二宮: はじめまして。テレビではよく拝見していましたが、実際にお会いすると素晴らしい体をしていますね。
宮: でも意外と身長は小さいね、と言われます。173センチなんです。


二宮: 一度、宮選手とお酒を飲みながらお話をしたいと思っていました。ビールはお好きですか?
宮: もう、喜んで(笑)。僕、ビール党ですから。

 ヨーロッパではメジャースポーツ

二宮: ハンドボールが一躍、注目を集めたのが「中東の笛」。中東寄りの不可解な判定に北京五輪のアジア予選がやり直しになりました。結局、韓国に敗れて出場権は逃しましたが、テレビで生中継され、会場にも多くの観客が詰めかけました。急に人気に火がついて、どんな思いでした?
宮: あの試合は僕が日本でやった中で一番すごかったゲームでした。1万人以上のお客さんに来ていただいたのはもちろん初めて。きっかけはどうであれ、ハンドボールを多くの人に知ってもらったことはありがたかったと思っています。

二宮: あんな大声援を受けたことはそれまでなかったと?
宮: だって初めて実業団入った時は、パラパラパラとしかお客さんがいなかったことがありましたよ。「関係者しかいないじゃん!」って(笑)。知り合いが来ていたら、すぐに「オマエ!」ってわかるくらい。ヨーロッパでプレーした経験もある自分にとってはちょっと寂しかったです。

二宮: ドイツのブンデスリーガの試合を観たことがあります。ヨーロッパではハンドボールはとても人気があるスポーツです。
宮: メジャーですよね。僕はスペインの2部と3部でプレーした経験しかないですけど、地域密着のクラブで、いつも会場は満員で立ち見でした。もちろん、ひとりでも応援している方がいらっしゃる以上、試合では自分の力をしっかり出さなきゃいけない。ただ、よりたくさんの方に観ていただけるほうが選手の力になりますし、見ている人も盛り上がるはずです。そういう意味で、あの韓国戦はもっと日本でハンドボールをメジャーにしたいとの思いを強くした試合でしたね。

 露骨な中東寄りのジャッジ

二宮: 「中東の笛」は昔からあったんでしょう?
宮: そうですね。全日本に入った時から、「こんなもんなんだ」と思っていました。スペインでプレーしていた時も判定がホーム側に有利ということはありましたから。それでも勝っていかなくてはいけない。でも試合を重ねる毎に「これじゃ絶対勝てないだろう」と。あまりにもひどすぎました。試合前に中東のレフェリーだとわかると、「あぁ……」ってため息が出ましたね。

二宮: 日本協会の渡辺佳英会長にお話を伺ったのですが、ゴールエリアラインの1m手前からシュートを打っているのに、ラインを踏んで反則だと言われたとか。めちゃくちゃですね。他には、どんなひどいジャッジが?
宮: たとえば僅差の展開で僕がシュートを打ってゴールを決めました。でも、他の選手が違うところでファウルをしていたと笛を吹かれて得点が認められないんです。こんなケースは普通、めったにありません。でも、中東勢との試合では露骨に出てくる。

二宮: それでは、どんなに頑張っても点差が縮まらない。
宮: しかもハンドボールの場合、1回ふいた笛は覆りません。これがアメリカンフットボールとかだったらビデオ判定を要求することもできますが、そういうシステムもないんです。

二宮: 審判に贈り物やお金を渡して、買収していたとの証言もありました。純粋にスポーツをやる人間としては、たまったものじゃない。
宮: もうスポーツじゃなかったですよ。実は、クウェートの選手にこんなことを言われたことがあります。「お前ら、もう(結果は)決まっている」と……。
 ハンドボールは通常ではテレビ放映もないので、周囲からは結果だけで判断されてしまいます。どんなにひどい判定で敗れても、負けは負け。「なんだ、ハンドボールってダメだね」と思われてしまう。とはいえ、僕ら選手の立場としては「レフェリーが悪いから負けた」と言えば言い訳になってしまいます。やっぱりそれは口にはできない。

二宮: 相当ジレンマがあったでしょう?
宮: だから今回、ジャッジの問題が明らかになったのは良かったです。世界のハンドボール連盟も「おかしい」と認めてくれた。問題はこれからでしょう。ハンドボールをもっともっとメジャーにして周囲の注目が高まるようになれば、判定は公正にせざるを得ない。ハンドボールを目指す後輩たちを、同じ気持ちにさせたくないですから。

二宮: 最近のジャッジは良くなりましたか?
宮: どうなんですかね……。僕自身は多少なりとも変わってきたなと感じていますが、ジュニアの試合では変わってないという声も聞いています。

 勉強では“エジソン”

二宮: 少し子ども時代の話をお伺いしましょう。野球やサッカーといったメジャースポーツがある中で、ハンドボールを選んだのは?
宮: 小学校の時に実家が引っ越して転校した学校が、ハンドボールが盛んだったんです。指導者の先生が素晴らしくて、赴任した先々でその学校を全国優勝に導いていた有名な方でした。うちの姉も、小学校1年生からハンドボールをやって、その先生の下で全国制覇しているんです。その姉に「ハンドボール、1回見に来て。おもしろいから」と誘われたのがきっかけです。実際にやっていると、すごく簡単で楽しい競技だなと思いました。

二宮: 当時から運動神経は良かった?
宮: 今も昔も運動のセンスはそこまでないと思います。ただ、性格は負けず嫌い。たとえば学校で縄跳び大会があると、ハンドボールの練習が終わってから、家に帰ってすぐ練習していました。小学校3、4年の時に全校で1番になったことがあります。ドッジボールもバスケットボールもサッカーも、とにかく人に負けるのが嫌いでした。何回も練習して自分のものにしないと納得いかなかったんです。体が小さかったこともあって、なおさらやらなきゃ勝てないという気持ちでした。

二宮: 勉強も?
宮: 勉強は譲っていました(笑)。僕は、勉強に関しては“エジソン”なんです。

二宮: エジソン? どういう意味?
宮: エジソンがそうだったみたいに、「なんでAはAって言うんだ?」っていつも母親に疑問をぶつけていました。数学の方程式を勉強しても、「なんで、こんな答えになるの?」とか、英語でも「なんでsignのgは読まないの?」とか。でも、母親に聞いたところで、わからない。そのまま興味が沸かなくなってしまいました。スポーツは自分が追求していけば、いろんなやり方が見えてきて、結果もついてきますからね。

二宮: 興味を持ったものには、ものすごい集中力を発揮する一方で、興味のないことはやらない。天才型なんですね。
宮: 勉強でも1度だけ、頑張ったことがありました。1問1点で100問の漢字テストをクラスでやった時のこと。勉強していないので、全くできないんです。それで先生が採点したテストを返却する際に、全員の点数を発表した。「●●さん、98点」「おぉ、すごい!」、「○○さん、80何点」、「△△さん、60何点」「もっと頑張ろうね」……「宮くん、3点」。

二宮: 3点?!
宮: もう教室中が爆笑ですよ。それで自分の気持ちに火がついた。「次の漢字テスト、絶対やってやろう」と。必死で勉強して次のテストは100点をとりました。そういった負けず嫌いな部分は小さい頃からありましたね。

 ハンドボールを続ける理由

二宮: ハンドボールを辞めようと思ったことは?
宮: 中学校の時に一度ありました。ちょうど『SLUM DUNK』が流行っていた時期で、ハンドボールよりバスケットボールのほうがモテる(笑)。練習場も野球、サッカー、バスケットに追いやられて隅っこだし、さすがにバスケットに流されそうになりました。
 ところが、顧問の先生が職員会議で「1年の宮大輔という子がハンドボール部を辞めたいと言っています。でも、この子は素晴らしい才能を持った選手です。どうか、他の部に入りたいと言ってきても入部を認めないでください」と言ってくれたんです。しかも、「彼はハンド部でお願いします」と土下座までしていたと聞きました。

二宮: いい話ですねぇ。
宮: 実はその話を知ったのは20歳を過ぎて、先生の家に飲みに誘われた時。当時のチームメイトが「お前が何でハンドボールを続けられているか、わかっているのか?」と教えてくれました。聞いていて涙が止まりませんでしたね。小学校3年生の時から中学、高校、大学、ヨーロッパ、実業団とハンドボール一筋で生きてきたのも、その時々の先生やチームメイトや関係者が支えてくれたから。その中のひとりでも欠けていたら僕はここにいなかった。ハンドボールで恩返しをしなくてはいけないと強く感じています。

二宮: 高校は大分国際情報高、大学は日本体育大学とハンドボールの名門どころを歩んできました。大学在学中にはスペイン留学も経験されています。
宮: スペインには大学1年の1月から行きました。理由は前年に世界学生選手権に出場してベストセブンと得点ランキング2位になってから、もっともっと海外でやってみたいという意欲が出てきたことがひとつ。
 もうひとつは国内のインターカレッジでは日体大は優勝候補と言われながら、2部のチームに負けてしまったこと。まだ1年でしたが、チームの中心選手として、やはり個々のレベルを上げないとダメだと痛感したんです。それで監督に「海外でやってみたい」と話をしました。たまたま、JOCが有力選手を海外派遣するプロジェクトを行っていて、うまくそれに乗っかることができました。

 本場の魅せるプレーに感動

二宮: スペインのレベルはいかがでしたか?
宮: 最初はびっくりしました。個々の能力もそうなんですが、プレーがダイナミック。現地に到着して真っ先にスペイン1部の試合を観戦しましたが、感動しましたね。「これが本物なんだな」って。日本では見たことのないプレーの連続でした。

二宮: たとえば、どんなプレー?
宮: ロングシュートでもスカイプレー(空中技)をみせていましたね。普通、スカイプレーはノーマークの時しかみせないんですけど、どんどんやってくる。
 何より、驚いたのは選手たちのボールを追う姿勢です。フリーボールになった瞬間に、向こうではスタープレーヤーが転がり込んででもマイボールにしようとする。その姿を見て、お客さんから自然に拍手と歓声が起こるんです。「すっげー、これがプロなんだ」「これが見ている人を喜ばせるプレーなんだ」と感じました。

二宮: 所属チームは?
宮: 最初はバルサでした。FCバルセロナ。外国人枠の問題で残念ながら、試合に出られなかったので、他のクラブに移籍することになりましたが。

二宮: バルサは言わずと知れたサッカーのビッグクラブ。ハンドのレベルは?
宮: ハンドもメチャクチャ強いです。ユニホームもサッカーと一緒。サッカーといえば、当時はリバウドが所属していて、子どもを連れて毎回、試合を観に来ていました。

二宮: お客さんも大勢入って熱狂的でしょう?
宮: はい、チケットはすぐ完売です。僕らは全くチケットが取れなかったので、裏ルートから入っていました。もちろん裏ルートなので、席はポールの裏側とかです。「見えねぇよ!」って文句言いながら観ていました(笑)。

二宮: 日本では学生同士の試合だと観客もまばらだったでしょうから、人の多さに圧倒されたのでは?
宮: 感動したと同時に、実際にうまくなればそのコートに立てる、という明確な目標ができましたね。もっと頑張りたい、もっとうまくなりたいって。
 これはスペインではないですけど、フランスのベルシーで国際トーナメントがあった時は、何万人も入るようなドームが会場でした。入場の選手紹介でひとりひとりにスポットライトを当てたり、炎がドーンっと上がったり……。演出はもちろんですが、観客からも試合中に地響きするような声援がありました。日本とヨーロッパではハンドボールを取り巻く環境が全く違うことを実感しましたね。

 スペインでお酒を覚えた

二宮: スペインではどのくらいプレーを?
宮: 2年とちょっとです。本当はもうちょっとやりたかったんですけど、JOCからの派遣でしたから。でも、スペインでの経験は自分にとって本当にプラスになりました。プレーはもちろん、向こうで20歳を過ぎてお酒も覚えましたからね(笑)。

二宮: 気付けば、お互いかなり飲んでいますね(笑)。
宮: 最初は、全く飲めませんでした。ビール1杯で潰れていたので、飲み会は憂鬱でしたよ。

二宮: スペインのような陽気なところだと、みんなお酒が好きでしょう?
宮: 海外に行ったら、昼間からワインが当たり前でした。選手たちも試合前だろうが、昼も夜もお酒を飲んでいる。彼らに付き合っているうちに強くなって、帰国した時にはすっかりお酒好きになっていました。

二宮: ビール党とのことですが、海外と日本のビールの違いは?
宮: 最近、海外のものも含めて、すべての銘柄を買ってきて、利きビールをしたんです。語れるほどの人間ではないですが、海外のものと比べるとすごく飲みやすいですね。プレミアムモルツはうちの嫁が一番好きなんです。僕もよく飲んでいます。ついつい飲みすぎるので、気をつけないといけないですね(笑)。

(後編につづく)


宮大輔(みやざき・だいすけ)プロフィール>
1981年6月6日、大分県出身。小学校3年生からハンドボールをはじめ、大分国際情報高を経て、日本体育大学へ。在学中にスペインへ渡り、本場のハンドボールに触れる。大学では2年時のインカレで優勝し、MVPを獲得。03年に大学を中退して大崎電気に入社した。同年のアテネ五輪予選や05年の世界選手権、07年の北京五輪予選などで日本代表のエースとして出場。08年11月には日本リーグ通算500得点を達成。09年元旦にTBS系で放送された「スポーツマンNo.1決定戦」で史上初の2連覇を達成するなど、ハンドボール普及のため、メディア出演や講演等でも活躍している。173センチ、74キロ。
>>オフィシャルブログ ハンドボールメジャー化宣言! 革命的プレーヤー「宮大輔」!

★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
 
世界的な酒類・食品などのコンテスト「モンドセレクション」のビール部門で、3年連続最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)を受賞したザ・プレミアム・モルツ。原料と製法に徹底的にこだわり、深いコクとうまみ、華やかな香りを実現しました。

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(構成:石田洋之)
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