
日本テレビが今年3月末でプロレス中継を打ち切ることになった。同局がプロレス中継をスタートさせたのは開局翌年の1954年2月。「日本プロレス中継」「全日本プロレス中継」そして「プロレスリング・ノア」とタイトル名を変え、深夜枠に移行しながらも生き延びてきた。
ところが、同局が08年9月中間連結決算で37年ぶりに赤字に転落したことを受け、打ち切りの対象となった。55年間も命脈を保った伝統あるコンテンツも、100年に1度の金融危機の荒波を乗り切ることはできなかった。
オールドファンには日本テレビ=プロレス中継というイメージがある。テレビ視聴率の全国調査が始まったのは1962年だが、同局においては上位3番組のうち2番組までをプロレス中継が占めている。ちなみに1位は63年の力道山対ザ・デストロイヤー戦の64パーセントだ。
かつて金曜夜8時から9時までの時間帯はプロレスの指定席であり、黛敏郎が作曲した日本テレビの勇壮なスポーツテーマ曲はネット局を通して全国津々浦々にまで響き渡ったものだ。それが縮小に縮小を重ね、ついに消滅。泉下の力道山も泣いているに違いない。
それにしても、と思う。深夜枠での30分番組。そんなに経費がかかるものなのか。元局員に話を聞いた。
「中継制作費はそんなに高くありません。まぁ200万円から300万円程度。ただスポーツ番組に対してはコンテンツ維持のための放送権利金がかかる。これがノアの場合でも年間では億単位の額になる。スポンサー収入が激減するなか、経費負担に耐えられなくなったということでしょう」
――放送権利金の高いスポーツコンテンツは、今後どれも見直しの対象になるのか?
「おそらく、そうなるでしょう。巨人戦も例外ではありません。08年のシーズン、日本テレビはホームゲームでも地上波の放送を随分、見送った。
巨人戦の放送権利金は1試合あたり1億3000万円程度。制作費は1000万円。ゴールデンタイムで放送するとなれば最低でも12〜13パーセントは欲しい。ところが08年シーズンの平均視聴率(関東地区)は9.6パーセント。現下の経済状況を考えれば09年はもっと苦しいかもしれません」
プロ野球業界に激震が走ったのは08年の9月。東京ドームでの阪神3連戦で巨人が3連勝し、一気に首位に並んだ。
翌日は広島市民球場での広島対巨人戦。ペナントレースも佳境に入り、巨人ファンならずとも注目のゲーム。ところがどの局も地上波では放送しなかったのだ。
「まさか巨人がここまで追い上げるとは誰も思っていなかった。消化試合を放送しても視聴率がとれないという判断で放送権を持っていた局が他の番組に差し替えてしまっていたのです。結果的にはせっかくの盛り上がりに水を差すことになってしまった……」
最近、テレビはお笑いやクイズが花盛り。名前と顔の一致しないタレントが幅を利かせている。いくら経費節減のためとはいえ、あまりにも安易ではないか。
一方で経費がかかり、専門知識や技術を持ったスタッフが必要なスポーツ中継や報道番組はどんどん隅に追いやられている。「貧すれば鈍する」とはこのことだ。
<この原稿は「Financial Japan」2009年3月号『勝者の実学』に掲載されました>
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