
東京ヤクルトの西都2軍キャンプがにわかに注目を集めている。3月のWBC、日本が1次ラウンドで対戦するブラジル代表の候補選手たちが3名もいるからだ。中軸としての期待がかかるユウイチ、右腕のラファエル・フェルナンデス、左腕の金伏ウーゴ。日本代表の偵察部隊もメディアも彼らの仕上がり具合を確認すべく、次々と西都を訪れている。
(写真:ユウイチら代表メンバーは来日したチームに23日から合流予定) ブラジルで野球の普及に一役買ったのは、日本から渡った移民と言われている。サッカー王国において、野球はマイナー競技の位置づけだが、日系人を中心に競技の火が絶えることはなかった。
ヤクルトも現地法人があることから、2000年に野球アカデミーを開校。ブラジル野球の発展に寄与している。そのアカデミーで基礎を教わり、日本の地でプロになったのが、フェルナンデスと金伏だ。
フェルナンデスは白鵬大から09年、育成選手として入団した。150キロを超える速球が武器だ。一昨年の6月に支配下登録され、昨季は念願の初勝利をあげた。7月1日の阪神戦、2点ビハインドの6回に3番手として登板し、1死満塁のピンチを切り抜けると、その裏、田中浩康の逆転3ランが飛び出した。
「今までは結果ばかりを求めて焦っていました。でも、だいぶ1軍の雰囲気に慣れて気持ちのコントロールができるようになりました」
夏場にリリーフとして9試合に登板。12イニング3分の2を投げて10四死球と制球力には課題を残すが、着実に歩みを遂げている。
そして11月のWBC予選ではブラジル代表の一員として本大会出場への立役者となった。本戦への最後の切符をかけたパナマ戦、先発したフェルナンデスは6回2安打無失点と好投。ブラジルは3回にあげた虎の子の1点を守り切り、逃げ切り勝ちを収めた。
好投の要因となったのが、昨年から取り組んできたチェンジアップだ。右バッターのヒザ元、左バッターの外へ逃げていくボールがおもしろいように決まった。
「パナマはスタメンに右バッターがズラリと揃っていました。僕のカットボールは右バッターの外へ逃げるので、ヒザ元に沈むチェンジアップとのコンビネーションでうまく抑えることができました」
このチェンジアップをWBCで、そしてできれば日本戦で試してみたいと思っている。オフには寒い日本を離れ、夏を迎えた母国へ帰国してトレーニングに励んだ。ここにきて右ヒジを痛めたとの情報があるのは心配だが、本人は晴れの舞台をとても楽しみにしている。
「実はブラジルのアカデミーで野球のベーシックな部分を教えてくれたのはキューバ人のコーチでした。その上に日本の野球がミックスされて今の僕がある。今回は、その両方のチームと対戦できるのはうれしいです」
WBCで弾みをつけ、今季は1軍で先発の一角に割って入りたい。それが右腕の目標だ。
もうひとりの金伏は同じく白鵬大から、昨年、育成選手としてヤクルトの一員となった。左腕ながら150キロ近いストレートが魅力で、7月には支配下登録を勝ち取った。CS出場が決まっていた10月には横浜DeNA戦で1軍デビューも果たした。
「真っすぐがナチュラルでシュートするのが特徴。これを右バッターの懐にきちんと投げられればおもしろい」と加藤博人2軍投手コーチは明かす。13日のシート打撃では、このボールで右バッターのインコースを突き、腰を引かす場面も見られた。「このオフは体重を増やして、キレが増した」と本人も自信をのぞかせている。

しかし、1軍のデビュー登板で4四球を与えてしまったように、コントロールの改善は急務だ。この日のシート打撃でも徐々に制球がばらつき、不安定な面を露呈した。「力んで、どうしてもフォームがバラバラになってしまう」と本人も課題は自覚している。
(写真:決め球となる変化球を磨くのも今後の宿題だ) 昨年のWBC予選ではメンバーに選ばれながら登板機会はなかった。
「本大会では、ぜひ投げたい。そしてチームに戻ったら1軍で投げられるようになることが目標です」
左腕は化ければ大きな戦力となる。WBCでの経験をきっかけに飛躍を遂げれば、より燕のブルペンは盤石となるはずだ。
彼らを取材をしていて、ふと足元を見ると黄と緑の配色が鮮やかなアップシューズが目に飛び込んできた。いわゆるブラジルカラーである。
「これ、館山(昌平)さんに代表に入った記念にプレゼントしてもらったものなんです」
シューズについて尋ねると、フェルナンデスからうれしそうに答えが返ってきた。
間もなく開幕するWBCで、ヤクルトからは他にも相川亮二が侍ジャパンに、ウラディミール・バレンティンがオランダ代表に、オーランド・ロマンがプエルトリコ代表に予備登録されている。たとえ敵味方に分かれても、チームの仲間であることに変わりはない。各代表選手の活躍を館山ならずとも、皆が応援している。
(次回は3月4日に更新します)
(石田洋之)
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