二宮: (マスク姿で登場した内藤さんを見て)あれ、内藤さん、花粉症ですか?
内藤: はい、そうなんですよ。鼻がつまるし、目もかゆくなるし……。
二宮: じゃあ、この時期に試合があると大変でしょう?
内藤: そうなんです。この時期は本当に辛くて……。二宮さんは大丈夫ですか?
二宮: 実は私も花粉症もちなんです。とにかく目がかゆくてね。
内藤: わかります。でも仕方ないですよね。もっとひどい人もいるみたいですし、まだましかなぁなんて思ってますけど。
生粋のビール党二宮: ところで内藤さんはお酒は飲まれますか?
内藤: はい、飲みますよ。僕は生粋のビール党です。
二宮: この「ザ・プレミアム・モルツ」は飲まれたりしますか?
内藤: もちろん。コンスターチが含まれてないでしょう? だから他のと比べてもコクがあって美味しいんですよね。
二宮: 詳しいなぁ。本当にビールがお好きなんですね。内藤さんと1対1でお話するのは今回が初めてですが、ずっと注目していました。だから2007年10月の亀田大毅戦の時はもちろん、内藤さんの勝利を確信していました。
内藤: ありがとうございます。あの時、大多数は「内藤有利」と言ってくれていましたよね。すごいプレシャーでしたね。そのプレッシャーの中で勝てて本当に良かったです。でも、大毅選手も思っていた以上にいい選手でしたよ。
二宮: 技術ではまだまだですが、打たれ強さはありましたよね。
内藤: はい。ディフェンスに関しては、正直「おぉ! やるなぁ」って驚きました。キャリアの割には、うまかった。打たれ強さも感じましたしね。
二宮: 亀田兄弟の印象は?
内藤: 僕ね、亀田兄弟が出てきた時、「うわぁ、面白い選手が出てきたなぁ」って思ったんです。実際、亀田選手が出てきたことによって、ボクシングが以前よりも注目されるようになりましたからね。その亀田選手とやることになって、楽しみだったんですよ。
二宮: 試合前からボクシング以外のことでもいろいろと騒がれましたが、やりにくさはありませんでしたか?
内藤: やりにくかったのは、「内藤有利」と言われていたこと。あれがもう一番のプレッシャーでした。僕、今でもそうですけど、ハートが弱い(笑)。だから子どもの頃、いじめにもあったんでしょうね。
救われた先生のひと言
二宮: 内藤さんのこれまでの人生というのは、天国と地獄というか、山あり谷ありですよね。まさに波瀾万丈を絵に描いたような人生を送られているような感じがします。
内藤: 自分でもそう思います。ここまで変わるのかって。僕、中学生の時にひどいいじめにあってるんです。それまでは逆だったんですよ。もちろん、いじめはしませんでしたけど、ケンカは強かったんです。
二宮: それなのになぜ、中学校ではいじめられるようになったんですか?
内藤: どこの学校にも強いグループってクラスや学年にいるじゃないですか。そのメンバーの一人が、僕のことを嫌っていたんですよ。それがそのグループ全体に広がって、僕をバカにするようになったんです。気づいたら媚びるようになっていた。
二宮: 学校に行くのが嫌になったでしょう?
内藤: 嫌でしたね。でも、田舎なので登校拒否することもできなかったんです。まずうちの母親がそんなこと絶対に許さなかった。
二宮: 先生はいじめのことを気づいていなかったのでしょうか?
内藤: 先生には相談することもできなかったんです。後でバレることを考えたら怖くて。でも、一度だけ勇気を振り絞って話をしたことがあるんです。ある日、いじめっ子が僕のことをわざと後ろから押して、下級生の女の子とぶつかったことがあるんです。「何すんのよ!」って言われたから「オレじゃないよ」って。そしたら「じゃあ、誰がやったのよ」って聞かれて、答えられるわけないじゃないですか。それで逃げちゃったんです。そしたらすぐにその女の子の担任の先生から呼び出されました。本当のことなんて言えませんから、「すみませんでした」って謝ったんです。でも、その女の子は許してくれませんでした。
二宮: 内藤さんは何も悪いことしていないのに……。
内藤: でも、その先生も現場を見ていませんから、本当のことなんてわかりませんよね。それで翌日に事情を説明をしに行ったんです。「先生、実はあれは××が僕をわざと押したんです」って。そしたらね、先生がニコッって笑ったんですよ。僕、「あ、わかってくれたんだ!」って嬉しくなりました。ところが、違ったんです。「じゃあ、何でその場でちゃんと言わなかったんだ?」って。「仕返しされたら怖いし、言えませんでした」って言ったら、先生はこう言ったんです。「それは違うぞ。その場で言わなかったらオマエのせいにされるだろう。現にそうなったじゃないか。その場で言わなかったオマエが悪いんだぞ」って。結局、僕が全部悪いと。それで終わりですよ。先生にそんなこと言われたら、もうこっちはどん底ですよ。
二宮: 他の先生もみんなそうだったんですか?
内藤: いえ、担任の先生だけは唯一いろいろと対処してくれました。だから、その先生とは未だに交流があります。僕の試合を観に来てくれたこともあります。全日本チャンピオンになった時だったかな、その先生の学校を訪れたことがあるんです。偶然にもその学校の校長先生が、あの時「オマエが悪い」って言った先生だったんです。僕は昔のことは「もういいや」って思うようにしていますから、その時も校長先生と普通に話をしました。「おぉ、頑張ってるなぁ」なんて言われてね(笑)。それからしばらく経ってから、校長先生から連絡があったんです。僕、いじめの話ってテレビや雑誌なんかでいっぱい話をしているじゃないですか。それである日、そういった記事を校長先生が見たらしいんですね。それで「あれってオレのことだよな。申し訳ないことしたなぁ」って言ってくれたんです。その一言で僕の中のしこりみたいなものがなくなりました。
どんな辛いことも“いじめよりマシ”
二宮: 昔いじめられた同級生は今、どうなんでしょう?
内藤: 以前はトラウマが残っていましたよ。僕が全日本チャンピオンをとった時に、地元で祝勝会を開いてくれたんです。役場に中学の同級生が勤めていたこともあって、他の同級生も何人か来たんですね。その中にいじめの主犯格だった子もいたんです。驚きましたよぉ。僕のこと、お祝いに来るはずなんてこと考えれなかったですから。それで僕はこう思いました。「そうか、この会をぶち壊しにきたんだな」と。
二宮: 中学を卒業してからだいぶ経っていたんじゃないですか?
内藤: はい。24歳の時でした。でもね、やられた方は何年経っても「またいじめられる」っていう感覚で見てしまうもんなんですよ。その時も「きっとぶち壊しに来たに違いない。どうしよう……」ってオロオロしましたよ。でも、ふと気づいたんです。「あ、オレ、この時のためにボクシングをやってきたんじゃないか」って。いじめっ子に勝てるなんて思っていなかったけど、「ボクシングやってんだぞ」って言ったら少しはひるむんじゃないか、もしかしたら一発くらい当てられるかもしれない。そんな気持ちでボクシングを始めたんです。だから、ようやくその目標を達成させることができる時がきたんだって思ったんです。
二宮: その子はやっぱり体が大きくて強いんですか?
内藤: いえ、体は普通です。でも僕は一番小さかったですから、僕よりは全然大きいですけどね。それで僕がテーブルごとに挨拶をしてまわっていたら、そいつから僕に近づいてきて「おい」って声をかけてきたんです。「お、とうとう来たか!」って思って身構えていたら、スッと一枚の新聞記事のコピーを目の前に出してきたんです。記事のタイトルには<いじめられっ子、全日本チャンピオンとる>って書かれてあって、「『いじめられっ子』ってオマエのことだよな。じゃあ、いじめっ子はオレか?」って訊いて来たんです。心の中でグッと身構えながら「そうだよ、オマエのことだよ」と。
二宮: 自分が「いじめっ子」って言われていたなんて知ったら、怒ったんじゃないですか?
内藤: ところがね、そいつ下を向いて「やっぱりオレのことかぁ」って。その瞬間、僕がずっと抱いていた復讐の気持ちが一気に消えたんです。もうパーンと何かが……ううん、何て表現したらいいのかなぁ。もう腫瘍が全部一気に取れた感じ。「やった!」っていう気持ちと同時に「あぁ、オレはもう二度といじめにあわないな」って思いました。最初はぎこちなかったんですけど、最後は彼と肩を組んで写真を撮りましたよ(笑)。それ以降、僕を応援してくれるようになりました。わざわざ試合会場に足を運んでくれることもあります。
二宮: いじめから始まって、ボクシングでもいろいろとありました。一つ乗り越えても、またその先に何かがある。内藤さんの前にはいつも高い壁が立ちはだかっているような気がします。
内藤: はい。僕は常に何かを背負って生きているような気がします。
二宮: それでもいつもその壁に立ち向かっていこうとする。その勇気はどこから来るのでしょうか?
内藤: これまでもいろいろなプレッシャーがありました。もちろん辛いと思うこともありますよ。厳しい練習も減量もね(笑)。でも、いつもこう思うようにしているんです。「いじめられていた時よりも楽だよな」って。自分自身にそう言い聞かせているんですよ。それほどいじめは辛かった。だから、僕はいじめは絶対に許しません。
二宮: 社会ではいじめは大きな問題となっています。いじめられっ子の気持ちがわかる内藤さんには、相談や講演の依頼なんかも多いのでは?
内藤: はい、そういったお手紙をいただくこともたくさんあります。今は現役選手なのでなかなかできませんが、引退したら学校や施設などをまわって何かお役に立てたらと考えています。
(後編につづく)
<内藤大助(ないとう・だいすけ)プロフィール>1974年8月30日、北海道出身。高校卒業後に上京し、19歳でボクシングを始め、20歳の時に宮田ジムに入門。96年10月にプロデビューし、1回KO勝ちを収める。2002年4月に世界初挑戦も当時王者のポンサクレック・ウォンジョンカム(タイ)に日本人世界戦最短の1回34秒KO負けを喫した。04年6月、日本フライ級王座を獲得し、翌年10月にポンサクレックとの再戦を果たすも、7回負傷判定負け。07年7月、3度目の挑戦でポンサクレックを判定で破り、WBC世界フライ級王者となる。その後は亀田大毅、ポンサクレック、清水智信、山口真吾を退け、4度の防衛に成功。現在、日本人最年長防衛記録を更新中。39戦34勝(22KO)2敗3分。
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世界的な酒類・食品などのコンテスト「モンドセレクション」のビール部門で、3年連続最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)を受賞したザ・プレミアム・モルツ。原料と製法に徹底的にこだわり、深いコクとうまみ、華やかな香りを実現しました。
提供/サントリー株式会社<対談協力>
天地旬鮮 八吉 八重洲二の丸東京都中央区八重洲1丁目8−9 八重洲ビル1階
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(構成:斎藤寿子)
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