9月29日、東京ヤクルトは中日に完封負けを許したものの、2年連続のAクラス(3位)、クライマックスシリーズ(CS)出場が確定した。
「なんとか、ひと区切りつけることができて良かった」
小川淳司監督もホッとした表情を見せていた。
スワローズの名称は旧国鉄の特急「つばめ」号からつけられたものだが、今季はジェットコースターに乗っているようなシーズンだった。開幕に優勝候補の巨人に2勝1敗と勝ち越し、4月末までは15勝8敗の好スタート。しかし、燕の季節になって低空飛行。交流戦期間中には10連敗も喫した。
6月は勝ち越して、やや息を吹き返したものの、勝負どころの7、8月では16勝24敗6分。宮本慎也、ウラディミール・バレンティン、相川亮二……主力が相次いでケガで戦列を離れ、開幕スタメンに名を連ねた9選手のうち、故障離脱がなかったのは田中浩康のみという有り様だった。頼みの綱のエース・石川雅規、左腕の村中恭兵も不調で、一時は最大借金8、3位・広島とのゲーム差も3.5まで広がった。
「皆、ケガしたくてケガしているわけではない。ケガした人間は悔しい思いをしているはず。僕たちが勝っていくことで救われる」
そう語って奮投していた館山昌平も打球を足に当てて、9月頭に10日間、登録を抹消。畠山和洋、ラスティングス・ミレッジとケガ人の連鎖は続き、ネット上ではファンから「ケガ人だけでオーダーが組める」「呪われたチーム」と揶揄された。
ただ、どんなに負けが込み、苦しいチーム事情でも、現場に悲壮感は漂っていなかった。
「まだ試合は残っている。切り替えてやるしかない」
スーパーサブの三輪正義がそう自分に言い聞かせるように前を向いていた。ピッチャーではこのコーナーでも取り上げた日高亮、山本哲哉、野手では中村悠平、比屋根渉、雄平……。おそらく開幕時点では計算に入っていなかったであろう選手たちが必死に穴を埋めた。
そして燕は秋になって不死鳥のごとく舞い始めた。9月に入って勝ち星を伸ばし、勝負どころの9連戦で8勝1敗。CS争いを繰り広げていた広島の失速もあり、一気に貯金生活に突入し、3位を確実にした。09年は8月の大失速から、最後の最後で滑り込んでの3位。昨年には最大10ゲーム差をつけながら、中日に最後の最後でひっくり返されての2位。厳しい戦いで喜びも悔しさも味わった経験は、間違いなくチームの底力になった。
本当の戦いはこれからだ。幸いなことにCSまでには松岡健一、ミレッジ、上田剛史ら故障者が復帰し、ようやくベストメンバーで戦えるメドが立ってきた。「レギュラーじゃない選手が埋めていって活躍した」と指揮官が認めるように、図らずも代役を務めた選手が1軍の試合でレベルアップし、チーム内では新陳代謝が起きている。まさに火の中に飛び込んで死んでも、また新たに生まれ変わるフェニックスのようだ。その中から八木亮祐が1日の巨人戦で7回無失点と好投し、初勝利を挙げたように、若燕たちがはばたきつつある。
「1、2位にこれだけ離されたことは認めざるを得ない」と小川監督は謙虚に話すも、名古屋に渡って中日、東京に戻って巨人を倒せば日本シリーズ進出、日本一への挑戦権を得られる。CS進出が決まり、選手たちも表情が変わってきた。畠山は「しょせん3位だから失うものは何もない」と話し、石川は「(勝てなかった)2カ月分の悔しさをCSに全部ぶつける」と意気込む。
「尾張では終わらない」
そんな球団がつくったキャッチフレーズも現実にできる期待感は高まっている。
一昨年、3位から日本一に輝いた千葉ロッテの例もある。燕は冬になると南へ帰ると言われてきたが、近年は温暖化の影響か日本で越冬する種も多いという。熱い燕の季節は、まだ終わらない。
(次回は10月15日に更新予定です)
(石田洋之)
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