田さんが監督に就任すると、それはガラリと変わった。「ファーストディフェンスが、1対1で抜かれていいということはない」「ボールを取りに行って抜かれることはあるかもしれないけど、抜かれてもOKとオレは言わない」と。こういうことを就任直後に言われたので非常に印象に残っていますね。

二宮: 加茂さんの時とは違い、1対1でも負けないことを強調したと?
相馬: 今もそうですが、日本サッカーには「1対1、個の力では勝てないから、数的優位を作って攻撃でも守備でも組織で勝ちましょう」と考え方があります。しかし、世界と戦うと最後は個の力でやられてきている。そういう点からも、個の勝負、1対1をどうでもよいと言ってしまったらいけないわけですよね。僕はDFだったので正直、抜かれるというのは嫌だったんです。抜かれてもいいから取りにいけと言われても、それではダメだという思いがあった。だから岡田さんの一言でスッキリした部分があったんです。

 責任を感じた加茂監督解任

二宮: フランスW杯最終予選の時、カザフスタンで加茂監督が解任されました。以前、このコーナーで井原(正巳)さんに聞いたのですが、選手たちは部屋に集まって飲み会ったそうですね。
相馬: 結構な人数が集まって、誰かの部屋かリラックスルームかどちらかに集まって飲んだんです。

二宮: どんな話をしたんですか?
相馬: このままではマズいぞっていう話になったのは覚えています。僕は最初に加茂さんに呼んでもらった人間なので、あの時は責任を感じました。監督は選手を信用して自分のクビをかけて選んでくれている。信用して使ってもらったのに、ああいう結果になってしまった。監督に申し訳ないと、ものすごく思いましたね。ただ、自分にやれることはその後の試合で結果を出すことしかなかった。切り替えてやっていくしかなかったですね。

二宮: 話の中身はあんまり覚えていない?
相馬: 何だろうな、なにがうまくいかなくてというのはあまりなかったんですよね。よくわからなかった。何かわからないけど、勝てなくなってしまったという感じが強くて……。サッカーの話はほとんどせず、気持ちを切り替えていこうという話しかなかったような気がします。

二宮: そのときは井原とかカズ(三浦知良)、ゴン(中山雅史)とかもみんなで?
相馬: そうですね。カズさんはいたかな。少し顔を出してすぐどっか行っちゃったのかもしれない。僕はそういうことがあるとずーっといるタイプ(笑)。付き合いがいいというのか、先に帰るのが怖いというのか。その場にいないと何か言われているんじゃないかとか思ってしまう人間なんです(笑)。

(後編につづく)


相馬直樹(そうま・なおき)プロフィール>
1971年7月19日生まれ、静岡県出身。清水東高校時に全国高校選手権に出場。早稲田大学に進学し、94年に鹿島アントラーズに入団。左サイドバックとして活躍し、95年に日本代表に初選出。フランスW杯最終予選では悲願のW杯出場権獲得の原動力となる。98年フランスW杯も3試合すべてに出場。2002年から東京V、鹿島、川崎Fと移籍し05年に現役を引退。現在はスポーツコメンテーターとして各方面で活躍している。06年よりJFAアンバサダーに就任。J1・J2通算304試合出場10得点、95−98年Jリーグベストイレブン。代表Aマッチ59試合出場4得点。
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★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
 
世界的な酒類・食品などのコンテスト「モンドセレクション」のビール部門で、3年連続最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)を受賞したザ・プレミアム・モルツ。原料と製法に徹底的にこだわり、深いコクとうまみ、華やかな香りを実現しました。

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(構成:大山暁生)
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