まだ20試合も経過していないとはいえ、単独首位は3季ぶりだ。
過去2年、最下位に沈んだシーズンはスタートでつまずいていた。2013年は最初の20試合で7勝13敗、14年は6勝14敗。それが今季は19試合を終えて12勝7敗である。
低空飛行を余儀なくされていた燕軍団のどこが変わったのか。
「接戦をモノにできている。“昔の強かった頃の勝ち方をしている”と周りから言われますね。僕は、その時期を知らないんですけど、競り勝つことでチームは強くなっていくと思います」
山田哲人はチームの変化をこう証言する。事実、12勝中8勝は3点差以内のゲーム。延長戦は4戦4勝だ。昨年、一昨年の延長戦での勝ち星(14年=3勝10敗3分、13年=3勝7敗4分)を早くも上回った。
競り勝てている要因が投手陣の安定にあることは言うまでもない。チーム防御率は12球団唯一の1点台(1.71)。昨年は12球団ワーストの4.62、一昨年は4.26だったことを考えれば雲泥の差だ。開幕から14試合連続で3失点以内で、これは1956年に日本一になった西鉄の13試合を超える記録だった。
成瀬善久の加入もあって先発ローテーションがある程度、確立され、中継ぎと抑えの役割分担もうまくいっている。19試合中、先発がクオリティスタート(6回3自責点以内)を達成したのは15試合。先発がゲームをつくれば、中継ぎ陣は出番を読みやすく、無駄な消耗を防げる。それがブルペンの好パフォーマンスを引き出す。
4月9日の中日戦に先発し、5回2失点にまとめて移籍後初勝利をあげた新垣渚は「中継ぎの調子がいいので信頼して、勝つものだと思っていた」と話す。リリーフがしっかりしていれば、先発も5、6回まで頑張れば、との思いで集中して投げられる。先発と中継ぎが、任された仕事をこなす好循環が生まれている。
この投手陣をリードする正捕手・中村悠平の存在も見逃せない。今季は昨季と比較すると、よりインコースを効果的に使えている。横浜DeNAの筒香嘉智、中日の平田良介ら一発のあるスラッガーに対しても思い切って懐を突く配球をみせる。勝ちパターンの一角を担う秋吉亮は「今年はインコースをうまく突けている」と明かす。
そういえば90年代、古田敦也が君臨する中、キャッチャーで2度のゴールデングラブ賞を獲得した西山秀二は、こんなことを言っていた。
「弱いチームのキャッチャーは、コントロールに不安なピッチャーをリードすることが多いから、どうしてもインコースの投げミスを恐れる。安全策で外へ外へ行きがちなんです。外一辺倒だから、余計に狙い打たれて余計に悪循環に陥るんですよ」
もちろん、リードは単にインコースに投げさせればいいという単純なものではない。甘く入って打たれれば、配球ミスとみなされる。ただ、野村克也がいつも指摘するように、内角への意識付けは不可欠だ。ヤクルトバッテリーは、ここ数年続いた負の連鎖を断ち切りつつあると言えるかもしれない。
攻撃は“セ界の火ヤク庫”と称された昨季のように爆発力はないものの、主砲のウラディミール・バレンティンやラスティングス・ミレッジが不在であることを踏まえれば悪くはない。
むしろ、彼らの代わりに出場機会を得た選手たちが結果を残している。外野に転向し、攻守にハッスルしている田中浩康しかり、その田中が危険球を受けて退場した試合で決勝打を放った上田剛史しかり。代打率5割(8打数4安打)を誇る森岡良介や、19日のDeNA戦でマスクをかぶって猛打賞の西田明央といった控えメンバーも光っている。
スタメンで出た2試合で、いずれもヒットを打っている三輪正義は「スタメンでも控えでもやることは一緒。打席が回ってきたら打って、飛んできたボールをしっかり捕るだけ」と語っていた。勝っているチームには日替わりヒーローが現れる。優勝した時のヤクルトもそうだった。ここまでの戦いは確かに“昔の強かった頃の勝ち方”ができている。
シーズンは始まったばかり。好調な時期ばかりではないだろう。ただ、今季のスローガンである「つばめ改革」の一里塚はできたのではないか。風薫る燕の季節が楽しみである。
(次回は5月18日に更新します)
◎バックナンバーはこちらから