米国とキューバが急ピッチで国交正常化を進めている。キューバといえば葉巻やラム酒ばかりでなく野球選手の宝庫でもある。今季開幕時、MLBのロースターに入った選手は18人。これはドミニカ共和国の83人、ベネズエラの65人に次ぐ。国交が正常化されれば、さらに増えることは間違いない。
しかし、キューバ選手の獲得に関し、MLBは慎重な姿勢を崩さない。「(キューバ選手の正規ルートでの獲得に関しては)あくまでも政府の方針に従う。これはMLBの規則を超えた問題だ」とロブ・マンフレッドコミッショナー。一方で「自分が興味があるのはどのようにしてキューバを脱出し、米国に入ってくるかだ」とも述べている。
これまで国交がないにもかかわらず、ではどのような手段でキューバの選手たちは米国でプレーしていたのか。キューバの野球事情に詳しい米国の関係者から話を聞いた。「キューバを脱出した選手は、まずドミニカ共和国、メキシコ、ニカラグアなどに亡命し、その国のパスポートをもらいます。そこでエージェントに“自分は野球選手として、すぐれた特殊技能を持っている”というレターを書いてもらう。送り先は米国務省。しばらくすると“あなたに興味のある球団があれば入国を認める”との返信が届く。これを元にMLB30球団とコンタクトを取るわけです」
常々、疑問に思っていたことがある。代表クラスの選手が、次々と亡命していくのを、なぜキューバ政府は指をくわえて見ているだけだったのか。「いや、これには裏があるのです。米国に渡った選手の多くは高額年俸の何%かをドルでキューバに送金している。いってみれば本国への税金です。これによって残された家族の安全と生活を保障してもらっているのです」
こうした裏でのやりとりが、国交正常化すれば、堂々と表で行えるようになる。この文脈に沿えば、提示条件でMLBに劣るNPBが不利を余儀なくされるのは目に見えている。ケガを理由に来日を拒否し、横浜DeNAから契約を解除されたユリエスキ・グリエルは高額な報酬が期待できるヤンキース入りを望んでいる。「ただ、それが本人の希望なのか、政府の意向なのか、そこは見極める必要がある」(前出・関係者)。米国と国交正常化しようがしまいが、日本にとってキューバが“異形の野球大国”であることに変わりはない。
<この原稿は15年4月15日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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