二宮: 相馬さんが鹿島アントラーズに入団したのは94年です。色々なクラブから誘いがあったと思いますが、鹿島を選んだ理由は?
相馬: 大きな理由の一つは、まっ先に僕のところへ話をしてくれたことです。大学3年のときには正式な話をしてくれました。それとプラスして、サッカーをするための環境を重視しました。僕が入団した頃は、練習場のあるクラブがほとんどなかったんです。しかし鹿島には立派なクラブハウスがあって、2面半くらいのピッチもあった。ウエイトトレーニングの施設も充実しているし、食事が出る寮も完備している。ハード面での優位性が鹿島に惹かれた部分でした。


二宮: 他にはどこから声をかけられていたんですか?
相馬: 地元である清水エスパルスからも話はもらっていました。当時のエスパルスは高校の先輩でもある日本代表の堀池(巧)さんや(長谷川)健太(現・清水監督)さんがいました。特に堀池さんは、右と左は逆ですけど、同じポジションとしてパーフェクトな人。僕の理想とするサイドバックは、まず守れることが第一条件、その上で攻撃ができる選手でないといけないと考えていました。Jリーグではどちらか一つの面を持っていれば通用するかもしれませんが、アジアの中での戦いを視野にいれたら、両方できなければ話にならない。その意味で、堀池さんはサイドバックとして完璧だったんです。そういう人と一緒にやるのも自分にとって学ぶことが多いかとも思いました。その頃は(加藤)久さん(現・京都監督)もいてDF面では勉強になる人がたくさんいましたし。しかし、鹿島にはジーコがいた。世界レベルの戦いを知っている選手がいる。これも鹿島を選んだ理由の一つですね。

 物差しで測ったようなジーコのパス

二宮: ジーコからは教わったことは?
相馬: 直接、なにを教わったということはあまりないんです。一緒にプレーしたのは6試合だけでした。しかし、少ないプレー機会でも、試合中にいいランニングをしたら、いいパスが絶対に出てくるんですよ。逆にいいランニングをしないとパスは来ないんです。ジーコはどこにパスを出せばチャンスに結びつくかを瞬時に判断していた。大げさでなく、ピッチ上で起こっていることが全部見えているんでしょうね。相手の動きの一手か二手先を読んでいる。自分たちがいい走りさえしていれば、確実にワンタッチかツータッチでボールが来ましたから。

二宮: なるほど。ジーコとの6試合は貴重な体験でしたね。
相馬: あの経験は僕にとっては何物にも変え難い財産です。オーバーラップをした時に、ジーコは相手DFを引き付けてから、僕のところにパスを出す。それもラインのギリギリのところで止まるようなインサイドのボールを。DFを十分に引き付けてくれているので、僕は完全にフリーな状態で走っている。しかもそのパスはトラップをさせてくれない、「はい、(ダイレクトでクロスを)上げなさい」というボールなんです。全くブレがない、物差しで測ったようなパスでした。

二宮: それはすごい。
相馬: やはりうまい人と一緒にプレーすると、並の選手からでは得られないものを吸収できます。普通の選手からでは絶対に同じものは得られない。ジーコは僕とは見たものや経験したことが違う人でした。だから、一緒にプレーすることで、僕も人とは違う経験をすることができました。

二宮: “ジーコ体験”のようなものは、それまでのサッカー経験ではなかったですか。
相馬: 後にも先にもないですね。強いて言えば、代表で名波(浩)とプレーした時はその感覚に近かったですね。彼も人を使おうという意識が強かったですから。

 初練習で感じたヒデのすごさ

二宮: ジーコや名波のパスには優しさみたいなものを感じました。一方、ヒデ(中田英寿)の場合はスパルタ式のパスでしたね。追いつけよと(笑)。加茂(周)さんがヒデを初めて呼んだ韓国戦を今でもよく覚えています。やはり際立った存在感がありましたか?
相馬: 97年の韓国戦直前に代表のキャンプがあったんです。3日程度の短いものでした。合宿の初日、最初に集まって簡単なゲーム形式で練習をしたんです。僕がレギュラー組に入って、ヒデが控え組の右サイドのハーフに入りました。20歳で代表に入ってきて、実力はどんなもんかなっていう感じでしたよ。アトランタオリンピックで名前は聞いていたけど、それまでJリーグでも対戦していなかったですし。ところが試合が始まって数分で、「あ、コイツはうまいね」って(笑)。代表の初トレーニングの時から、プレーが落ち着いていましたね。風格があるとまでは言わないですけど、どっしりとしていました。

二宮: 当時は知名度だったら前園(真聖)のほうが上でしたよね。
相馬: はい。しかし、ゾノ(前園)よりもプレーに安定感があって、大人のサッカーをする印象がありましたね。すごく視野が広いので、自分のボールを簡単に失わないんです。こちらがプレスをかけるタイミングを全部外された記憶があります。サイドに追い込んだと思っても、相手をよく見て素早い判断でパスを出す能力がありました。自分としては、サイドで追い込めるという自信があったのに、ヒデを追い込んでいくことができなかった。次の日の練習からはレギュラー組に入って、そのまま先発に定着しました。そこから9年間、06年ドイツW杯が終わるまでずっとレギュラーですもんね。加茂さんも本来はいきなり使う気はなかったでしょう。でも最初のトレーニングを見て、いけると判断したんだと思います。

 インパクトあった高原、久保、そして柳沢

二宮: 他に対戦相手で印象に残っている選手は?
相馬: まずは高原(直泰、現・浦和)でしょう。最初に対戦したとき、たしか98年くらいかな、途中から出てきたんですが、秋田(豊)さんと「彼はいいね、来るね」っていう話をしたことを記憶しています。何よりポジショニングやゴールに向かう動きがよかった。DFにとって一番嫌なのは、ゴールに直接向かってくる選手なんです。高原にはその姿勢がありました。ただガムシャラにというだけではなく、自分がゴールするイメージがあった上で、中盤に下がる動きもあったように覚えています。おそらく高卒1年目か2年目ですが、その段階ですごいという感覚を相手に抱かせる選手でした。あと、久保(竜彦、現・広島)もすごかった。彼にもゴールへの意識の高さを感じました。なにをするかわからない、少し野生的なところもありましたね。

二宮: 味方で頼りになったのは?
相馬: ハセさん(長谷川祥之)は自分の形を持っていたので頼りになりました。タテへの突破が強く、高さもありました。ゴール前のどこにボールが来るか、感覚でわかっていましたよね。あと、ヤナギ(柳沢敦、現・京都)は外せないですね。

二宮: 彼はやはりうまい?
相馬: いや、全てがうまいとは言えないないですけど(笑)。彼の動き出しの良さは素晴らしい。僕は岡田JAPANに呼ばれてもおかしくないと思っているんですが、なかなかチャンスは来ないですね。たしかにゴールに向かうガムシャラさという部分では足りないものがある。しかし、彼の動き出しの速さで周りの選手がどれだけ助けられるか。トップの選手が動かないとスペースができないんです。彼が代表に戻れば、もっとスムーズに攻撃の組み立てができるはずですよ。

 グラスは毎晩、冷やす

二宮: 話し込んでいるうちに、あっという間に瓶が空になりました。ビールが本当にお好きなんですね。最高でどのくらい飲んだことがあります?
相馬: わからないです(笑)。生中で10杯ぐらいいっちゃうこともありますね。

二宮: このプレミアムモルツの飲みごたえやのどごしはいかがですか。
相馬: 他の人がみんなウマイって言っているので、わざわざ買って帰って、「まぁ、騙されてみようか」って飲んでみたんですよ。そうしたら、「あ、本当にうまいじゃん」という感じで。僕は濃いビールが好きなのでコクがあるのがいいですね。

二宮: ご家庭ではいつも奥様と晩酌という感じ?
相馬: はい。ウチでは毎晩、グラスを冷やしていますから。

二宮: ビールもしっかり冷やして?
相馬: もちろん。コップまで冷やして、ですね。ついつい飲みすぎるので、できるだけ週に1度はやめるようにしています(笑)。

>>前編はこちら


相馬直樹(そうま・なおき)プロフィール>
1971年7月19日生まれ、静岡県出身。清水東高校時に全国高校選手権に出場。早稲田大学に進学し、94年に鹿島アントラーズに入団。左サイドバックとして活躍し、95年に日本代表に初選出。フランスW杯最終予選では悲願のW杯出場権獲得の原動力となる。98年フランスW杯も3試合すべてに出場。2002年から東京V、鹿島、川崎Fと移籍し05年に現役を引退。現在はスポーツコメンテーターとして各方面で活躍している。06年よりJFAアンバサダーに就任。J1・J2通算304試合出場10得点、95−98年Jリーグベストイレブン。代表Aマッチ59試合出場4得点。
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☆次回のゲスト☆
 2月のゲストはハンドボール選手の宮崎大輔さん(大崎電気)です。お正月に放送された「スポーツマンNo.1決定戦」で史上初の2年連続総合No.1に輝くなど、ハンドボールのみならず、多方面での活躍が光る宮崎選手。ハンドボールの魅力を熱く語っていただくと同時に、好きなお酒の話も交え、内容満載でお届けします。対談の更新は前編が2月12日、後編が2月26日の予定です。どうぞお楽しみに!

★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
 
世界的な酒類・食品などのコンテスト「モンドセレクション」のビール部門で、3年連続最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)を受賞したザ・プレミアム・モルツ。原料と製法に徹底的にこだわり、深いコクとうまみ、華やかな香りを実現しました。

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(構成:大山暁生)
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