二宮: スポーツの指導者で企業経営にここまで詳しい方も滅多にいないと思いますが、ご自分が所属していた新日本製鐵(以下、新日鐵)については相当、勉強されたでしょう。
植田: ありがとうございます。もちろん、新日鐵のことについてはルーツから勉強しました。


二宮: 植田さんが入社した頃は、どんな採用方法だったのですか?
植田: 私の頃は、新日鐵ではスポーツの奨学金制度はなくて、全員が一般採用でした。ナショナルチームに選ばれるような選手でも、社員として将来会社の力になり得る人物かどうか、きちんと面接等でチェックして選考するんです。私はこの採用方法は素晴らしいと思いますね。

二宮: 新日鐵は野球界でも優秀な方を輩出していますよね。例えばこれまで投手コーチとして7度のリーグ優勝、4度の日本一に貢献し、今年横浜ベイスターズの監督に就任した尾花高夫さんも新日鐵出身者でしたよね。あるいはメジャーリーグのパイオニア野茂英雄……。
植田: はい、尾花さんも野茂さんも新日鐵堺の選手でした。早稲田大学野球部の應武篤良監督も新日鐵広畑の出身です。

二宮: それから格闘家の吉田秀彦選手がバルセロナ五輪で金メダルを獲得した時は新日鐵柔道部に所属していました。
植田: はい。バレーボールでも女子は前監督の柳本晶一さん、現監督の眞鍋政義さんと新日鐵のバレー部出身者が続いているんです。私が今あるのも、本当に新日鐵に入れていただいたおかげだと思っています。

二宮: 日本経済団体連合会の会長にも稲山嘉寛さんや斎藤英四郎さんらが就任されています。
植田: はい。斎藤英四郎さんの言葉に「楽中の楽、これ誠の楽にあらず。苦中の楽、これ誠の楽なり」というものがあるんです。毎日が休日だったら楽しくないだろうと。毎日苦しみながらも一生懸命働くから、週末の休日が楽しい。だから、汗をかいて働きなさい、という意味なのですが、僕はこの言葉が大好きなんです。

 最重要課題は技術力向上

二宮: なるほど。とてもいい言葉ですね。話は変わりますが、今年は2010年ということで、早いものでもう次のロンドン五輪まで2年となりました。植田さん自身、代表監督としてそろそろ本腰を入れていかなければいけないと思っていらっしゃるのでは?
植田: そうですね。これからは優先順位を決めて、計画的に取り組んでいかなければいけないと思っています。昨年は世界選手権の予選やアジア選手権などいろいろありましたが、今年は9月に開催される世界選手権一本。そこに照準を合わせ、チームのピークをもっていこうと考えています。今はそのための準備をしているところです。

二宮: 2008年の北京五輪では4大会ぶりに出場したわけですが、やはり五輪の舞台を経験しているのとしていないのとでは大きな差が出てきますよね。
植田: はい、本当にそう思います。1972年のミュンヘン五輪で松平康隆監督の下、日本の男子バレーは金メダルを獲ったわけですが、その1年前に松平さんが書いた本があるんです。そこにこう書かれてありました。「オリンピックに出たことのない者が、オリンピックでメダルをとるなんて言えないんだ」と。まさにその通りだと思います。我々は北京五輪で勝利を挙げることはできませんでしたが、その舞台を踏んだことによって気づいたことがありました。それらをひとつひとつ埋めていけば、ロンドンでは必ず目標を達成できると信じて今、チームづくりを進めています。

二宮: 北京五輪で見えてきた課題とは?
植田: 技術力の向上が最重要課題だと考えています。北京五輪では、世界で戦えるほどの高い技術力が日本にはなかったんです。しかし、そう簡単には高い技術をマスターすることはできませんから、長い時間が必要です。ですから、ナショナルチームのみならず、若い世代の養成環境がどうなっているのかをもう一度チェックしたいと思っています。今、何が必要とされているのか。お金なのか、それとも栄養サポートなのか……。
 もちろん戦術面でのチェックもしています。考え抜いた際に行きついた答えは、日本人しかできないようなブロックの技術といったような、そういう指先にまで行き届いた強化をすること。世界で勝つには、そういう細かい技術で勝負していくしかないのです。

 北京で気づいた“日本人らしさ”の重要性

二宮: 確かに、急激に日本人の身長が高くなったり、パワーがついたりすることは考えられませんからね。
植田: そうです。だからこそ、ブロックにまず当てて切り替えしをするんです。そのためにはブロックに当てたボールをきちんとセッターに戻すという技術が必要です。それができれば、そのうちに相手が崩れてくる。そこに日本の勝機があると考えています。

二宮: まさにイノベーションですね。それが北京五輪を経験したことで見えてきたと?
植田: はい。例えばサーブであれば、卓球のトップ選手のように、ほぼ100%狙ったところに打てるような技術を習得するんです。サーブミスを減らして、なおかつポイント率のパーセンテージも上げていく。これは何もバレーボール界だけのことを言っているのではないのです。日本が昔から誇ってきた精密さや正確さといった高い技術を男子バレーが改めて世界に証明することができれば、国民にも何かを伝えることができるのではないかと。

二宮: 北京で気づいたことは「日本人らしさ」だったと。日本には日本のやり方があると。
植田: はい。そこにはコミュニケーションとか、人と人とのつながりとかが密接に関係してくるわけです。こうしたことを昨年から選手にも伝えてチームづくりを行なってきました。だいぶ浸透してきているのですが、まだメダル圏内にまでは到達していないですね。

二宮: ただ、今のナショナルチームにとって北京での経験が大きな財産になっていることは間違いないでしょうね。
植田: はい、そうだと思います。実際、選手の口からそういう言葉が出てきていますから。それと、もう一つ我々が勝つために必要なのは長期的ビジョンです。企業でも長く繁栄し続けるには、その前の段階からきちんと構想をたてていかなければいけませんよね。スポーツだって同じです。日本のバレーボール界をさらに発展させるためには、今からいろいろとビジョンをもって取り組んでいかなければいけません。

 うどんは安くて美味いのが一番!

二宮: 植田さんは私と同じ四国出身。香川ですから、うどんにはうるさいでしょうね(笑)。
植田: はい、うるさいですよ! 香川のうどんって西に行けば行くほどうまいと言われているのですが、私の出身地の東かがわ市は東側にあるんです(笑)。

二宮: あぁ、確かにうどんで有名な善通寺や坂出は西側にありますね。
植田: そうです、そうです。

二宮: でも、なぜ西側の方がうまいんでしょうね。
植田: 昔、西側にうどん屋が多かったようですね。それで競争が激しかったものだから、生き残ったお店はうまいと。そこで生き残れなかったお店は東側に来たと……。いや、ただの噂です(笑)。帆立貝が月夜に水面にまで浮んできて移動するっていう話がありますけど、それと同じくらいのレベルの話ですよ。
 でも、香川県人として許せないのは850円とかでうどんを売っているところがあるでしょ。考えられないですよ。香川では150円ですからね。

二宮: 確かに高いですよね。私も愛媛出身ですから、うどんは昼間から食べていましたけど、だいたい280円くらいなものでしたよ。せいぜい高くても300円とか400円くらい。
植田: 本当にそうですよ。

二宮: 植田さんはお酒も食べることもお好きなんですね。
植田: はい。夜はお酒を飲んで、よくカラオケで歌ってますよ(笑)。

二宮: どんな歌を歌われるんですか?
植田: ゆずから始まりまして、コブクロとか……。

二宮: お若いですねぇ。
植田: いろんなジャンルを歌えますよ。ナショナルチームのトレーナーなんて、アニメソングが十八番です。「宇宙戦艦ヤマト」とか「ガッチャマン」とか。

二宮: 「サインはV」は?
植田: もちろんですよ(笑)。大林素子なんて最後まで歌えますよ。今度ぜひ、聴いてあげてください。

<植田辰哉(うえた・たつや)プロフィール>
1964年7月25日、香川県生まれ。中学からバレーボールを始め、大阪商業大学高等学校、大阪商業大学を経て新日本製鐵に入社。日本リーグでは78〜80年に3連覇を果たし、新人賞、スパイク賞(2回)、ブロック賞(2回)などを受賞した。92年バルセロナ五輪に主将として出場し、チームを6位入賞に導く。新日鐵のコーチ、監督などを経て、2004年より全日本男子の監督に就任。08年には4大会ぶりのオリンピック出場を果たした。09年度より全日本男子監督に再任され、アジア選手権優勝、世界選手権予選1位、グランドチャンピョンカップ32年ぶりの銅メダルを獲得した。

★本日の対談で飲んだお酒★[/color]
 
世界的な酒類・食品などのコンテスト「モンドセレクション」のビール部門で、3年連続最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)を受賞したザ・プレミアム・モルツ。原料と製法に徹底的にこだわり、深いコクとうまみ、華やかな香りを実現しました。

提供/サントリー

<対談協力>
梨の家
東京都港区港南2丁目15−2品川インターシティS&R棟3F
TEL:03―5479−5219
営業時間:11:00〜22:00 

☆プレゼント☆
植田辰哉監督のサイン色紙を読者2名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「植田辰哉監督のサイン色紙希望」と明記の上、下記アンケートの答え、住所、氏名、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。
◎アンケート◎
 この対談を読んであなたは、今後ザ・プレミアム・モルツを飲みたいと思いましたか。
A.是非飲みたい
B.飲みたい
C.どちらともいえない
D.飲みたくない

(構成:斎藤寿子)
◎バックナンバーはこちらから