
背番号は単なる数字以上の意味を持つ。3番といえば長嶋茂雄や清原和博、51番といえばイチロー、55番といえば松井秀喜といった具合に、その番号を背負うスタープレーヤーのように育ってほしいとの球団の願いが込められていることが多い。今回、東京ヤクルトから2位指名を受けた西浦直亨(法政大)は背番号3をつけることが内定した。
(写真:「3番といえばラミレス選手がつけていたイメージ」と語る)「神宮で頑張ってもらうにはいい番号、彼に似合う番号ではないかと社長と相談した。背番号3を自分の番号にしてほしい」
西浦の指名挨拶に訪れた鳥原公二チーフスカウトは、「3」に託した思いを明かした。提示を受けた西浦は「自分にとっては重い番号。それに似合うだけの活躍がしっかりできるようにしたい」と緊張した面持ちだった。
ヤクルトの背番号3は1軍外野守備走塁コーチとなった福地寿樹が2012年までつけていた。その前はアレックス・ラミレス(今季まで横浜DeNA)やトーマス・オマリー(現阪神打撃コーチ補佐)といった外国人助っ人が背負い、日本人内野手となると、長嶋茂雄の息子として話題をさらった一茂以来となる。
長嶋一茂も六大学ではサードのベストナインを2度獲得しているが、西浦も今年の春にショートのベストナインを受賞した。チームの4番に座り、打率.320、3本塁打、18打点。本塁打と打点の2冠を獲得している。大学通算では62試合で打率.240、6本塁打、35打点だ。
「リストが強い。ツボにはまった時の打球はすばらしいものがある」と斉藤宜之スカウトが語るバッティング以上に評価が高いのがショートの守備だ。フィールディングがよく、スローイングも安定しており、4年間、神宮でプレーしてきた点もプラス材料である。「うちにはショートが何人かいるが、まず守れるというところを優先した」と鳥原チーフスカウトは語る。
高校時代の監督だった森川芳夫は西浦の入学時、ショートで「丁寧に忠実にプレーする」姿が目に留まった。
「足の運びやグラブさばきなど基本をひたすら練習させました。センスがあって教えると、すぐにこなしてくれるので、基本をしっかりやれば将来的に伸びると思ったんです」
西浦を大学2年時より指導している法大の神長英一監督も、最初に見て「天性の柔らかさがあって、いいかたちを持っている。成長するな」と感じたという。自身も現役時代は六大学でショートのベストナインとなり、社会人の日本通運でも活躍。指導者としても武田久(北海道日本ハム)や牧田和久(埼玉西武)をプロに送り出した。そんな神長の見立ては間違っていなかった。
走塁面でも大学での盗塁は通算わずか2個だが、「ラップタイムが速くなった。この2年間で成長した」と神長は言う。走攻守の3拍子が揃ったショートストップ、それが西浦なのである。
178センチ、75キロと野球選手としてはやや細身の体型ながら、斉藤スカウトは「骨格のよさ」も買っている。
「あの骨格なら筋肉がつけば、もっとパワーも増すはず。生まれ持った柔らかさに強さが加われば、いい選手になる」
故障が少ないのもケガ人の多いヤクルトには求められる要素だ。この点でも神長は「体調管理に関しては優秀。華奢に見えるがケガには強い」と太鼓判を押す。
走攻守にハイレベルで体も強いとなれば、即戦力としての期待は高まる。気になる点があるとすれば、バッティングに波があることか。春には打率3割以上を記録したものの、秋は打率.189と散々だった。3年の秋も優勝したチームの中で打率.190と振るわなかった。
「4番としての気負いもあり、ボール球に手を出して悪循環に陥っていました。メンタル的なものが大きかったと思います。きちんとしたスイングはできるので、春の状態をプロでも出せれば大丈夫でしょう」
神長はそう今秋の不振の理由を分析する。本人も「プロでバッティングを鍛えていければ」とこの先の課題に挙げた。
高校時代も3年春のセンバツに出場後、不振に苦しんだことがある。そこで森川は一度、西浦をスタメンから外す荒治療に出た。
「まじめなので調子が悪いと考えすぎるところがある。だから、少しリラックスさせたかったのと、これを発奮材料にしてほしいと考えました」
その効果は予想以上だった。本人は「奇跡」と笑うが、3年夏の県予選で驚異の打率.810と大爆発し、チームを再び甲子園出場に牽引した。森川は「高校時代も、そのレベルに適応するまでは少し時間がかかりましたが、慣れると力を発揮する。大学時代も同じように映りました。プロでも波があるかもしれませんが、我慢強くやっていけば伸びるはず」と教え子にエールを送る。
ヤクルトの内野陣は宮本慎也の引退で太い柱を失った。特にショートは今季、川島慶三、森岡良介が交互に守り、固定できなかった。センターラインの強化は巻き返しには欠かせない。“ポスト宮本”の発掘、育成は急務である。
「宮本が入ったときの状況を考えると、当時の宮本より打撃はいい。だから宮本よりも上に行ける可能性はあるし、そうなってもらうことで指名した価値が出る」
鳥原チーフスカウトは、ドラフト2位の内野手が入団するのを楽しみにしている。西浦も「宮本さんが目標。ヤクルトを代表する選手に早くなりたい」と宣言した。
3拍子揃った背番号3。慣れ親しんだ神宮で、「3といえば西浦」と誰もが認めるスターになってほしいものである。
(次回は11月18日に更新します)
(石田洋之)
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