日本のサッカー界は新しい世代が台頭しつつある。日本代表をみても23歳の阿部の同年代や身近な選手が日の丸を背負っている。6月のキリンカップでは昨年までの同僚・柴崎晃誠(川崎F)、先日のW杯アジア3次予選ではユース時代から面識のある田中順也(柏)が日本代表に選出された。さらに学年はひとつ下になるが、香川真司(ドルトムント)も代表の中心選手として活躍している。
 香川とはユース時代から対戦経験がある。
「香川選手はその頃からとても有名で、僕も試合前から知っていました」
 阿部も川勝良一監督からは香川や清武弘嗣(C大阪)のようなタイプと評されている。それだけに本人も彼らに対する意識は小さくない。
「香川選手はテレビで見ていてもうまいと思いますね。特に一歩目が速いです。またボールをもらう場所もいいですし、トラップもとてもうまい。パスの受け方などを見ていて、こういう風に受けるのかと、参考にする時もあります」

 憧れのジャパンブルー

 日本代表アルベルト・ザッケローニ監督は常々、「すべての選手に門戸は開いている」と発言している。この言葉どおり、先日のW杯予選には予備登録も含めて、J2のFC東京から4人が代表に選出された。また、8月の日韓戦ではU−22代表・清武の召集が話題となった。
「クオリティの高い活躍を継続していた」
 ザッケローニ監督は清武抜擢の理由をこう明かしている。イタリア人指揮官が代表選考の基準として挙げる「継続性」。ストライカーにとって、継続性を示す指標としてゴール以上にわかりやすいものはない。阿部は9月18日の横浜FC戦で2ゴールを上げ、この時点でJ2得点ランキングのトップに並んだ。

 川勝は普段から阿部について「代表を目指せる選手」と本人や周囲にあえて口にする。
「これからは相手のマークが厳しくなってくる。その上を行く選手がもうひとつ上のステージへ行ける」
だからこそ、より高い次元を見据えてほしい。指揮官の発破は期待の表れだ。

「やはり一度は代表がどんなところなのか経験したいですね」
 今季2度目の東京ダービー(対FC東京)が行われる10月30日はJ1の試合開催がない。代表選手が多いFC東京との試合には、監督あるいは代表スタッフが視察に訪れる可能性がある。ここで目に留まり、最終的にJ2得点王になるようなことがあれば、阿部のザックジャパン入りへの道が開けるかもしれない。

 3年後のブラジルW杯では26歳。サッカー選手としては最も脂の乗る年齢である。だが、本人は「W杯出場は現実味がないですね」とあくまでも謙虚だ。
「まずはクラブで結果を残すことが大事。そんなに先を見据えずに、ひとつひとつ進んでいこうと思っています」

 昇格のキーマン

 ひとつひとつ進んだその先に阿部はどんな選手像を描いているのか。
「ベテラン選手たちの判断や経験を活かしたプレーは見ていてとても参考になります。5年後、10年後になった時はどうしても衰えが出てくる。なので僕も、体の強さだけではないところで勝負できる選手になっていきたいです」

 さらに目標とする選手については、イングランドのドリブラーを挙げた。
「ジョー・コール(リール)のプレーはよく参考にしていますね。他にルイス・スアレス(リヴァプール)も好きな選手です」
 2人とも阿部同様、ゴールに向かい積極的に仕掛けて行くスタイルを身上とする。こういった選手たちの動きを練習後や休日にサッカーの専門チャンネルでチェックするのが日課だ。「オフの日もサッカーをしていてもいい」と語るほど、今、23歳はサッカーにのめりこんでいる。

「海外のサッカーは昔からとても興味があります。その中でもスペインリーグが好きです。いつか海外でやるのなら、スペインでプレーしてみたいですね」
 スペインリーグは、ダビド・ビジャ(バルセロナ)のようにボールを受ける前の動き出しで勝負するFWが多い。動き出しなら阿部も得意とするところ。実際にプレーするとなれば、持ち味が活かせるリーグかもしれない。

 一方、川勝は阿部に適している国が他にもあると語る。
「タフだから、イタリアでも通用すると思う。勇気もあるしね。セリエAの下の方からスタートして、ドイツとかスペインとかに行ってくれれば一番いいと思う。それが老後の楽しみだね(笑)」
 この話を本人に告げると、「セリエAのDFは、とても強いイメージがあるので少し恐いですね」と笑った。ただ、イタリアには、阿部のように動き出しで勝負するFWは少ない。いずれにしても世界で勝負できる武器を日本でしっかりと磨いておけば、夢は現実味を帯びてくる。

「チームを昇格させて、ヴェルディの絶対的な存在になってもらいたい。そして最終的には世界を目指してほしいね。その時は最大限応援する」
 無名の選手からの世界を股にかけるストライカーへ。大学時代からの恩師は教え子のサクセス・ストーリーを思い描いている。

 現在、クラブは残り11試合となり、昇格圏内である3位との勝ち点差は7。これは十分に逆転可能な数字だ。阿部が今季得点した試合は6勝1敗1分。そのゴールとチームの上昇ラインが比例しているだけに、背番号19の活躍がカギを握っていると言っても過言ではない。

「自分が結果を出して、それでチームが勝つのがベストです。でも、チームの勝利が第一なので、とにかくそれだけを考えています」
 昇格に貢献し、指揮官のいう「絶対的な存在」となった時、阿部拓馬の目の前には間違いなく新たなステージが見えてくる。

(おわり)
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阿部拓馬(あべ・たくま)プロフィール>
1987年12月5日、東京都生まれ。2人の兄の影響でサッカーを始め、横河武蔵野FCユース、法政大学を経て、2010年から東京ヴェルディに加入。現在、監督を務める川勝良一には大学時代から指導を受ける。1年目はリーグ戦に20試合出場し3得点。迎えた今シーズンはケガの影響で開幕戦には間に合わなかったが、6月に初先発を果たすと、そこから17試合で12ゴールと活躍。クラブのJ1昇格のキーマンとして期待されている。ゴールへ仕掛けていく積極性と、思い切りのいいシュートが武器。身長171cm、体重68kg。背番号19。

(鈴木友多)

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