二宮: 今回はミスタータイガースの登場です。先日の「ザ・プレミアム・モルツ ドリームマッチ」(東京ドーム)ではランディ・バース、岡田彰布さんとタイガース伝説のクリーンアップが復活しました。
掛布: 3人お揃いのユニホームを着て、野球をやるのは引退して初めて。バースとは今でも年に1度は会っているんですが、懐かしかったです。


 ビールと焼肉の相性は抜群!

二宮: さぞ、試合後のビールはおいしかったでしょうね。現役時代から掛布さんはお酒も強いと聞いていましたよ。
掛布: でも、最初は先輩たちに誘われても、ソフトドリンクばかりだったんです。それがプロ入り3年目の夏、川藤幸三さんに初めて焼肉屋に連れて行ってもらった時に、ビールのおいしさを知りました。「ビールと一緒のほうが食が進むから飲んでみろ!」と勧められて試してみたら、焼肉の甘いタレと、ビールのホップの味が相性抜群。すごくおいしかった。それ以来、お酒が大好きになったんです。

二宮: では、ビール党ですか?
掛布: ええ。あとはワインも好きかな。当時の阪神は合宿所でワイン講座も開催されていて、先生が効用や飲み方を教えてくれたんです。それからケースでワインを取り寄せて、ずっといただいていましたよ。

二宮: 球界のワイン通といえば、今では江川卓さんが有名ですが、掛布さんのほうが先だと?
掛布: 江川にその話をしたら「すげえな」って驚いていました。あとは焼酎もいいですね。甲子園の近くにあった串カツ屋のおかみさんが僕の大ファンで、旅行に行った時に必ず各地の焼酎を買ってきてくれたんです。それでお店に行くと、いつもおいしい焼酎を出してくれた。店の棚の上には、「掛布専用台」まであって、僕が飲むためのブランデーと焼酎をキープしてくれていたんですよ。

二宮: この調子だとお酒の数だけ、思い出話が出てきそうです(笑)。
掛布: 本当にお酒のおかげで、いろんな方からもかわいがってもらっていましたね。今流行りのハイボールも22、3歳の時に体験しましたよ。CM出演していた会社の宴会に誘っていただいた時、副社長さんがオールドを炭酸で割って飲んでいたんです。副社長と同じものをいただくのは失礼だと周りに言われながらも、1杯だけいただきました。

二宮: オールドのハイボール。贅沢ですね〜。
掛布: 当時はオールドといえば、高級品でしたよね。その後、副社長がお亡くなりになって僕が代わりにハイボールをいただくことになりました。
 新聞記者ともよく飲みに行きました。記者相手に説教もしましたよ。ある記者から「掛布さんはいいよ。子供ができても活躍の記事とかいろいろなものが残せる」と言われたので、「それはお前らも原稿が残せるから一緒じゃないか。だけどホテルから借りてきたようなボールペンで記事書くからダメなんだ」って。野球選手がバットにこだわるように、記者もペンにはこだわったほうがいいと思ったんですよ。だから「小説家みたいに自分の万年筆やボールペン買ってこい! それで書いた原稿を残しておけば財産になる」と話したんです。翌日、彼らは「掛布さん、(ホテルに)ボールペン返してきました」って言っていましたね(笑)。

 風が変わった甲子園

二宮: お酒の話題は尽きませんが、やはり今年のタイガースについて掛布さんのご意見をお伺いしたい。開幕前の掛布さんの予想を見ると、阪神は4位。シビアですが、今のところ当たっています。
掛布: ここ数年の強い阪神の形が崩れてくる時だという予感がしていたんです。特にピッチャーが崩れてくると思ったんですよ。もうひとつはケビン・メンチという外国人に対して過大評価しすぎました。キャンプで彼の打撃を見ましたけど、確かに練習ではいい。ただ、あのミートポイントで本当に速いボールに対応できるかわからないなというのが僕の印象でした。
 ところが早い段階でメンチは使えると判断して、去年ファーストでゴールデングラブ賞を獲った新井貴浩をサードにコンバートした。これが新井の野球のリズムを崩してしまったのではないかと思うんです。もともと守りには不安のある選手ですから。

二宮: 開幕前、真弓明信監督にお会いしたところ、「今年は新井に5番で振り回させる」とプランを明かしていました。ところが新井選手の現状は打率2割2分前後で、本塁打もようやく2ケタに乗った程度。近年にない不振です。
掛布: 5番での起用は間違っていないと思います。ただ、キャンプ時のようなバッティングができていない。開幕当初に前を打つ4番の金本知憲がよく打ったでしょう? あれで自分も打たなきゃ、と焦って打撃を崩してしまった。

二宮: 金本選手は4月の打率が3割7分9厘。3打席連続本塁打も2度記録しました。神がかり的な活躍でした。ただ、以降の急降下は真弓監督も誤算だったでしょう。そしてメンチも期待外れ。元西武のグレイグ・ブラゼルを緊急補強しましたけど、泥縄感は否めなかった。
掛布: 僕は昨年あたりからポスト金本の必要性を感じてきました。本当は新井を4番にして金本を5番にするのがベストでしょう。ところが、新井は昨年3番を打って、つなげようという意識が強くなりすぎてしまった。

二宮: 狭い広島市民球場から広い甲子園に本拠地が変わった点も新井選手の打撃を小さくしている気がします。
掛布: もうちょっと、いい意味でわがままに野球をやらせてあげたほうが良かったかもしれませんね。だって、今年の甲子園は打球が良く飛ぶ。改装の影響でグラウンド内の風向きが変わったんです。バックネット裏の銀傘が大きくなって風の抜け道がなくなった。さらにネット裏のスタンドと銀傘の間に隙間があって、そこから風がホームからセンターに吹き抜ける。実験して確かめたわけではないですが、打球が風に乗って飛距離が伸びる気がしています。
 だから、今年の阪神の外野陣は打球の目測を誤ったようなミスが多くないですか? 今、甲子園では高校野球が行われていますが、例年と比べてホームランや外野のエラーが目立つと思います。ぜひ、そこに注目してみてください。

 鉄人・金本に迫る決断の時

二宮: ポスト金本の問題は真弓監督も頭が痛いでしょう。
掛布: 誤解のないように言いますが、僕は1年でも長く金本に頑張ってほしいし、いい成績を残してもらいたいと思っています。だけど、ただゲームに出て続けているからって、成績が悪くても周囲が納得しているなら、それは間違っています。試合に出る以上、成績を上げて初めてチームに貢献できるわけですから。

二宮: 年齢や記録は関係ない、現状でチームの勝利に貢献できるかという観点で判断すべきだと?
掛布: ええ。確かにこれまで金本がやってきた野球はすごいですよ。ただ今年の金本はすごくない。金本が居座り続けることで、間違いなく若手の育つチャンスはひとつ消えている。ここが実績あるベテランの苦しいところです。僕自身もそうでしたね。引退前は当時の監督に迷惑をかけたと思っています。最終的には金本がチームのために自分で大きな決断を下さなければいけない時期が訪れるのではないでしょうか。

二宮: ここまで来ると、真弓監督が交代の決断を下すのは大変でしょう。
掛布: 金本の何が何でも試合に出るという姿勢はプロ野球の選手として大切なことなんですよ。昔、広島に野村謙二郎が入団した時、高橋慶彦が僕にこんなことを言いました。「掛布さん、野村が守る試合はありませんよ。僕が全試合に出ますから」。プロなら、これくらいのプライドは大切にしていていいと思うんですね。だけど、今の金本は自分を追いつめていて苦しそう。大きな決断を下したほうが、もっと彼本来の野球ができる気がするんです。

二宮: となると問題は、金本を追い抜けるような若手がいるか。
掛布: そこなんですよ。残念ながら金本を納得させる若手が出てこない。この点は僕も金本に同情的です。実は僕も晩年、ファーストへコンバートする構想が出た時、コーチにこう言った記憶があります。「オレはファーストにコンバートされることに対してどうのこうの言いたいわけじゃない。ただオレを負かすだけのサードの若手がいるか? オレを脅かすサードを育てようとしたか?」って。「今でもオレは若い人より、練習しているよ。オレよりも数多くノック受けた若手はいるか?」とも。
 金本が今のレベルを維持している裏には、それこそ氷山の隠れた部分のような、とてつもないトレーニングや準備があるはずなんです。だから、それに負けない練習をするような若手が金本の前に出てこないとダメ。そうしないと金本自身も自分を納得させられないでしょう。

二宮: そこには選手個人ではなく、球団の構造上の問題があるのではないでしょうか。このところの阪神は金本に新井とFAで主力をどんどん補強してきました。獲得には至らなかったものの、福留孝介(カブス)や三浦大輔(横浜)にも手を出した。次は栗原健太(広島)というウワサもあります(笑)。他球団からの補強に頼って、選手を育てる環境がおろそかになっている部分もあるのでは……。
掛布: だから、その意味でまず若いレギュラーの鳥谷敬が、もっと闘志を前面に出してチームを引っ張っていく形をつくってほしい。その環境の中で元気な若手がどんどん育ってくれば、ようやく金本も記録にピリオドを打つことができる。

二宮: そういえば掛布さんの後、ミスタータイガースと呼ばれる選手が出てこない……。
掛布: 本当に早く金本に代わる4番打者が、生え抜きで出てきてほしいですね。それをどこかで金本も望んでいるはずです。僕はファーストコンバートの話が出た時、コーチにはあんなことを言いましたが、黙ってファーストミットだけは作っておきました。実は安藤統男さんが監督に就任した際、「カケ、あと3年だけサードで頑張ってくれ。若手を獲るから3年後はファーストにコンバートする。あとは打つ方だけ考えろ」と言われていたんです。それで入団したのが八木裕(現2軍打撃コーチ)。本当は清原和博を獲ってサードにする予定だったらしいです。そういうビジョンを球団や監督が話してあげることも必要ですよね。

二宮: 実は金本も、誰かが話をしてくれるのを待っているかもしれない。
掛布: きっと待っていますよ。所詮、人間は弱いですから。監督ときちんと話し合いをした結論であれば、4番を外れることもベンチに退くことも、おそらく気持ちよく決断できると思うんです。ただ、僕の経験上、なかなか監督は相談に乗ってくれない。報道や第三者を通じて監督の話が伝わるから、余計にややこしくなる。真弓さんが、どのように金本とコミュニケーションをとっているかは気になるところですね。

 中日の欠点と落合野球

二宮: さて、今季の阪神低迷の理由はいろいろあるとはいえ、昨年は2位。途中までは首位を独走していました。巨人、阪神、中日のAクラスと、広島、東京ヤクルト、横浜のBクラスとの差はまだあるように感じていましたが、4位に沈んでしまうと考えた理由はどこに?
掛布: 僕は今年の6球団で一番怖くて上位に顔を出すのがヤクルトだと思ったんですよ。投打のバランスが昨年と比べると非常に良くなりました。若いピッチャーも出てきましたし、リリーフ陣もしっかりしている。打線も新外国人のジェイミー・デントナが4番で当たれば、アーロン・ガイエルもそこそこ打てると見たんです。

二宮: 圧倒的な戦力を誇る巨人の首位は順当でしょう。ただ、2位・中日の頑張りは少し予想外では? エースの川上憲伸(ブレーブス)と主砲のタイロン・ウッズが抜け、開幕前は苦戦を予想する評論家も多かった。
掛布: 落合博満監督は自分たちのチームをよく把握できていますよね。キャンプでも話をしたのですが、中日というチームは自分たちの野球を窮屈に考える選手たちが多かったと。もっとレベルアップしないと、もっといいプレーをしないと、と深刻に捉えすぎてしまっていたようです。ある意味、素晴らしいチームとも言えますが、だから短期決戦に勝てなかった。
 落合監督によれば、その代表格がメジャー移籍した福留。審判のボールストライクの判定と自分のストライクゾーンの感覚が2球ぐらいズレると、もうバッティングの調子が狂ってしまうそうです。

二宮: 確かに昨季のメジャー1年目も最初は好調だったものの、プレーオフでは散々な結果でした。
掛布: だから落合監督は昨年あたりから、こう言っていました。「もう変えるよ、全部」と。ウッズと契約を結ばなかったことも、「今の中日の野球は、あくまでもピッチャー中心の守りの野球。ウッズと今の(トニ・)ブランコの守りなら、こっちの方が良いんだよ。こいつも使えば、そこそこ打つと思うんだ」と前向きに考えていました。

二宮: ブランコは“そこそこ”どころか現在、本塁打、打点の2冠王です。
掛布: 主力が抜けたとはいえ、監督の目指す野球に、しっかり選手を当てはめていますよね。それとやはりピッチャーがいい。川上がメジャーに行っても1年間、戦えるだけのコマをきっちり揃えてきました。

 3番・鳥谷、5番・新井を貫け!

二宮: 阪神の話に戻すと、開幕前に真弓監督はリリーフ陣の負担を減らしたいと話していました。だから先発ピッチャーになるべく長いイニングを放らせたいと。それは考え方として充分に理解できます。ただ、下柳剛のようなベテランまで引っ張るのは酷でしょう。ファンからは継投が遅いという批判が出ています。
掛布: ご指摘はその通りですね。でも、その反面、能見篤史といった若い先発投手が伸びてきている面は評価してほしいんです。個人的にはもっと真弓さんには自分のやりたい野球を堂々と胸を張ってやってほしい。別に、それでBクラスでもいいじゃないですか。本当は強い時に若手を育てていく必要があったのに、今までそれができていなかったんですから。

二宮: でも、阪神のような人気球団では、なかなか勝敗を度外視して若手に切り替えるのも難しい。
掛布: あのお客さんですからね……。勝負を捨てるわけにはいきませんよね。それなのに、今年の阪神を見ていて寂しいのは、グラウンドに行って阪神の戦う空気が感じられないことなんです。

二宮: それは具体的には?
掛布: 監督のやろうとしている野球と、選手個々のレベルで考えていることがイコールになっていない。たとえば、選手の中ではまだ出番が先だと思っていたのに、突然、代打を告げられたら、選手のなかで「ここじゃないだろう」と感じるはずです。そういった「WHY? なぜ?」という雰囲気が充満している。

二宮: 岡田前監督の野球に慣れ親しんできた選手にとまどいがあると?
掛布: ええ。しかも岡田監督時代は、そのやり方で勝ってきましたからね。真弓さんにしてみれば、一番難しい時に監督になったと思うんです。だけど、85年の日本一の仲間として、岡田が結果を残したわけですから、真弓さんも自分のカラーを全面に出してほしい。今のままでは真弓さんの顔が見えないまま、ズルズル行ってしまう。これは寂しすぎます。

二宮: 選手起用でも、どことなく遠慮が感じられます。
掛布: 僕らの時だって最下位を何度も経験していますし、チームに浮き沈みがあるのは当然です。だからこそ、同じ負けでも来季につながる戦いをしてほしいんですよ。後半に入って、真弓さんは3番・鳥谷、5番・新井と打順を開幕時のオーダーに戻しましたね。ここは真弓さんの考えなのだから、シーズン終了まで貫くべきです。もし、再びここに手をつけたら、真弓野球は崩壊してしまいますよ。

(後編につづく)


<掛布雅之(かけふ・まさゆき)プロフィール>
1955年5月9日、千葉県出身。習志野高時代には甲子園に1度出場。73年にドラフト6位で阪神に入団。入団1年目から1軍に定着し、2年目にはサードのレギュラーに。76年からは4年連続で打率3割以上をマークし、79年には当時のチーム記録となる48本塁打を放ってタイトルを獲得した。以降、2度の本塁打王と1度の打点王に輝く。85年にはバース、岡田彰布と「バックスクリーン3連発」を放つなど、4番打者としてチームを牽引。初の日本一に貢献した。「ミスタータイガース」としてファンの人気を集めながらも、88年に33歳の若さで現役を引退。現在は野球解説者として活躍している。現役時代の通算成績は1625試合、1656安打、打率.292、349本塁打、1019打点。ベストナイン7回。ゴールデングラブ賞6回。



★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
 
世界的な酒類・食品などのコンテスト「モンドセレクション」のビール部門で、3年連続最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)を受賞したザ・プレミアム・モルツ。原料と製法に徹底的にこだわり、深いコクとうまみ、華やかな香りを実現しました。

提供/サントリー

<対談協力>
自然酒庵 品川虎之介 はなれ
東京都港区港南1−9−36 NTTデータビル アレア品川B1
TEL:03−6718−2731
営業時間:
昼 11:30〜15:00(月〜土)
夜 17:00〜23:30(月〜土)
17:00〜23:00(日・祝)
※ラストオーダーは1時間前、第3日曜定休

☆プレゼント☆
掛布雅之さんの直筆サインボールを読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「掛布さんのサインボール希望」と明記の上、下記アンケートの答え、住所、氏名、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。
◎アンケート◎
 この対談を読んであなたは、今後ザ・プレミアム・モルツを飲みたいと思いましたか。
A.是非飲みたい
B.飲みたい
C.どちらともいえない
D.飲みたくない

(構成:石田洋之)
◎バックナンバーはこちらから